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暗殺の朝

 一夜明けて暗殺の朝、わたしは、プチドラに女中部屋(メイド部屋)からこっそり拝借してきてもらったメイド服に着替え、執事が呼びに来る前に、わたしソックリに変身したクラウディアと入れ替わった。見れば見るほど、どっちが本物か分からないくらい、よく似ている。

 わたしはプチドラをクラウディアに預け、

「頼むわ。適当にみんなについていけばいいから」

「本当に大丈夫でしょうか…… なんといいますか、その……」

 もう一人のわたし、すなわちクラウディアは不安げに言った。

 プチドラは、クラウディアの腕の中から、

「ボクがついてるよ。何が起こっても、まあ、なんとかなるだろう、いや、必ずなんとかするから」

「プチドラ、しっかりクラウディアをエスコートするのよ」

「任せて、マスター」

 プチドラは小さくVサイン。式典前後にツンドラ候に絡まれることは目に見えてるが(特に、式典が終われば、ゲテモン屋で恐怖のフルコースみたいな)、マイペースで「単細胞」のツンドラ候のことだから、入れ替わっていることには気が付かないだろう。ドラゴニア候も帝国宰相も自分の仕事で手が一杯だろうから、見破られる心配はない。

 わたしはクラウディアとプチドラに無事なる再会を約束すると、伝説のエルブンボウを取り出し、それを持って一人で地下室に向かった。


 地下室では既にガイウスが準備を終えて待っていた。ガイウスは、わたしを見るなり、

「ほぉ、昨日とは感じが違うな。こっちの方がいいんじゃないか?」

「わたしもこの格好の方が気に入ってるのよ。これは冗談じゃなくて、本当のことよ。でも、それはそれとして、あまり時間がないわ。簡単に今日の段取りを説明するわね」

 予定としては、先回りして、歴代皇帝の廟の周辺、一般人立ち入り禁止地帯の適当な場所(有効射程ギリギリのところが望ましい)に陣取り、皇帝が随行を連れて現れれば、矢を射掛けてすぐに現場を離脱、屋敷に戻ってクラウディアの報告を待つことになっている。

「行きましょうか」

 わたしは伝説のエルブンボウと一本の高品質エルブンアローを持ち、立ち上がった。矢が一本ということには、多少、不安もあるが、高品質エルブンアローで狙いを外すことは有り得ないらしい。どのみち、二度目を狙うチャンスはないのだから、最初の一撃ですべてが決まることになるだろう。


 その時、ドタバタと1階を人が走り回るような音が、天井から響いた。ガイウスは心配そうに天井を見上げ、

「今日は騒がしいな。ひょっとすると、何か事件でも?」

「一応、事件は事件だけど…… 大したことはないわ。予想より早かったわね、きっとツンドラ候が迎えに来たのよ。クラウディアにはプチドラがついてるから、心配ないわ」

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