最終話
これにて完結です。
どうぞお楽しみくださいませ。
――一年後。
カランカランとにぎやかに来客を告げるドアベルが鳴る。
小奇麗ではあるが人気のないBAR。
外から見れば営業しているのか疑わしく思えるがしっかり営業中だ。
「いらっしゃ……なんだ、蒼太か」
「何だとはひどい言い草だなマスター」
「店の売り上げにならねえ奴は客じゃねえ」
「別の意味で貢献してるじゃないか」
「それはそうだけどよ……俺としちゃあ酒で稼ぎたいわけだよ」
「ち、しゃーねぇなあ……ジンライムよこせ」
「……中々渋いチョイスだな……ほれ」
「ほっとけ。……普通に美味いな」
「当ったり前よ!」
「……で、なんか新しい依頼はあったか?」
「そうだなぁ……新宿の歌舞伎町でアイツらが暴れてるらしいぜ、そいつらを何とかしてくれってさ」
「微妙に濁ってるのはなんでだ?」
「知恵が回るのかひとしきり暴れて姿をくらますんだよ。だからただの愉快犯か模倣犯の可能性もある」
「なるほどな」
「しかし一年か……あっという間に感じるぜ」
「おいおい、老けるには早すぎるだろ」
「うるせぇ」
天保製薬を含む広範囲が消失する事件から一年。
世界は変わっていった。
あの事件により、レイジとネクロ、ベルセルクの存在が明るみに出て、世間の認識は謎の病気から故意に広められた人災という物に変わった。
天保製薬は政府との癒着――特に防衛省と一部の議員――があり、とんでもない波乱を巻き起こした。
確かに隔壁の内部や実験場のものは全てあの爆破で殲滅されたが、薬が無くなったわけではない。
ただでさえ海外にもその薬のデータが渡っていたのだから完全に根絶は出来なかった。
政府の粛正を逃れた者たちは地下に潜り、研究をつづけたのだ。
今、世界は動く死体のネクロと暴走したレイジ。
蒼太たちのように理性ある感染者と人間の四種類で分けられている。
初めは蒼太たちのような理性あるものも粛正対象にしようとゆう動きがあったが、話が通じるなら存在を認めるべきという声も上がり、今では普通に生活することが出来ている。
ただ、身体能力は人間と明らかな隔たりがあるので、混じって生活は出来ないとのことで、人間の街とレイジの街というふうに別れて生活している。
今蒼太が居るのはレイジの街の一角にあるBAR。
蒼太はここで政府の依頼で回されるレイジの情報を受け取り、無力化する仕事をしている。
ネクロ化したものの殲滅も蒼太の管轄だ、海外はどうしてるか知らない。
そもそも英語が相変わらず苦手なので依頼が来ても行かない、来たことは無いが。
「しっかしなんでこんな面倒な事やってんのかね……俺は」
「お前たちしか相手出来ないんだから仕方ねえんじゃないか?」
「俺たち以外が弱いんだよ」
「俺からしたらお前たちがオカシイんだがな」
レイジの街が出来たとき、興奮状態だった奴や人外の力を手に入れて調子に乗ってるやつを片っ端から三人でお仕置きして回ったのが未だに伝説として語られている。
人のうわさも75日と言うが、いっこうに消える気配はない。
三人の中でも蒼太の戦闘力は頭一つ抜けているのも伝説の要因ではないだろうか。
だが、なにも悪い伝説だけではない。
ビル・トンプソンが言ったように蒼太は身内にはとことん甘い。
例え血がつながっていなくても、一度仲間として認識したなら確実に守ってくれる。
ある意味本能の部分が強く出やすい感染者の中のトップに位置する実力者なのだから群れのボスとして祭り上げられるのも頷ける話だ。
「はあ……日本全土にわたる規模の依頼に三人とか、ブラックどころじゃねえぞ?」
「それだけ頼られてるんだよ、日本によ」
「俺はこの街だけで十分なんだけどな」
「相変わらず身内に甘いねお前は」
「頼られて悪い気はしないがな」
「訂正するわ、激アマだ」
マスターが呆れたところで再びドアベルが来客を告げる。
「お、姫様二人の到着だぞ」
「蒼兄~! あ、ずるいです! マスターカルーア一つ」
「お待たせ蒼太。私もバイオレットフィズください」
「あいよ」
「二人とも、今日は新宿で依頼だ。飲んだら行くぞ」
「えー、ちょっとゆっくりしたいです」
「朱音ちゃん、我儘言わないでね? あなたがBL本を悩みまくらなければ遅くならなかったんだから」
あくまで何時もどおりの調子でいう恵里香、笑顔なのだが雰囲気は推して知るべし。
「ひ……ご、ごめんなさいです……」
「何に悩んでるんだ、何に」
「楽しくていいじゃねえか」
「マスターは気楽だよな、蚊帳の外に居るんだから」
「おう! 火事は対岸で眺めるに限るぜ」
「威張るな! っと、飲み終わったな?」
「うん、マスターご馳走様」
「おいしかったですよ」
「ほんじゃ行くか」
「うん!」
「ですです!」
「ところで朱音……その装備、そろそろやめないか?」
「え? いやです」
「そ、そうか……」
彼らは今日も街から街へと駆け抜ける。
胸に秘めるのは一年前のあの日に託されたある三人との約束。
――未来を頼んだ。
だから彼らは止まらない、立ち止まってる暇はない。
全てを救うなんてことはできないけれど、その目が、耳が、手が届く範囲なら何か出来る。
理不尽に真っ向から立ち向かい、悪夢のような船の上も冗談のような隔離された街も、人間の悪意と欲望に満ちた研究所だって切り抜けてきたのだから。
――マンハッタン
「αチーム! αチーム! 応答せよ!! 繰り返す、αチーム!」
『―ザザ―……たす……―ザ―て……』
「おい、どうした! 何があった」
『ば、化け物が! 銃が効かない!』
「化け物だと? 何があった! αチーム! 誰か返事をしないか!」
『う、うわあああああああ!!』
「……通信が途絶えた……」
「隊長、早く撤退を!」
「どうした、状況を説明しろ!」
「それより早く撤退を! も、もうそこまできぎゃ!」
「な、なんだコイツは……総員撤退! 迎撃しつつ撤退しろ! ……おい、聞こえないのか! おい!」
――ぎゃあああ……
――ひい! やめ……
――いてえ……いてえよ……
――いやだ、死にたくない! うわああ……
「なんだコレは……現実の光景なのか? ……神よ……」
人間の欲望に果ては無い。
悪夢は……まだ終わらない。
お付き合いありがとうございました!
ココからは一人反省会です。
見なくてもいい方は後書きスルーで。
正直前作よりも苦労しました。
反省だらけ!
シリアス重視でいったのにやっぱりコメディ要素挟みたくなる。
以前も言いましたがもはや病気の領域です(笑)
感想にも上がりましたがもう少し船編続けれなかったかなぁ……。
三人称にも挑戦しましたがむつかしいねコレ。
デッドマンも三人称だったけどファンタジーは作者には無理くさい。
ブックマークしてくれてる方に申し訳ない……。
話しが逸れました。
いやね、実際船編で止めときゃよかったかなぁなんて思わないでもないんですよ。
タイトル詐欺も程がある。
前作よりうまい事楽しめてないのか筆の滑りも良くなかったし。
設定は生かし切れていないしで散々ですわ。
色々なジャンルというか世界設定に挑戦して皆さんに楽しんで貰える作品が作れるようにしたいですね。
自動人形も自分的にはいい設定なんですが、生かしきれるかな……。
とりあえずゾンビは一旦離れて人形に集中しようかと思ってます。
でも、きっとゾンビが恋しくなってまた書いちゃうんだよな……。
いっそ平行して……。
一応次にやってみたいゾンビの構想はあるんですよ。
あるんですけどね。
またゾンビか! って突っ込みも知り合いから出ている始末(笑)
だって好きなんだもんゾンビ……。
うん、きっと我慢できなくなって近いうちにゾンビ見切り発車する。
楽しく読めるゾンビを書こう!
楽しく読めるゾンビってなにさ……。
グダグダですな、はっはっは。
ということで、次のゾンビにご期待ください。
お付き合いいただき、本当にありがとうございました。




