秘密結社
エルフの集団とは話がついたみたいだけど、相手の正体がよく分からないだけに、なんとなく気味の悪さが残っている。でも、今日はもう遅い。「開かずの間」の探索を始めた時、既に日付が変わりそうな時刻だったから、今は真夜中だろう。とりあえず自分の部屋に戻って寝ることにしよう。わたしはプチドラを抱き、エルフたちに別れを告げ、来た道を戻り始めた。
「よかったよかった」
プチドラは鼻歌交じりに言った。
「ねえ、何がそんなに『よかった』の?」
「無事に話がまとまったからね。相手はエルフ、つまりメアリーやマリアの団体さんが相手だから、話がまとまらないと、場合によっては危ないことになっていたかも」
「エルフは見れば分かるわ。でも、どうしてエルフの集団がこの屋敷の地下に?」
「え~っと、それは、かなり長い話になるけど、聞く?」
「長い話なの? 今日はもう遅いわ。部屋に着くまでに終わる程度に、コンパクトにまとめてよ」
「う~ん、それは難しい難しい注文だね」
プチドラの話によれば、エルフの中には、ヒューマンやドワーフと協調路線を採るグループと、それとは反対に対決路線を採るグループがあり、先刻のエルフは後者(つまり、一般的には、いわゆるひとつの「ダーク・エルフ」)だという。彼らは何年も前にこの屋敷が空き家だったことに目をつけ、屋敷の地下にアジトを作り上げ、早い話、秘密結社による反政府活動を行っていた。ちなみに、リーダーの男の名はガイウスというらしい。
「この前は麻薬、今回は反政府の秘密結社か……」
わたしは思わずため息をついた。わたしには、非合法的なものを引き寄せる得体の知れない力が備わっているのだろうか。
「反政府組織をかくまっているなんて、バレたらタダじゃ済まないでしょうね」
「そうだね。でも、バレなければ、何も問題はないよ。こちらに『迷惑が掛からないようにする』とも言ってたし、家賃も払ってくれるんだから、置いてあげようよ」
なぜか、プチドラは妙にダークエルフの肩を持つ。わたしは、ふと、意地悪してみたくなって、
「でも、バレたら終わりよ。プチドラ、あなたは、わたしよりもあのエルフたちの方が大事なの?」
すると、プチドラはあたふたと、
「それは違うよ。ボクにとってはマスターが一番で…… でも、それは、そういうことじゃなくて」
「今のは戯れよ。あなたの忠誠心は疑っていないわ。今日はもう寝ましょう」
話をしているうちに、わたしたちは寝室の前まで戻ってきていた。なんだか、今回も犯罪的な、微妙なストーリーになりそうな気がするが…… 今日は疲れたし、とにかく寝よう。




