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幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
【第6章】 日常侵食編 ~復讐の駒と覚醒の賢者~

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第81話:ドキドキお買い物デート


週末の午後。

からりと晴れた空の下、僕と陽菜は、二人で近所のスーパーマーケットへ向かう道を歩いていた。

陽菜が、僕の腕に自分の腕を絡ませて、楽しそうに鼻歌を歌っている。

「今日の夜ご飯、蓮の好きなオムライスにしよっか!」

「……ああ」

カゴを提げた、ごく普通の買い物風景。

だが、僕の心は、全く穏やかではなかった。腕に伝わる陽菜の柔らかな感触と、ふわりと香る甘い匂いに、心臓がずっと、ドキドキと音を立てている。


リリィは、「昼寝の邪魔はするな」とでも言うように、ソファで丸くなって留守番だ。

ちびケイちゃんのホログラムは、なぜか「スーパーの特売情報、リアルタイムでナビゲートします!」と張り切っていたが、丁重にお断りしてきた。


スーパーの中は、夕飯の買い出しに来た主婦や家族連れで賑わっていた。

僕たちは、野菜コーナー、肉コーナーと、陽菜が軽快なステップで引くカートの後ろを、とぼとぼとついていく。

「蓮、卵はMサイズでいいよね?」

「ああ」

「ケチャップ、まだあったっけ?」

「……たぶん、切れてた」

そのやり取りは、まるで新婚の夫婦のようで、僕はその事実に気づいて、一人で顔を赤くした。


問題が起きたのは、日用品コーナーでのことだった。

「あ、そうだ。ついでに、これも買っておかないと」

陽菜が、カートをきゅっと止めた先。

そこには、色とりどりの、レースやフリルで飾られた、女性用の下着が、ずらりと並んでいた。


「…………」

僕の思考が、完全に停止した。

「えーっと、どれがいいかなー。蓮は、どっちの色が好み?」

陽菜は、水色の爽やかなデザインのものと、ピンク色の可愛らしいデザインのものを両手に持ち、悪気なく、僕に問いかけてきた。

「お、俺に聞くな!」

「えー、なんで? 女の子同士なんだから、別にいいじゃない! ほら、蓮の分も、一緒に選んであげるよ!」

「い、いらん!」

「またまたー。今度、蓮が着てるのも、ちょっとよれてきてたし。新しいの、新調しないと!」


陽菜は、僕の必死の抵抗などお構いなしに、僕の身体に下着をあてがい始めた。

「うーん、蓮は肌が白いから、こっちのパステルカラーの方が似合うかな? あ、でも、こっちの黒も、大人っぽくていいかも……」

「ひ、陽菜っ! やめろ、周りの人が見てる!」

事実、近くを通りかかったおばちゃんたちが「まあ、仲のいい姉妹ねぇ」と、微笑ましそうにこちらを見ている。

違う! 違うんだ!


僕が、羞恥心で茹でダコになりながら、陽菜の暴走を止めようと必死になっていた、その時。


僕たちは、気づいていなかった。

スーパーの二階の窓から、高性能な望遠レンズが、僕たちの姿を、静かに捉えていることに。

カシャッ、カシャッ、と、無機質なシャッター音が、繰り返し響く。


レンズの先のファインダーには、仲睦まじく下着を選ぶ、二人の少女の姿が、くっきりと映し出されていた。

『……ターゲットAアリアと、B(橘陽菜)。接触完了。行動パターン、及び、親密度のデータを収集中』

『掃除屋』は、感情のない目で、ただ淡々と、僕たちの日常を記録していく。

そして、そのレンズの端に、キラリ、と何かが反射した。

それは、陽菜が、僕の銀髪を優しく撫でた瞬間に見せた、僕の、ほんの一瞬の、油断した表情だった。


『……ターゲットAの弱点は、やはり、ターゲットBか。有効な『駒』になりそうだ』


僕たちの、甘くて、少しだけ切ないラブコメ。

それは、遠く離れた場所にいる、復讐に燃える男の元へ、冷徹な「戦略データ」として、送信されようとしていた。

僕たちの日常の、すぐ隣に潜む、黒い影。

その存在に、僕たちはまだ、気づくことすらできていなかった。


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