表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染の 『女の子同士だから大丈夫!』 が一番大丈夫じゃない!  作者: 輝夜
【第6章】 日常侵食編 ~復讐の駒と覚醒の賢者~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/142

第94話:闇夜の円舞曲(ワルツ)


闇と閃光が支配する大広間。

それは血と硝煙の匂いが混じり合う、即席の舞踏会。

僕たちの死と隣り合わせの円舞曲ワルツが始まった。


シャンデリアの残光と陽菜が放つ炎だけが、瞬くように戦場の影絵を壁に映し出す。

銃声がオーケストラの打楽器のように、不規則なリズムを刻んでいた。


「陽菜、右翼三人!」

「うん!」

僕の声を合図に、僕たちはまるで長年連れ添ったダンスパートナーのように息を合わせて動いた。

僕が正面から突撃してくる傭兵たちの主力を、水の流れのように受け流す。身体強化した僕の身体は彼らの剛力をいなし、その勢いを利用して別の敵へとぶつけた。

彼らのコンバットナイフが僕の純白のドレスの裾を掠め、白い花びらのようにひらりと宙を舞う。


その隙に陽菜がステップを踏んだ。

彼女は僕の死角から回り込もうとしていた別の傭兵たちの足元に、炎の壁を踊るように描き出す。燃え盛る炎のカーテンは彼らの進路を完全に塞ぎ、その隊列を美しくそして無慈悲に分断した。


「このガキどもが……!」

傭兵たちが悪態をつく。

彼らの顔には焦りと、そして理解を超えたものへの微かな恐怖の色が浮かんでいた。

ただの学生のはずの少女二人が、なぜこれほどまでに完璧な連携を……?


だが僕たちの舞踏は、二人だけで完結するものではない。


天井の梁から、あるいはカーテンの影から。

神出鬼没に現れる燕尾服の死神。

「――おっと。そこから先は紳士淑女の領域。野蛮な方はご遠慮願いますよ」

セバスチャンが背後から音もなく傭兵の一人に近づき、その首筋に銀の盆栽バサミ(庭の手入れ用)を、まるで薔薇の棘を剪定するかのように静かに突き立てる。男は声もなく崩れ落ちた。

彼は決して舞踏の主役にはならない。だが僕たちのステップが乱れた時、あるいは死角から迫る脅威を、まるで床の埃を払うかのように静かに、しかし確実に「処理」していく。


そしてもう一つの小さな影。

リリィは天井裏の配管や床下のダクトを、闇に溶けるように音もなく駆け回っていた。

猫の持つ優れた聴覚と嗅覚。そして賢者としての常人離れした状況認識能力。

彼女は傭兵たちの無線のノイズ、火薬の匂いの濃度、そして床を伝わる微細な振動から、この戦場全体の地図をその頭脳に描き出していた。


(……いた。二階の東棟テラス。他とは違う重く、そして冷静な気配が一つ。あれがリーダーだにゃ)

リリィの金色の瞳が闇の中で、狩人のように鋭く光った。


僕たちはそれぞれの持ち場で、完璧に機能していた。

矛として敵陣を舞い貫く僕。

盾として仲間を守り、炎の円舞で道を切り開く陽菜。

影として脅-威を摘み取り舞台を整えるセバスチャン。

そして眼として戦場を俯瞰し、勝機を見出すリリィ。


だが敵もまた、ただやられるだけの素人ではなかった。

彼らはこの世界の常識を超えた僕たちの連携に戸惑いながらも、その豊富な実戦経験からこの混沌とした状況を打開するための、最も非情でそして最も有効な一点を見つけ出していた。


「――ターゲットを変更しろ!」

誰かが獣のような声で叫んだ。

「銀髪の化け物は後回しだ! まずはあの炎使いの小娘を潰せ! あれが奴らの連携の要だ!」


その声と共に傭兵たちの殺意に満ちた視線が、一斉に陽菜へと突き刺さった。

優雅だったはずの円舞曲の調べが不協和音を立てて軋み始める。

戦場の流れが、一瞬にして変わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ