うまくいったかどうか
クラウディアは変身を解いた。独特のとがった耳、銀色の髪、透き通るような白い肌、そして二の腕にアザミの刺青が鮮やかな、クラウディア本来の姿に戻った。
「どうだった? 予定どおりに皇帝の命は取れてた?」
わたしは、まず、先ほどからずっと気になっていたことをきいてみた。
しかし、クラウディアは「う~ん」と首をかしげるばかりで、
「申し訳ありません。あの…… 正直、よく分からないのです」
話によれば、帝都の城門を出てしばらくすると、理由を告げられぬまま停止を命じられ、そのまま長い時間、待たされた挙句、「都合により本日の式典は中止」と、明確な理由もなく解散を告げられたとか。
「うまくいったと思うけど、残念ながら、ハッキリ確認できなかったよ」
と、プチドラ。姿を隠して状況を探ってみたところ、皇帝は体に毛布をかけられて輿のようなものに乗せられ、警備兵に厳重にガードされながら、どこかに搬送されていったという。
その話をきくと、ガイウスは、「よしっ!」と右手の拳を握りしめて高くさし上げ、
「それなら、少なくとも致命傷くらい与えているだろう。今日は祝杯をあげよう」
ガイウスは成功を確信しているようだ。でも、わたし的には、本当にエルブンアローが皇帝に命中しているのかどうか、不安でならない。結局は、エルフの技術の信頼性の問題に行き着くけど、果たして?
翌朝、わたしはいつもより早く起き、プチドラを抱いて馬車に乗り、宮殿に向かった。目的は、もちろん、皇帝の生死を確認すること。
プチドラは眠そうに目をこすりながら、
「わざわざ確認に行かなくてもいいのに。そのうちに分かると思うよ。そもそも皇帝暗殺事件のヤバイ情報を、簡単に教えてくれるとは思えないし……」
「早く結果を知りたいのよ。わたしは心配性だから」
ところが、宮殿近くは、いつもと様子が違っていた。重武装の警備兵が多数、行ったり来たりしている。馬車は宮殿の手前で警備兵にストップをかけられ、
「申し訳ないが、実は、これより先、立ち入り禁止なのです!」
「どうして?」
「理由は、我々みたいな下っ端には伝わってきません。とにかくこれより先には進入禁止なのです。ここはどうか、御理解いただきたい」
わけも分からず門前払いとはひどい話だけど、とにかく、ただ事ではないようだ。ということは、皇帝はエルブンアローの直撃を受け死亡、あるいは、現在、危篤状態だろうか。
「今日は帝国建国500年祭の行事の一つとして、宮殿でパーティーが行われるはずだけど」
「申し訳ありません。詳しい話は聞かされていないのですが、とにかくダメなので、ダメなものはダメと、こういう指示を受けているのです」
警備兵相手では、これ以上話をしても無駄だろう。ただ、感触としては、うまくいってそうな気配。




