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幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
【第6章】 日常侵食編 ~復讐の駒と覚醒の賢者~

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第117話:嵐の中の三つの刃(やいば)


夜明け前の、鉛色の海。

ザアアアァァ……と、荒れ狂う波音が、世界の終わりを告げるかのよう-に、轟いている。

その、黒くうねる海面の下を、一隻の、流線型の潜水艇が、音もなく滑るように進んでいた。

エルロード商会の技術の粋を集めて建造された、最新鋭のステルス潜水艇『ノートゥールス』。


狭い船内には、僕と、陽菜と、リリィの三人だけ。

戦闘用の、黒を基調としたタクティカルスーツに着替えた僕たちは、それぞれの武器の最終チェックを行っていた。

陽菜は、祈るように、胸元のお守りを握りしめている。

リリィは、壁にもたれかかり、目を閉じて、精神を集中させている。

僕も、ミスリルナイフの、冷たい感触を確かめながら、荒れ狂う自分の心を、必死に鎮めていた。


『――目標ポイントまで、あと30秒。海中ハッチを開きます』

船内に、エレクトラの、冷静な合成音声が響く。

『ギルドマスター率いる本隊は、現在、ポイント・ブラボーにて待機中。皆様が、陽動を開始したのを確認後、突入を開始します。……ご武運を、女神様』


ゴウッ!と、船底から、海水が流れ込む音がする。

僕たちは、顔を見合わせ、力強く、頷いた。


「行くぞ!」

僕を先頭に、僕たちは、開かれたハッチから、荒れ狂う海の中へと、その身を躍らせた。

特殊なスーツのおかげで、呼吸も、動きも、地上と変わらない。

僕たちの目の前には、巨大な鋼鉄の怪物――偽装海上プラントが、その威容を現していた。


プラントの、海面下の構造は、複雑なパイプや支柱が、迷路のように入り組んでいる。その至る所に、水中用の監視ドローンや、自動迎撃タレットが設置されていた。

だが、僕たちの耳には、エレクトラの、的確なナビゲーションが届いている。

『右舷10時方向、タレット二基。リリィ様、お願いします』

「……ふん」

リリィの身体が、水中で、すっ、と影の中に溶けた。

次の瞬間、二基のタレットが、内側から破壊され、火花を散らして沈黙する。


『前方、監視ドローンの編隊です。陽菜様』

「うん!」

陽菜が、手のひらをかざす。水中にもかかわらず、その手から放たれた『陽光の盾』の光は、ドローンのセンサーを完全に焼き切り、その機能を麻痺させた。


僕たちの、完璧な連携。

僕たちは、誰にも気づかれることなく、プラントの、最も警備が手薄な、メンテナンス用のドックへと、たどり着いた。


――ガコン!

ドックに上陸し、スーツのヘルメットを外す。

潮の香りと、鉄の錆びた匂いが、鼻をついた。

その瞬間、けたたましい警報が、プラント全体に鳴り響いた。


「侵入者発見! 侵入者発見!」

「第一ドックへ急行しろ!」

通路の奥から、重武装した私兵たちが、雪崩を打つように、こちらへ向かってくる。


「……上出来だ」

僕は、不敵に笑った。

陽動は、成功。これで、本隊が、動きやすくなる。

「さあ、始めようか。パーティーの、時間だ」

僕が、ナイフを構える。

陽菜が、その隣で、光の盾を展開する。

リリィが、その背後で、影の中に、その身を沈める。


「――お前たちに、俺の大切な日常を、壊させてたまるか!」

僕の叫びを合図に、三つのやいばは、敵の群れの中へと、同時に、切り込んでいった。

嵐の中の、決戦の火蓋が、今、切って落とされた。


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