表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
第1章:銀色の夜明け ~始まりと再生~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/142

第4話:秘密の看病と、戸惑い

 

 目の前で、黒いフードを被った人が倒れた。

 その身体を、私は夢中で抱きしめる。

「蓮! しっかりして、蓮!」

 呼びかけても、返事はない。ぐったりとした身体は、見た目以上に軽かった。

 フードがずれて、月明かりに照らされた銀色の髪と、気絶していてもわかる、信じられないくらい綺麗な顔立ちが現れる。

 こんな綺麗な人、見たことがない。

 声も、背格好も、髪の色も、顔も、何もかもが蓮じゃない。


 でも、わかる。

 絶対に、蓮だ。


 だって、私のピンチに駆けつけてくれるタイミングが、いつもと同じだったから。

 私を庇う時の立ち方が、いつもと同じだったから。

 私が「危ない!」って叫んだら、ちゃんとそれに合わせてくれたから。

 そして何より、私が「蓮?」って呼んだ時、あの金色の瞳が、確かに動揺に揺れたから。

 好きな人を、幼馴染を、見間違えるはずがない。


 何がどうしてこうなったのか、全然わからない。でも、今はそんなことどうでもいい。

 蓮は生きている。それが全てだ。

「……っ、うぅ…」

 涙が止まらない。よかった。本当に、よかった。

 泣きながら、蓮の身体を強く抱きしめる。

 でも、いつまでもこうしてはいられない。このまま誰かに見つかったら、この姿の蓮がどうなるかわからない。絶対に、守らないと。


「……蓮、ちょっとごめんね」

 私は涙を拭うと、決意を固めた。

 蓮の身体は驚くほど軽くて、私一人でもなんとか背負うことができた。彼の――今は彼女だけど――バックパックも拾い、周囲を警戒しながら、人気の無い路地裏を選んで、必死に家への道を急ぐ。

 幸い、スタンピードの混乱で街はまだ騒がしく、フードを深く被せた蓮を背負っていても、誰にも怪しまれずに済んだ。


 自分の部屋にたどり着き、そっと蓮をベッドに下ろす。

 まずは怪我の確認だ。

 パーカーを脱がせると、肩に生々しい裂傷があった。幸い、傷はそれほど深くない。

「もう、無茶して……」

 救急箱を持ってきて、消毒液で傷口を優しく拭う。蓮は小さく身じろぎしたけど、起きる気配はない。

 包帯を巻き終えて、ホッと一息。

 それから、私は気づいてしまった。蓮の服は、戦闘の汗と土埃でドロドロだ。このままじゃ、気持ち悪いだろうな。


「……し、仕方ないよね…?」

 自分に言い聞かせる。これは看病のため。やましい気持ちなんて、これっぽっちも、ない。……多分。

 顔が熱くなるのを感じながら、私はお湯で濡らしたタオルを用意した。

 緊張で手が震える。そっと、ダボダボの服を脱がせていく。

 現れたのは、しなやかで、引き締まった少女の身体だった。薄いけれど、確かに鍛えられているとわかる筋肉のライン。白い肌。

「……うぅ」

 見てはいけないものを見ている罪悪感と、好奇心で、心臓がバクバクと音を立てる。蓮の身体なのに、蓮じゃない。でも、これは蓮で……。

 頭がぐちゃぐちゃになりそうだった。

 ドキドキと、少しだけワクワクしながら、汗や汚れを丁寧に拭いていく。

 最後に、クマさんパジャマと下着を出してきて、そっと着せてあげた。


 ベッドに横たわる、銀髪の美少女姿の蓮。

 スースーと穏やかな寝息を立てている。

 さっきまでの嵐のような出来事が嘘みたいだ。

 私はベッドの脇に座り込み、その寝顔をじっと見つめた。

 一体、何があったんだろう。どうして、こんな姿に?

 聞きたいことは山ほどある。

 でも、今はいい。


「おかえり、蓮」


 そっと銀色の髪を撫でる。

 蓮が目を覚ましたら、まず何て言おう。

 ううん、何を言うかより先に、ちゃんとごはん、作ってあげなくちゃ。

 そんなことを考えながら、私は蓮が目覚めるまで、ずっとその傍らに寄り添っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ