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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第6章-2 みんなからの祝福、いただきます。~妃那&彬編~

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13話 これでも一応、感動の再会です

本日(2023/04/28)は、二話投稿します。


前話からの続きの場面です。

 裏門にひっそりといつものロールスロイスが止まっている。

 彬に気づいた運転手がドアを開けてくれるので、すぐに乗り込んだ。


 抱き合って感動の再会かと思えば、妃那はいつもと変わらず無表情だ。あいさつもなし。


(ええー……)


 出鼻をくじかれ、彬はしゅんとしながら隣に座っていた。


 ホテルの前に到着すると、「では、明日6時に」と、運転手は言って車で去っていった。


「迎えの時間、決めてあるの?」


 いつもなら、そろそろ帰るかという頃に電話をして、迎えに来てもらう。


 6時の迎えが決まっているということは、完全朝帰りだ。


 ――が、妃那は無言のまま彬の腕を引きずり、いつもの部屋のボタンを押して、鍵を受け取ると、部屋まで一直線。


(……もしかして、ガマンしてる?)


 案の定、部屋に入ったとたん、妃那はそのまま彬をドアに押し付けて、熱いキスをしてきた。


 今は話をするのももどかしい。

 一度失ったと思って、絶望の淵まで落とされ、今、手の中に戻ってきたかけがえのない存在――妃那が確かにそこにいることを感じる方が先だった。




 無我夢中という言葉がピッタリくるほど、お互いに求め合って、そして、力尽きた。


「君、激しすぎるよ……」


 胸に頭を預けてくる妃那の頭を抱き寄せて、彬は息を整えていた。


「だって、ものすごくガマンしたんですもの。お父様がいいと言ってくださった時から、もう身体がうずいて。圭介に報告をしようと思ったのに、ちっとも部屋に戻ってこないから、遅くなってしまったわ」


「それから、電話をかけてきたんだ」


「ええ、そうよ」


「それ、なんで僕が先じゃないの!? 死ぬ思いして、家で半分死んだように転がってたのに!」


 彬は妃那の頭のてっぺんに向かって叫んだ。


「でも、電話をかけたら、すぐに出かけなければならなくなってしまうでしょう」


「……まあ、そうだけど」


「彬に会ってしまったら、電話をする時間はもったいないから、圭介にはかけられないでしょう? やはり電話をする前ということになるのでは?」


「……うーん、そうかも。けど、死んでるか心配するなら、もっと早くじゃないのかな、と思っただけ」


「でも、圭介と会ったのでしょう?」


「うん」


「なら、大丈夫よ。わたしも圭介の言葉で生きてみようと思ったから。きっと彬にもそう思わせてくれると信じていたわ。

 あなたがすぐに電話に出ないから、死んだのかと思ったのよ。それだけのこと」


「あ、そう……。じゃあ、圭介さんに会った後、僕は元気だと思ってたわけだ」


「そうよ」


「いっとくけど、全然そんなことないから! ものすごく落ち込んで、いっぱい後悔して、薫子にも心配かけて……。圭介さん、そこまで救ってくれなかったよ!」


 妃那は顔を上げて、意外そうに見てきた。


「それは驚いたわ。圭介も桜子のことで余裕がないのかしら。でも、大丈夫。これからはわたしがいるのだから」


「そのいない間がつらかったって話をしてるんだけどねえ……。もう今となっては、どうでもいいけど」


「ええ。わたしはここにいるもの」


「ほっぺ、もう痛くない?」


 見た目に赤くなっている様子はなかったが、そっと頬に触れながら聞いた。


「ええ。それほど強くは叩かれなかったし」


「お父さんが入ってきた時、やっぱりネクタイは言い逃れできなかった?」


「ネクタイ?」と、妃那が首を傾げる。


「お父さん、落ちていたネクタイ見て、僕に気づいたんじゃないの?」


「いいえ。コンドームの空袋がベッドに落ちていたからよ」


「そっち!?」


「ネクタイだったら、いくらでも言い訳できるわ。圭介のものを預かっているとか。

 さすがにコンドームはわたし一人には必要ないもの。何も言えなかったわ」


「だよねー……。それは言い逃れできないか」


「けれど、おかげで彬を紹介したことになったから、よかったのではないかしら」


「……どうだろ。同じ怒られるなら、もうちょっと違う形もあったかなと……。紹介とかいって、僕、顔も見せなかったし」


「顔は知っているからいいでしょう?」


「壇上からものすごいにらまれたけど。その時だって、お父さんが知ってたこと、気づけたのにな」


「彬が気にすることはないわ。全部圭介が悪いのだから」


「さすがに全部とはいかないと思うけど……」


「いいえ。そんな大切なことをわたしに言わなかった圭介が悪いのよ。親に紹介だの、クリスマスだのと、桜子のことで浮かれて、すっかり忘れていたのだから」


「まあ、圭介さんも自分のことで、いっぱいいっぱいな時期ってことか」


 圭介も完璧なわけではない。

 そんなことを思って、どこかほっとするのと同時に笑っていた。

次話もこの場面が続きます。

二人のプレゼント交換は……。

お時間ありましたら、続けてどうぞ!

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