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幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
【第6章】 日常侵食編 ~復讐の駒と覚醒の賢者~

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第111話:三位一体(トリニティ)


陽菜が『陽光の盾』に目覚めてから数日が過ぎた。

クリスティーナ邸の中庭はもはや僕たちの専用訓練場と化している。

今日の訓練は最終確認。複数の訓練用ゴーレムとの模擬戦だ。


「――始め!」

セバスチャンの涼やかな声が響き渡る。

その瞬間僕たちは三者三様の動きで、同時に駆け出した。


ゴッ!と僕は地面を蹴り、一筋の銀色の閃光となってゴーレムの群れの中心へと切り込んでいく。僕の役割は敵陣を切り裂き攪乱する『矛』。


「蓮!」

僕が一体のゴーレムの腕を切り落としたその背中に、陽菜の声が飛ぶ。

別のゴーレムが僕の死角から、巨大な岩の拳を振り下ろしてきた。

僕は振り返らない。

その必要がないからだ。


僕の背後から黄金色の光の半球――『陽光の盾』が出現し、岩の拳をキィン!という澄んだ音と共に完璧に受け止めた。

衝撃は光の中に霧散し、僕には微塵も届かない。

陽菜は僕の、そして僕たち全員の『盾』。


「――もらった」

ゴーレムの動きが一瞬だけ止まる。

その足元にできた影の中からリリィが、音もなく姿を現した。

まだあどけなさが残る、小柄な少女の姿。しかし、その金色の瞳には幾多の修羅場を越えてきたであろう、老練な狩人の光が宿っている。

金色の髪をなびかせ、その鋭い爪がゴーレムの脚部にある動力源の魔石をいとも簡単に砕き割る。

リリィは戦場を自在に駆け巡り、敵の急所を的確に突く『奇襲の刃』。


――矛が敵陣を穿つ。

――盾がその背中を守る。

――刃が死角から、息の根を止める。


僕たちはもう言葉を交わす必要すらなかった。

視線だけで、呼吸だけで、互いの次の動きが手に取るように分かる。

僕が敵の注意を引きつければ、その隙に陽菜が安全な回復エリアを作り出す。

陽菜が光で敵の目を眩ませれば、その影を使いリリィが必殺の一撃を叩き込む。

リリィが敵の陣形を崩せば、僕がその中心へと最短距離で切り込んでいく。


それはまるで一つの生命体だった。

攻撃と防御と奇襲。

三つの魂が完璧に、一つの意志の下に調和している。


「……見事ですな」

少し離れた場所で戦況を見守っていたセバスチャンが、感嘆の声を漏らす。

クリスティーナもその光景に、うっとりと目を細めていた。


中庭に静寂が戻る。


「はぁっ……はぁっ……」

僕たちは肩で息をしながらも、互いの顔を見合わせ笑った。

陽菜の額には玉のような汗が光り、その笑顔は自信に満ち溢れている。

リリィのいつもは不機嫌そうな顔にも、確かな手応えを感じているのか満足げな色が浮かんでいた。


攻撃の矛であるアリア。

奇襲と索敵を担うリリィ。

そして防御と回復の盾である陽菜。


僕たちの最強の布陣が完成した瞬間だった。

もはや僕たちの連携は以前とは比べ物にならない次元へと達している。

どんな強敵が現れようともこの三人がいれば、乗り越えられない壁はない。

そんな絶対的な確信が、僕たちの胸には満ちていた。


反撃の準備は整った。

後は宿敵の居場所を突き止めるだけ。

僕たちの視線は自然とクリスティーナ邸の、母屋の方へと向けられていた。


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