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幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
第4章:紫水晶の誓い

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【間話】友人たちの観察記録 ~橘陽菜と謎の転校生について~


【ファイル名:橘さん観察レポート.txt】

【作成者:防衛高校一年A組 佐藤ミカ】


これは、私たちの親友であり、今や学園のスターでもある橘陽菜と、彼女の隣に彗星の如く現れた、謎多き少女アリアさんに関する、私たちなりの観察と考察の記録である。


ことの発端は、数ヶ月前の、あの『壁外スタンピード事件』に遡る。


【証言1:友人A子(鈴木アヤ)の回想】


「あの日のこと、今でも覚えてる。陽菜の幼馴染の、斎藤蓮くんが行方不明になったって聞いて、私たちは本当に心配したんだ。陽菜、蓮くんのこと、すっごく大好きだったから。周りの誰もが気づいてた。だから、絶対にショックで寝込んじゃうって、みんなで覚悟してたんだよね」


「でも、陽菜は違った。もちろん、すごく悲しそうな顔はしてた。でも、私たちの前では絶対に泣かなかった。それどころか、『私、蓮の分まで強くなる』って言って、次の日から、前よりもっと必死に訓練するようになったの」


「今思えば、不思議だったな。陽菜、一度も『蓮くんを探しに行きたい』って言わなかったんだよね。まるで、蓮くんがどこにいるか、知っているみたいに……。ううん、そうじゃない。蓮くんが、自分の意志で姿を消したって、分かっているみたいだった」


「私たち、最初は『陽菜は、蓮くんのこと、もう吹っ切れたのかな』って話してた。でも、違ったんだ。陽菜は、吹っ切れたんじゃなくて……ただ、受け入れてたんだ。蓮くんの、大きな決断を」


【証言2:友人B子(田中ユキ)の証言】


「アリアさんが、陽菜の護衛役(?)として、クリスティーナ先輩のお茶会に参加した日のことは、学園中の噂になったわ。私も、その場にいた友だちから、根掘り葉掘り聞いたの」


「陽菜が、知らない子と二人で来て、すごく緊張してるように見えたんだって。でも、令嬢たちからの質問攻めが始まったら、陽菜の態度が、一変したらしいの」


「『アリアさんのことを、根掘り葉掘り聞かないでください!』って、身体を張ってアリアさんを守ったんだって。その姿は、まるで『私の大切な人を、誰にも傷つけさせない』って言ってるみたいだったって。陽菜、あんなに度胸ある子だったっけ?って、みんな驚いてた」


「それに、アリアさんの態度も、すごく不思議だったらしい。フードにマスク、サングラスで顔は全く見えなかったけど、陽菜が隣にいる時だけ、ピリピリした空気が、少しだけ和らぐんだって。陽菜が、アリアさんにとって、唯一心を許せる『特別』な存在なんだって、その場にいた誰もが感じたって言ってた」


「陽菜が、あんなに必死に守ろうとする、素性の知れない女の子。アリアさんが、唯一心を許す、陽菜。二人の関係って、一体……? 私たち、その日から、ずっと考えてたんだ」


【結論:代表 佐藤ミカによる考察】


私たちは、断片的な情報を集め、話し合い、そして、一つの結論に達した。

それは、あまりにも衝撃的で、そして、あまりにも切なくて、尊い真実だった。


まず、前提として、斎藤蓮くんは、私たちの知る限り、少し気弱で、でもすごく優しくて、クラスの女子からは「可愛い系」と評される、中性的な魅力のある男の子だった。身体も細くて、陽菜の隣にいると、まるで姉と弟のようにも見えた。


そして、あの日、彼は行方不明になった。

いや、違う。「斎藤蓮」という存在が、この世界から消えたんだ。


入れ替わるようにして現れた、謎の少女、アリアさん。

顔はいつも隠していて、誰とも話さない。でも、戦闘能力はCランク冒険者以上。そんな素性の知れない子が、なぜか陽菜の隣にだけ、いる。

彼女は、蓮くんと同じように、陽菜の隣にいる。

陽菜は、蓮くんと同じように、アリアさんの面倒を見ている。

アリアさんは、蓮くんと同じように、陽菜にだけ、特別な信頼を寄せている。


もう、わかるでしょう?


――斎藤蓮くんは、本当は、女の子だったんだ。


ずっと、自分の心を偽り、「男の子」として生きてきた。だから、蓮くんはいつもどこか儚げで、無理をしているように見えたんだ。

でも、あのスタンピード事件をきっかけに、彼は、彼女は、もう偽りの自分でいることに、限界を感じてしまった。

そして、彼は決意したんだ。「斎藤蓮」として死に、本当の自分――顔も名前も隠した、一人の「少女」として、生きていくことを。

アリア、というのは、きっと二人の間だけの、大切な名前なんだ。


だから、陽菜は蓮くんを探さなかった。

だって、蓮くんは、いなくなったんじゃない。ただ、隣にいる「アリア」として、生まれ変わっただけなんだから。

陽菜は、蓮くんの最大の秘密を知る、たった一人の理解者だったんだ。だから、彼女は泣かなかった。蓮くんの大きな決断を、一番近くで、たった一人で支えてあげようって、覚悟を決めたんだ。


そう考えると、全ての辻褄が合う。

陽菜の、あの異常なまでの強さも。

アリアさんを守ろうとする、あの必死な姿も。

二人の間に流れる、誰にも入り込めない、あの特別な空気も。


「……そっか。そうだったんだね、陽菜」


この結論にたどり着いた時、私たちは、涙が止まらなかった。

なんて、壮絶で、なんて健気で、なんて美しい友情なんだろう。

ううん、友情なんて言葉じゃ、足りない。これはもう、運命で結ばれた、魂のパートナーシップだ。


だから、私たちは決めた。


この、二人の尊い秘密を、私たちは、全力で守ろう。

陽菜が、蓮くん――ううん、アリアさんのために戦うなら、私たちは、陽菜の背中を守る盾になろう。

アリアさんが、この世界で自分らしく生きていけるように、私たちは、最高の友人として、二人を応援し続けよう。


大丈夫だよ、陽菜、アリアさん。

あなたたちは、もう一人じゃない。

私たち、防衛高校一年A組女子一同が、あなたたちの最強の味方だから。


【レポート終了】

【追伸:今度、アリアさんを女子会に誘ってみようと思う。顔を隠しててもいいから、声だけでも参加してほしいって。きっと、私たちと話したいこともたくさんあるはずだから。陽菜、協力してね!】


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