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幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
【第6章】 日常侵食編 ~復讐の駒と覚醒の賢者~

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第104話:二つの魂


リリィが、自らの出自について語り終えた後、サンルームには、重たい沈黙が落ちた。

カップの中の紅茶は、すっかり冷めてしまっている。窓の外では、鳥のさえずりが聞こえるのに、ガラス一枚を隔てたこの部屋だけが、別の時間の流れにあるかのようだった。


陽菜も、クリスティーナも、リリィのあまりにも壮絶な告白に、かける言葉を見つけられずにいる。

僕もまた、自分の脳裏に断片的に存在する『アリアの知識』と、目の前の少女の話を、必死に結びつけようとしていた。


やがて、リリィは、ゆっくりと顔を上げた。

その、あどけなさが残る顔には、先ほどまでの内向的な響きとは少し違う、賢者としての、鋭い光が宿っていた。

その金色の瞳が、まっすぐに、僕――アリアを、射抜いた。


「……そして……アリア? あなたは、誰なのですか?」


その声は、静かだが、有無を言わせぬ響きを持っていた。

「私が知っていたアリアさんは、他人にここまで心を許すような少女ではなかったと思います。もっと、孤高で、他者を寄せ付けない、研ぎ澄まされた刃のような……」

彼女は、ソファから静かに立ち上がると、僕の目の前まで歩み寄ってきた。

僕のサングラスの、すぐ目の前で、ぴたり、と足を止める。


「でも、あなたは、違う」

リリィは、その小さな手を、僕の胸に、そっと当てた。

「魂の波長が、混じっています。……アリアさんではない、別の、温かくて、そして少しだけ臆病な魂の響きが、あなたから聞こえます」

その言葉に、僕の心臓が、どきり、と大きく跳ねた。

彼女には、見えている。僕の、この身体の奥に隠された、本当の姿が。


「――あなたは、一体、誰なのですか?」


リリィの、静かな、しかし、決して逃がすことのない問いかけ。

陽菜とクリスティーナが、息を呑む気配がした。


僕は、観念した。

もう、隠し通すことはできない。

いや、隠し通すべきではないのだ。この、命を懸けて共に戦うと決めた、仲間たちに対しては。

僕は、ゆっくりと、かけていたサングラスを外した。

アリアの、金色の瞳が、あらわになる。


「……俺は」

僕の口から漏れた声は、まだ、澄んだ少女のものだった。

だが、その響きには、紛れもない、一人の少年の魂が込められていた。

「俺の名前は、斎藤蓮。……ただの、男子高校生だ」


しーん、と、部屋が、今度こそ、完全な静寂に包まれた。

陽菜は、僕の手を、ぎゅっと握りしめてくれている。

クリスティーナは、扇子を持つ手を止め、信じられないといった顔で、僕の顔を凝視している。


僕は、全てを話した。

壁外授業での事故のこと。

気がついたら、この身体になっていたこと。

僕の意識を核として、アリアの身体と知識だけが、混ざり合ってしまったらしいこと。


僕が、語り終えるまで、誰も、一言も発さなかった。

ただ、窓から差し込む日差しが、僕たちの間に落ちる、濃い影を、静かに映し出しているだけだった。


僕の、最大の秘密。

その告白が、僕たちの関係を、どう変えてしまうのか。

僕は、ただ、仲間たちの、次の言葉を、待つことしかできなかった。

永遠のように感じられる、沈黙の時間が、流れていった。


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