真実への誘い
神がかり行者はわたしの手を取り、
「もし、おまえが本当に聡明で勇気があるなら、この世界の真実を教えてやろう」
「はい? 真実??」
唐突に「世界の真実」と言われても、どう反応してよいものか分からないが、神がかり行者は、こちらの事情や都合など、一向に気にかける様子はない。
「さあ、どうする? おまえも偽りの日常に飼いならされたメスブタなのか? それとも、見たいもの以外のものを見る勇気があるか?」
口の悪いジジィだが…… それはそれとして、神がかり行者の言う「真実」には、興味が引かれないではない。「どうしようかな」と思案していると、プチドラがドレスの袖を引っ張り、
「マスター、この際だから、教えてもらったら?」
「ええ、そうね…… でも……」
その時、神がかり行者は、突然「うおぉ」と大声を上げ、
「どこかで見たと思ったら、おまえは隻眼の黒龍じゃないか! 久しぶりだなあ。でも、なんだか随分と小さくなったようだが?」
プチドラを強引にわたしから奪い取り、頭より高くさし上げた。神がかり行者とプチドラは昔からの知り合いだったようだ。それなら最初から教えてくれればよかったのに。それとも、何か事情があって?
すると、プチドラと神がかり行者は、なぜか急に真顔になって、
……*@▼$☆㌢♯∮≠λ!Ψ〆◎Ё{|∮¥〇★$ж☆&%≠℡∥\√……
知らない言葉(感じはダーク・エルフの言葉とは少し違うような……)を使い、高速で会話を始めた。話は、わたしが「なんなんだ」と首をひねる間に、ほんの数秒で済んだ。
神がかり行者は、わたしの方に向き直り、
「そうだったのか、隻眼の黒龍から話は聞いた。おまえはなかなか見所がありそうだな。ついてこい。この世界の真実をいうもの教えてやろう」
プチドラも無言でうなずく。「真実」とやらを聞かされるのは、逃れられない運命らしい。
馬車を屋敷に帰すと、神がかり行者はわたしの手首を握り、魔法の呪文唱えた。すると、瞬時に周囲の景色が一変し、見渡す限り遮るもののない暗黒の空間が広がっていた。上下左右、どこを見ても真っ暗闇で、闇の中をフワフワと浮かんでいるような、不思議な感覚。
「邪魔が入ると面倒なのでな。瞬間移動で異空間にワープしたと、こういうわけだ」
神がかり行者が言った。その言葉のとおり、暗黒の空間内には、わたし、神がかり行者、プチドラ以外、誰もいない。
「刮目すべし! これが、この世界の真実だ!!」
突然、目の前に巨大なスクリーンが現れた。そのスクリーンに映っていたものは……




