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ザ☆旅行記Ⅴ ダーク・エルフ  作者: 小宮登志子
第2章 帝国建国500年祭
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交渉の結果

 交渉は、かなり長い時間、続いた。意味は分からないが、時折、語気を強めたり、ドンと音を立てて床を踏みしめたりしていることから、激しいやり取りになっていることは想像がつく。なんとなく先行き不透明感に加え、転がった死体が無言で威圧してくるようで、あまり気持ちのよい状況ではない。

 やがて、プチドラと話していたエルフのリーダーらしい男が、仲間の方を振り向いた。エルフたちは無言で首を縦に振る。見た感じ、一応、合意に達したようだ。

プチドラはわたしの足元まで駆けてきてニッコリと、

「マスター、話はついたよ」

「そうなの、それはよかったわ。でも、わたしにはサッパリ分からないわ」

「かいつまんで言うと、彼らの主張は、『今までのように地下を使わせてほしい。なお、地上まで音が響かないようにすることは約束する』ということだよ」

「それだけ? 随分と簡単なのね。その割には話が長かったようだけど」

「途中に微妙な問題があったりして、なかなか一筋縄には……」

 簡単な話なのか難しい話なのか、イマイチよく分からないが……


 ただ、それはそれとして、この屋敷のオーナーとしては、

「音が響かないなら使っても構わないけど、使用料は払ってもらえるのかしら?」

 すると、エルフたちは、なんだか妙な顔をして互いに顔を見合わせたが、やがて……


 ハハハ! ハッハッハッ!! ハッハッハッハッハッ!!!


 エルフたちは声を上げて笑い出した。笑い声は国籍や種族に関係なく共通のようだ。

「伯爵様ともあろう方が、家賃を払ってくれって? 面白いことをのたまうものだな」

 リーダーらしい男が言った。しかも、わたしにも分かる言葉で。だったら、さっきのはなんだったんだか……

「分かった。言い値で払ってやろう!」

 なんだか小バカにされているようで、あまりよい気分ではないが、

「だったら、このくらいでどうかしら?」

 わたしは指を3本立てて見せた。すると、リーダーらしい男は2、3度うなずき、

「その程度かね。意外とささやかな要求だな。1日につき金貨3枚なら、安いものだ」

 金貨3枚? わたしは金貨ではなく銀貨3枚のつもりで指を立てたんだけど…… なんだか話がかみ合っていないような気もしないではないが、相手が勝手に勘違いしてくれているなら、そのままにしておこう。こちらから訂正してやる義理もない。

 何はともあれ、懸案事項は解決と見てよさそうだ。でも、なんだか話がうますぎる。あの死体も謎のままだし、これは、経験則上、何か裏がありそうな……いや、きっと何かある、そんな予感。

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