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幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
第3章:学園の王子と電子の魔女 ~忍び寄る悪意~

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第21話:戦場(ティーパーティー)へようこそ


ドタバタな朝の後、僕と陽菜は、お茶会へ向かう準備をしていた。

僕はいつもの黒パーカーにマスク、サングラスという「アリア」の戦闘服。一方で、陽菜はクローゼットの奥から引っ張り出してきた、少しだけよそゆきのワンピース姿だった。

「……本当に、大丈夫か?」

「大丈夫よ! 私だって、防衛高校の生徒なんだから。これくらい、なんてことないわ」

陽菜は強気にそう言うが、その顔は少し緊張しているように見えた。


約束の時間にギルドへ向かうと、そこには既にギルドマスターと、今回の護衛として再登板となったブルックとジンが待っていた。

「よう、アリア。そっちのが例の『知人』さんか」

ブルックが陽菜をちらりと見て、にやりと笑う。

ギルドマスターは、僕と陽菜に近づくと、小声で言った。

「いいか、二人とも。今日はあくまでエルロード嬢のご招待だ。絶対に粗相はするなよ。ブルックとジンは、会場の外で待機させる。何かあれば、すぐに駆けつけられるようにしてあるからな」

「……了解した」

「は、はい!」

陽菜も、緊張した面持ちで頷く。


僕と陽菜は、ギルドマスターが手配した地味なセダンに乗り込み、エルロード商会が所有する迎賓館へと向かった。そこが、今日のお茶会の会場だった。

迎賓館は、まるで城のように豪華絢爛で、手入れの行き届いた広大な庭園が広がっていた。僕たちが車を降りると、燕尾服に身を包んだセバスチャンが、深々と一礼して出迎えてくれた。


「ようこそお越しくださいました、アリア様。そして、橘様。我が主、クリスティーナが心よりお待ち申し上げております。どうぞ、こちらへ」

セバスチャンの案内に従い、僕たちは庭園に設置された、大きな白いガゼボ(西洋風あずまや)へと通された。

そこには、白いテーブルクロスがかかったテーブルと、何人もの招待客の姿があった。そのほとんどが、防衛高校の制服を着た、クリスティーナと同じくらいの年頃の少女たちだ。

そして、その中心で、ひときわ優雅に微笑む、燃えるような赤い髪の少女――クリスティーナが、僕たちに気づいて立ち上がった。


「ようこそいらっしゃいましたわ、アリア様。それと、橘さん」

彼女の声に、会場中の視線が一斉に僕たちに集まる。僕の怪しい風体と、その隣に立つ陽菜の姿を、誰もが興味深そうに見ていた。

クリスティーナは、そんな視線を楽しむかのように、僕たちの前まで歩み寄ってきた。

「今日は、わたくしのために、特別なお菓子をたくさんご用意させていただきましたの。どうぞ、存分にお楽しみあそばせ」

その瞳は、特に僕――アリアに注がれている。甘いお菓子と、甘い言葉。だが、その裏には、僕という存在を探ろうとする、鋭い探究心が隠されているのがわかった。


「ささ、お二人ともこちらへ」

クリスティーナは、僕と陽菜を、彼女のすぐ隣の席へと案内した。そこは、このお茶会の主賓席であり、全ての招待客から注目を浴びる、いわば断頭台のような場所だった。

陽菜が、ごくりと喉を鳴らすのが聞こえる。

彼女は僕の隣に座ると、僕にだけ聞こえるように、小さな声で囁いた。

「……れ、蓮。すごいアウェー感……」

「……だろうな」

僕も、この状況に胃がキリキリと痛むのを感じていた。


クリスティーナは、そんな僕たちの様子を見て、扇子で口元を隠しながら、優雅に、そして挑戦的に微笑んだ。

その目は、はっきりとこう語っていた。


(さあ、橘さん。あなたも、アリア様も……お覚悟なさいな♪)


戦いのゴングは、鳴らされた。

僕と陽菜の、甘くて、そしてとてつもなく危険なティーパーティーが、今、始まろうとしていた。


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