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幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
【第6章】 日常侵食編 ~復讐の駒と覚醒の賢者~

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第121話:受付嬢の独壇場


「――どういうことだ! なぜ外部から侵入者が!」


ノイズ混じりの怒号が、強化外骨格の隊長のヘルメットから迸る。

その苛立ちさえも嘲笑うかのように、彼女――セラさんは、そこにいた。

にこやかで、あまりにも場違いな笑みを浮かべたまま。その手に抱えた巨大なライフルの銃口を、ゆっくりと、こちらへ向けてくる。鋼鉄の鎧に身を包んだ傭兵たちが、まるで的になったかのようにぴたりと動きを止めた。


「どうして、ここに……?」

呆然と漏れた僕の問いに、セラさんは悪戯っぽく片目を瞑ってみせる。そのウィンクは、僕にだけ向けられた秘密の合図のようだった。

「エレクトラちゃんが教えてくれたんですよぉ。『女神様たちが、罠に嵌められました!』って。……まったく、マスターたち大人組は頼りになりませんねぇ」


いつものように穏やかで、どこか気の抜けた声。

僕たちが孤立した瞬間、それを罠だと見抜いていた。そしてギルド本隊とは別に、単独でこのプラントまで。

荒れ狂う嵐の海を、一体どうやって越えてきたというのか。想像すら、できなかった。


「さて、と」


セラさんは僕たちに向き直ると、まるで幼子に言い聞かせるように、その優しい瞳を細める。

「さあさあ、あなたたちは先にお行きなさいな。一番おいしいデザートは、主役が食べないと、でしょう?」

ライフルの銃口が、くいっと通路の奥――動力炉へと続く道を指し示した。


「で、でも、敵が……!」

陽菜が悲鳴のような声を上げる。

「大丈夫ですよぉ」

セラさんは唇に人差し指をあて、静かに、と囁くように微笑んだ。

「この程度のマナーの悪いお客様たちの『おもてなし』は、私一人で十分ですから♪」

最後に、彼女は僕の顔をまっすぐに見つめ、とびきりの笑顔を向ける。

「その代わり、アリアちゃん。あとで、貸しひとつ、ですからねぇ♪」


返事をする間もなかった。

彼女はふわりと身を翻し、僕たちと傭兵たちの間に立ちはだかる。

その華奢な背中が、やけに大きく見えた。


「――通しませんよぉ」


のんびりとしたその声が、引き金だった。


ドゥゥゥゥゥンッ!!


空気が震え、腹の底を直接殴られたような轟音が響き渡る。

セラさんの『ジャッジメント』が火を噴いたのだ。放たれた一弾は傭兵たちの頭上をかすめ、通路の天井を走る巨大なパイプを正確に撃ち抜いた。


ゴオオオオオッ!


裂けたパイプから灼熱の蒸気が滝のように噴き出し、一瞬にして世界を白く染め上げる。傭兵たちの焦る声が、濃い霧の向こうでくぐもって聞こえた。


「今のうちに、行って!」


セラの鋭い声が飛ぶ。

「……っ! 感謝します、セラさん!」

「……すまん!」

僕と陽菜、そしてリリィは顔を見合わせる。セラが作り出した一瞬の好機。僕たちは蒸気と混乱の中を、一気に駆け抜けた。


背後で、再び鉄と肉が砕ける音が響き渡る。

ドゥゥン! ぎゃりん! ドゥン!

「きゃあ!」「ぐわっ!」

ライフルの轟音に次々と掻き消されていく。

それはもはや戦闘ではなかった。一方的な蹂躙。セラさんたった一人の、独壇場だった。


一度だけ、振り返る。

蒸気と硝煙が渦巻く向こう側。フリルのついたエプロンドレスが、血の代わりに蒸気を浴びながら、ワルツを踊るように優雅に、そして無慈悲に戦場を支配していた。


もう、迷わない。

仲間が切り拓いてくれたこの道を、その想いを、無駄にはしない。

僕たちは全ての元凶が待つプラントの最深部――復讐の怪物が待つ玉座へと、ただひたすらに駆けていった。


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