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幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
第4章:紫水晶の誓い

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第43話:情報収集と、中庭のサロン


あの朝の後、僕と陽菜は、かなり気まずい空気の中、朝食をとった。陽菜は、ずっと顔を真っ赤にしながら、僕と目を合わせようとしない。僕も、今朝の出来事を思い出してしまい、どうにも落ち着かなかった。


陽菜が学校へ行った後、僕は頭を切り替えるように、本格的な情報収集を開始した。

持久力向上のヒントを探すため、僕はまず、アリアとしてギルドの資料室へと向かった。埃っぽい地下の書庫には、古今東西の戦闘技術や、魔力に関する文献が、所狭しと並んでいる。

(……この世界のエネルギー体系は、『魔素マナ』が基本。だが、アリアの身体は、それとは違う『生命エネルギー』を燃焼させている。この二つを、どうにかして結びつけられないか……)

僕は、アリアの脳に叩き込まれた知識を元に、仮説を立てながら、関連しそうな古文書を片っ端から読み解いていく。その集中力と読解速度は、もはや人間業ではなかった。


「……ダメだ。これといった情報はないな」

数時間後。僕は、めぼしい文献を全て読み終えたが、決定的な解決策は見つからなかった。

(こうなったら、あいつに頼るしかないか……)

僕は、ギルドを出ると、路地裏でスマホを取り出し、あの気まぐれな魔女、『エレクトラ』とのチャットアプリを起動した。


僕:『聞きたいことがある』


数秒後、すぐに返信が来た。

エレクトラ:『まあ! アリア様からご連絡をいただけるなんて! 今日の太陽は西から昇りましたか!?』

相変わらずのテンションだ。

僕:『エネルギー効率の良い身体の動かし方、あるいは、外部から生命エネルギーを補給する方法について、何か情報はないか』

エレクトラ:『……なるほど。アリア様の、あの凄まじいまでの短期決戦スタイル。その理由は、エネルギー効率にありましたか。ふふふ、女神様の弱点の補完方法、全世界のデータベースにハッキングしてでも、見つけ出してご覧にいれましょう! 少し、お時間をくださいな♪』

そのメッセージを最後に、彼女は再びオフラインになった。

(……本当に、頼りにしていいのか?)

一抹の不安を覚えながらも、今は彼女の能力に賭けるしかなかった。


その頃。

防衛高校の中庭では、陽菜がクリスティーナたちとのランチ会に参加していた。

今日のセバスチャン特製「お弁当」は、色とりどりのフルーツがふんだんに使われた、宝石のようなフルーツサンドだった。

「陽菜さん、なんだか今日、ぼーっとしていますわね? 何か悩み事でも?」

クリスティーナが、心配そうに陽菜の顔を覗き込む。

「え!? あ、いえ、何でもないです!」

陽菜は、ぶんぶんと首を横に振った。今朝の出来事を思い出して、顔が熱くなる。

(蓮の寝顔……可愛かったな……。ううん、私、何を考えてるの!)


陽菜の僅かな表情の変化を、クリスティーナは見逃さなかった。彼女は、扇子で口元を隠し、ジトっとした目で陽菜を見つめた。

「……ふーん。そうですか。ひょっとして、昨夜、アリア様と何か良いことでもおありになったのではなくて?」

「ぶっ!?」

陽菜は、飲んでいたフルーツジュースを吹き出しそうになった。

「な、な、な、何でもありませんってば!」

あからさまに動揺し、アワアワと手を振る陽菜の姿を見て、クリスティーナは確信を深め、楽しそうに「うふふふ」と笑った。

「まあ、よろしいですわ。一体、何があったのかしら……。今度、わたくしにだけ、ナイショで教えてくださいね?」

クリスティーナの言葉に、陽菜は「ち、違いますってば!」と必死に否定するが、その動揺ぶりは、逆に令嬢たちの好奇心を煽るだけだった。令嬢たちは、それぞれ明後日の方向に視線を向けながら、顔を赤らめていた。


(こ、この人たち……! 絶対、変なこと考えてる!)

陽菜は、いたたまれなさでいっぱいになりながら、慌てて話題を変えようとした。

その時、クリスティーナが、まるで助け舟を出すかのように、新たな話題を切り出した。

「そういえば、皆さんはご存知かしら? 来月あたりから、そろそろ『選抜戦』の選手選考が始まるという噂ですわよ」

「ああ、学校対抗戦の!」

「もうそんな時期かー」

友人たちが、色めき立つ。

「選抜戦?」

陽菜が首を傾げると、クリスティーナは少し得意げに説明を始めた。

「全国に点在する、わたくしたちのような防衛高校が、年に一度、その実力を競い合う、国内最大のイベントですわ。個人戦、団体戦、様々な競技があって、それはもう盛り上がりますのよ」

「へぇー、そんなのがあるんだ」

「去年の個人戦、優勝は伊集院でしたわね。あれほどの才能がありながら、道を誤るとは……実に勿体ないことですわ」

クリスティーナは、心底残念そうにため息をつく。

「でも、今年は陽菜さんがいるじゃありませんか!」

令嬢の一人が、期待に満ちた目で陽菜を見た。

「そうよ! 学年トップの陽菜さんなら、絶対に1年生の代表に選ばれますわ!」

「ええーっ!? む、無理だよ、私なんて!」

友人たちの言葉に、陽菜は慌てて手を振る。

だが、その瞳の奥には、かすかな闘志の光が宿っていた。もし、自分が代表に選ばれたら……蓮に、もっとすごいって思ってもらえるかな。

そんな淡い期待が、彼女の胸に芽生え始めていた。


この中庭での会話が、僕たちの未来に、新たな目標と、そして新たな波乱を呼び込むことになる。

そして、その日の夜。僕のスマホが、予想だにしない形で、その役割を果たすことになるのだった。


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