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幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
第3章:学園の王子と電子の魔女 ~忍び寄る悪意~

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第25話:陽菜の逆襲と、クリスティーナのカウンター


クリスティーナ主催の、突然始まった『陽菜さんとなかよくなろう!ランチパーティー』。

豪華なランチを前に、クリスティーナが「それでね、陽菜さん。アリア様のことなのですが……」と、早速アリア(蓮)の事への質問攻めを始めようとした、その時だった。


(こ、このままじゃクリスティーナ先輩のペースだ……。な、何とかしないと……!)

陽菜は、この状況を打開するため、思い切って行動に出ることを決めた。


「――先輩!」

陽菜は、カトラリーをカチャンと置き、クリスティーナをまっすぐに見つめた。その気迫に、クリスティーナも令嬢たちも、一瞬言葉を失う。

「放課後、少しだけお時間をいただけませんか? 先輩と、一対一でお話がしたいです」

「まあ、陽菜さんからお誘いとは、珍しいですわね。よろしいですよ」

クリスティーナは、少し驚きながらも、どこか嬉しそうに頷いた。


そして、放課後。

陽菜は、クリスティーナを人気のない中庭へと連れ出した。少し離れた木陰には、完璧な気配遮断でセバスチャンが控えているが、それはノーカンとする。


「先輩。単刀直入に言います」

陽菜は、深呼吸を一つして、切り出した。

「今度のお休み、三人で遊びませんか?」


これは、陽菜にとって大きな賭けだった。いつまでも学校というアウェーで戦うのではなく、自分たちが主導権を握れる場所で、クリスティーナという存在をコントロールしようという試みだ。

だが、陽菜のその提案を、クリスティーナは予想の斜め上の意味で受け取った。

「まあ! 三人で! ……つまり、陽菜さんのお宅に、わたくしたちを呼んでくださるということですのね!?」

「え?」

「アリア様と陽菜さん、そして、わたくし! 三人で、ホームパーティーですわね! なんて素晴らしい提案でしょう!」

クリスティーナは、目をキラキラと輝かせ、完全に「お宅訪問」だと勘違いしていた。


「ち、違います! そうじゃなくて、街に出かけるとか……!」

陽菜が慌てて否定すると、クリスティーナは不思議そうな顔で、小首を傾げた。

「あら? ですけれど、あなた方、ご一緒に、お住まいなのでしょう? でしたら、お宅に伺うのが一番手っ取り早いですし、アリア様もおくつろぎになれるのではなくて?」


「――!!」

その一言は、陽菜にとって青天の霹靂だった。

「えっぇぇええええええええ!? そ、そ、そんなことは……!」

「あら? 内緒のことでしたの?」

クリスティーナは、自分の情報網の正しさを確信し、得意げな笑みを浮かべた。

「それは、申し訳ありませんこと。わたくしの執事が、先日、お二人が同じアパートの一室に入っていくのを確認したものですから、てっきり……」


(セバスチャアアアアアンッ!!)

陽菜は、木陰にいるであろう執事を、ギンッ!と睨みつけた。

「セ、バ、ス、さん……いったい、何を……」

「そうでございますなぁ」

どこからともなく現れたセバスチャンが、優雅に一礼する。

「お二方が、特に秘密にされているご様子はございませんでしたので、てっきり問題ないものかと。これは、大変失礼いたしました」

彼は、完璧に澄まし切った、きりっとした顔で言った。その表情からは、罪悪感など微塵も感じられない。


クリスティーナは、動揺する陽菜に追い打ちをかける。

「内緒でしたのね……。ふーん、そうなのですか。でしたら、なおさら、わたくし、お宅にお邪魔しても……?」

「だ、だめです! それは、蓮に……いえ、アリアさんに聞いてみないと、わかりません!」

陽菜が必死に抵抗すると、クリスティーナの背後から、再びセバスチャンの声がした。

「お嬢様。友情とは、時間をかけて育むものです」

「……はっ!」

セバスチャンの的確な助言に、クリスティーナは我に返った。


「あ、陽菜さん、ごめんなさいね。わたくし、気持ちばかりが急いてしまって……。お二人が同棲なさっていることも、わたくしの胸の内に、必ず納めておきますわ」

彼女は、しおらしい態度で、陽菜に謝罪した。

「……もし、よろしければ……で、結構ですので。お出かけの件、ご検討いただけると、嬉しいですわ。ごめんなさいね」


完璧なコンビネーションだった。陽菜は、このお嬢様と執事のコンビの恐ろしさを改めて思い知らされる。

「……わ、わかりました。お出かけの件、アリアさんに相談してみます」

陽菜は、力なくそう答えることしかできなかった。


自分の土俵に引き込むはずが、完全に相手の掌の上で転がされていた。だが、陽菜はここで引き下がらなかった。

「それと、先輩! 明日のお昼のことですが!」

「まあ、なんですの?」

「毎日、あのような豪華な昼食会は、私には少し……その、気が引けてしまいます! もし、これからもご一緒させていただけるのでしたら、もっと手軽な、お弁当を持ち寄ってみんなで食べる、というのはいかがでしょうか? それと、私の友人たちも、ご一緒させていただいても?」


これは陽菜なりの苦肉の策であり、せめてもの反撃だった。

陽菜の提案に、クリスティーナは一瞬、眉をひそめたが、すぐにセバスチャンを振り返った。

「セバスチャン、どう思いますこと?」

「そうでございますな。気軽なお弁当を持ち寄っての昼食会も、また乙なものかと存じます」

「……そうですわね。わかりましたわ、陽菜さん。では、そのようにいたしましょう」

クリスティーナはあっさりと了承したが、悪戯っぽく微笑んで付け加えた。

「ですが、お弁当はわたくしたちも用意しますわ。セバスチャン、腕によりをかけて、皆さまが驚くような『お弁当』をお願いしますね」

「かしこまりました、お嬢様」

セバスチャンの目が、キランと光った気がした。


陽菜は、明日、重箱に入ったフォアグラとかキャビアとか、そんなものが「お弁当」として登場する未来を幻視し、結局、何も変わらないのではないか、という一抹の不安を覚えるのだった。


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