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幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
第3章:学園の王子と電子の魔女 ~忍び寄る悪意~

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第19話:陽菜、動く

 

 ギルドから帰宅した僕は、カウンターで受け取ったばかりの報酬袋を、陽菜の目の前のテーブルに置いた。ずしり、と重い音がする。

「これ、今回の報酬だ。陽菜に預ける」

「えっ!? こ、こんなにたくさん!?」

 袋の中身を覗き込んだ陽菜が、驚きの声を上げる。Aランク相当の報酬だ、僕にとっては見たこともないような大金だった。

「だ、だめだよ! これは蓮が命がけで稼いだお金なんだから、私が預かるわけにはいかないよ!」

「でも、僕は今、陽菜の家に居候させてもらってる。食費も、雑費も、全部世話になってるだろ。だから、これはその分だ」

「それにしたって、多すぎるって!」

「じゃあ、最初くらいは受け取ってくれ。それで、僕の装備を揃えるのを手伝ってほしい。それに、陽菜にも何か……」

「わ、わかった! わかったから!」

 僕が食い下がると、陽菜は観念したように、真っ赤な顔で報酬袋を受け取った。

「じゃ、じゃあ、これは二人の『共有財産』ってことで! 私が管理するからね!」


 お金のやり取りを終え、僕は陽菜に明後日の予定を伝えた。

「……それで、指名依頼でお茶会に行くことになった」

「お茶会!?」

「ああ。昨日、護衛したお嬢様の」

「変なことされないでしょうね!? 大丈夫なの!?」

 陽菜が、すごい剣幕で僕に詰め寄る。

「……まあ、今回の護衛のお礼らしいし、ひどい目に遭ったからな」

「うーん……。それなら、無下にもできないか……。わかったわ」

 どうやら、一応は納得してくれたらしい。




 翌日の昼休み。防衛高校の教室は、生徒たちの賑やかな声で満ちていた。


「ねえ、聞いた? 陽菜」

 友人の一人が、興奮した様子で陽菜に話しかけてきた。

「なんでも、上級生のクリスティーナ様が、明日のティーパーティーに、あの『黒フード』さんを招待したって、ウッキウキで自慢してたらしいのよ!」

「……え?」

 陽菜の動きが、ピタリと止まる。

 友人は、そんな陽菜の様子に気づかず、話を続けた。

「クリスティーナ様、飛竜の調査で護衛を頼んだらしくて、その腕前にすっかり惚れ込んじゃったんだって! 『わたくしの騎士ナイト様』だとか言って、もう大変だったらしいわよ」

「ちょっ……! その話、詳しくっ!!」

 陽菜は友人の肩を掴み、すごい形相で詰め寄った。その気迫に、友人は完全に引いている。

「え、え、ええ……。でも、私も詳しくは知らなくて……」

「そう……わかったわ、ありがとう」


 陽菜は友人に礼を言うと、決意を固めた顔で席を立った。

「私、ちょっと行ってくる!」


 陽菜が向かった先は、上級生の教室だった。幸い、クリスティーナは取り巻きの生徒たちと、優雅に談笑しているところだった。

 陽菜は深呼吸を一つして、その輪の中に割って入った。

「――失礼します! クリスティーナ先輩!」

 突然現れた下級生に、クリスティーナは怪訝そうな顔を向けた。

「……あなたは? わたくしに何か用かしら」

「はい! 明日、先輩が開催されるお茶会に、私も参加させていただくことはできませんでしょうか!」


 陽菜の唐突な申し出に、クリスティーナは扇子で口元を隠し、値踏みするように彼女を見つめた。

「まあ。わたくしのお茶会に参加したい、と? 残念ですが、すでにご招待する方々は決まっておりますの。席に余裕はございませんわ。また次の機会があれば、お声がけいたします」

 にべもない断り。だが、陽菜はここで引き下がらなかった。

「そこをなんとかお願いできませんでしょうか! ……実は、アリアさんから、もしよければ同席しないかと、お誘いを受けておりまして……」


 陽菜が「アリア」の名前を出した瞬間、クリスティーナの表情が微かに変わった。

「……なんですって? アリアが、あなたを?」

「はい。アリアさんとは、少し……縁がありまして」

「……そう。アリアが、ねぇ……」

 クリスティーナは、顎に手を当てて考え込む。

(この方、アリアとどういう関係なのかしら? 昨日の話では、アリアは天涯孤独のはず……。でも、無関係の人間を、あの方が気にかけるとも思えない……)

 クリスティーナの頭の中で、様々な憶測が飛び交う。

(……わたくしの知らない、アリアの一面……? よろしいですわ。ならば、この方から情報を引き出すのも一興)


 クリスティーナは、内心の計算を隠し、優雅に微笑んだ。

「……そうですわね。アリアたっての希望とあれば、無下にもできませんわ。護衛の方々も同席されると伺っておりますので、3席ほど予備は見ておりました。その席に余裕があるようでしたら、構いませんわよ」

「本当ですか!?」

「ええ。もちろん、常識の範囲での身だしなみはお願いするとして……あら? あなた、本当にいらっしゃるおつもり?」

 食い気味に喜ぶ陽菜の様子に、クリスティーナは少しだけ面食らったようだった。

「……まあ、よろしいでしょう。もし本当に来られたのなら、歓迎はいたしますわ」

 クリスティーナは、どこか面白そうな顔で陽菜を見ている。

(な、なんなのかしら、この方……。アリアと、ただならぬ関係なのは間違いなさそうね……。ふふ、面白くなってきましたわ。来られるのなら、仲良くしておいた方が、後々のためにもよさそうですわね)


 こうして、陽菜は得意の(?)ハッタリと交渉術で、見事にお茶会への参加権を勝ち取ったのだった。


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