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幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
【第6章】 日常侵食編 ~復讐の駒と覚醒の賢者~

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第99話:覚醒への序曲


深夜。

月明かりだけがステンドグラスを通して静かに差し込む医療室。

陽菜は今日もリリィのそばで椅子に座ったまま、うとうとしていた。その手はリリィの小さな前足をまるで祈るように、優しく握りしめている。

僕はそんな彼女の肩にそっとブランケットをかけてやった。


その時だった。

「……ん……」

陽菜が小さく身じろぎした。

彼女は目を覚ましたわけではない。眠りながらその頬を一筋の涙で濡らしていた。

「……リリィ……。お願い……目を覚まして……」

寝言だった。

そのあまりにも悲痛な魂からの叫び。


「……私がもっと強くならなきゃ……。蓮もリリィもみんなを、守れるくらいに……強くなるから……。だからお願い……!」


陽菜の魂からの叫び。

その純粋でひたむきな想い。

それに、応えるかのように。


『――観測開始。対象橘陽菜より、規定値を超える想念エネルギーを検出。対象リリィの生命エネルギー波形と、同調シンクロを開始します』

部屋の隅からエレクトラの冷静なアナウンスが響いた。

彼女はこの瞬間を待っていたのだ。

『アリア様、陽菜様のエネルギー波形が、リリィ様の『核』の固有振動数と完全に一致! いけます! 奇跡が、科学に変わる瞬間です!』


――ぽぅ……。


陽菜のリリィの手を握るその手から、淡い温かい光が溢れ出し始めた。

それは彼女のスキルである炎の光ではない。もっと優しくて慈愛に満ちた、まさしく太陽のような光。


「……これは……」

僕は息を呑んだ。

『リリィ様の休眠中の『核』に陽菜様のエネルギーが到達。再起動シークエンス、開始』


陽菜から溢れ出した光はリリィの冷たくなりかけていた身体へと、まるで命の糸を紡ぐようにそっと流れ込んでいく。

するとどうだろう。

今度はリリィの身体からも金色の気高い光が、呼応するように溢れ出し始めたのだ。


陽菜の太陽の光。

リリィの星の光。

二つの光が共鳴し混じり合い、その輝きをらせんを描きながら増していく。

部屋全体がまるで夜明けのような、幻想的な光に包まれた。


光の中心でリリィの身体がゆっくりとその形を変えていくのが見えた。

小さな猫の身体が、金色の光の粒子へと分解され、再構築されていく。

もっと大きくしなやかな、少女の輪郭へと。金色の髪が伸び、その頭には愛らしい獣の耳が形作られる。

そして同時に陽菜の身体もまたその光を浴びて、何かが内側から目覚めようとしているのを、僕は肌で感じていた。彼女の身体を巡る魔力が、炎の荒々しさから、光の温かさへと、その性質そのものを変容させていく。


『――奇跡の始まりですわね』

エレクトラのどこか満足げな呟きだけが、その奇跡の瞬間を静かに記録していた。

僕たちの反撃の物語。

その本当の序曲が今、奏でられようとしていた。


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