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幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
【第6章】 日常侵食編 ~復讐の駒と覚醒の賢者~

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第93話:籠城戦、開始


セバスチャンは、僕のその瞳に宿る揺るぎない覚悟を見て取ると、一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに、完璧な執事の笑みに戻り深々と一礼した。

「……左様でございましたな。失礼いたしました、アリア様」

「クリスティーナと、友人たちを頼む」

「かしこまりました。お嬢様方の安全は、このセバスチャンが、命に代えましても」


次の瞬間。セバスチャンは手にした銀のトレイを、フリスビーのように投げ放った。

高速で回転するトレイは、シャンデリアの鎖に当たり、その軌道を変え、部屋の照明コントロールパネルを正確に破壊する。

大広間が再び、完全な闇に包まれた。


「なっ!? 暗視ゴーグルを!」

傭兵たちが、狼狽する声。

だが、その暗闇は僕たちにとっては、好機だった。


「陽菜! 」

僕が叫ぶと同時に、陽菜の手のひらから強烈な閃光が放たれた。それは、ただの火球ではない。敵の視覚を一時的に完全に奪うための、閃光弾フラッシュバンだ。

「ぐわっ!?」

「目、目がぁ!」

暗視ゴーグルを装着していた傭兵たちが一斉に悲鳴を上げ、その場に蹲る。


「クリスティーナ! 今だ!」

「お任せくださいな!」

クリスティーナは視覚を奪われ、混乱している傭兵たちの隙を縫って、友人たちを率い、大広間の隅にある堅牢なワインセラーへと駆け込んでいく。その背中を、セバスチャンが影のように、しかし確実に護衛している。

ふと、僕の足元で、リリィが「にゃん!」と短く、しかし鋭く鳴いた。

僕が彼女に視線を落とすのと、ほぼ同時。

リリィは、まるで最初からそこにいなかったかのように、すっ、と闇に溶けて姿を消した。

彼女がどこへ向かったのか、僕には分からない。

だが、その金色の瞳が一瞬だけ、傭兵たちが侵入してきた窓の外――おそらくこの襲撃を指揮しているであろう、敵の中枢を見据えていたように見えた。


「さあ、陽菜!」

「うん!」

僕と陽菜は背中合わせに立ち、残った傭兵たちと対峙した。

大広間は、僕たちにとっての戦場と化した。


「この……ガキどもが!」

視力を回復した傭兵の一人が、コンバットナイフを手に陽菜に襲い掛かる。

だが、陽菜は、もうただ守られるだけの少女ではなかった。

彼女は、冷静に敵の動きを見切り、足元に小さな炎の罠を仕掛けた。

「わっ!?」

男が、足元の炎に気を取られた、その一瞬。

陽菜の身体がしなやかに回転し、そのハイキックが男の顎を正確に捉えた。


「やるじゃないか、陽菜」

「蓮こそ!」

僕も、次々と襲い来る傭兵たちをミスリルナイフ一本でいなしていく。

銃を持った敵には、壁を蹴って死角に回り込み、その関節を的確に破壊する。

僕たちの息の合った連携。それは、まるで一つの生き物のように滑らかで、そして容赦がなかった。


だが、敵はプロの部隊だ。

すぐに体勢を立て直し、僕たちを包囲するように、陣形を組み始めた。

(……まずい。数が、多すぎる)

僕と陽菜の額に、じわりと汗が滲む。


その時だった。

――ガシャン!

僕たちの頭上の巨大なシャンデリアが、突然その鎖を断ち切られ、傭兵たちの包囲網の中心へと落下した。

「「「うわあああっ!」」」

数人の傭兵が、シャンデリアの下敷きになる。

見上げると、天井の梁の上でセバスチャンが、優雅に手にしたナイフの血糊を拭っていた。


「……少々、お部屋が散らかってまいりましたな」

彼は、にっこりと微笑むと、再び闇の中へと姿を消した。


僕たちは、顔を見合わせ不敵に笑った。

籠城戦の火蓋は、切って落とされた。

この悪夢を終わらせるために。僕たちの反撃が、今、始まる。


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