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エルブンアロー

 こうして、どうにかガイウスとクラウディアの協力を得られることとなった。この二人が手伝ってくれるなら十分だろう。もともと、大人数で闇討ちをかけるような話ではない。

「ありがとう。あなたたちが協力してくれるなら、きっとうまくいくわ。ただ、二点ほど問題点があるけど、それをどうするか」

 暗殺者と随行の一人二役、攻撃をかける際の射程距離の問題が、依然として残っていた。

「それくらいなら、問題というほどのことはない」

 ガイウスはそう言うと、クラウディアに目で合図を送った。クラウディアは小さくうなずき、呪文を唱える。すると、あ~ら不思議、わたしの目の前に、鏡で映したよりもソックリな、もう一人のわたしが立っていた。

「どうだい? 変身魔法はクラウディアの得意とするところだ。姿かたちなら、完璧にコピーできる。ただ、本人の性格まではマネできないがね」

 ガイウスは得意げに、少々悪戯っぽい表情を交えて言った。「性格まで」と言われると、多少引っかからないではないが、わたしは、もう一人のわたし(クラウディア)に顔を近づけ、上から下まで、ひととおりチェック(クラウディアは、なんだか恥ずかしそうに頬を赤らめて顔をそむけた)。

「本当に瓜二つね。これならバレないわ」

「ただ、もう一度言うが、その人の性格や考え方まではコピーできないから、そこからボロが出ないか、心配なところはある」

「大丈夫よ。随行員は一言も喋ってはならないことになってるから。式典前後がちょっぴり問題だけど、プチドラ、つまり隻眼の黒龍を抱いていってもらって、分からないことがあればプチドラにきけばいいわ。式典中も、プチドラがこっそり姿を消してついていれば、突発事態にも対処できる」


 ガイウスは、ここで一旦、この場を外した。なんだろう? もう一人のわたし(クラウディア)は、プチドラを抱き上げ、エルフの言葉だろうか、わたしの知らない言葉で話をしている。

 しばらくすると、ガイウスが一本の光り輝く矢を持って戻ってきた。見た目、タダの矢でないことは分かる。

「これはエルブンアロー。『伝説の』とまではいかないが、品質的にはかなり高級だから、伝説のエルブンボウと組み合わせれば、目視範囲外からでも目標を狙えるだろう。これを使おう」

 わたしはエルブンアローを手に取った。「エルフの技術はすごい」と言いたいところだけど、「目視範囲外から」狙うって、一体、どういうこと???

「どうした? 不思議そうな顔をしているな。『目視範囲外』が引っかかるのかな。念のため説明すると、高級なエルブンアローは、射手が目標をイメージして射るだけで、進路を微調整しながら目標に到達するのさ」

 どういう原理でそうなっているのか皆目見当がつかないが、なんとも便利な機能だこと。現代風に言えば、撃ちっ放しミサイルだろう。

「ありがとう、きっとうまくいくわ。今日は遅いから、もう寝ましょう。明日の朝、また来るから、よろしく」

 わたしはプチドラを抱き、思わず大きなあくびをしつつ、地下室を出た。

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