表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第6章-1 みんなからの祝福、いただきます。~母ちゃん編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

231/320

10話 メガネっ娘、最高

本日(2023/03/21)、二話目になります。

 翌日の放課後、桜子がトイレで変装してくるというので、圭介は教室で待っていた。


「お待たせ」と戻ってきた桜子は、長い髪を後ろで一つに三つ編みにし、前髪で目元を隠して細いフレームのメガネをかけていた。


(ヤバい、メガネかわいい! 美少女は何やってもかわいい!)


 圭介は思わず顔をとろけさせてしまった。


「どうかな。これならあんまり目立たない?」


「地味にはなってるけど、すごくかわいい……」


「それだと、手をつないで歩けないってこと?」


 桜子はどうやらほめ言葉より、そちらの方が気になるらしい。


「ああ、うん、どうかな。おれからすると知ってるからわかっちゃうから、何とも言えないんだけど」


「うーん、微妙だね。薫子は大丈夫って言ってたんだけど」


「なら、大丈夫じゃない?」


「それなら」と、桜子は笑顔で手を差し出してくる。


「行こうか」と、圭介も笑顔でその手を取って歩き出した。


 デートの始まりだ。




 特にどこに行くと決めていたわけではなかったので、帰りに寄りやすい渋谷に行って、街をプラプラと歩いていた。


「ねえ、今日からもう12月だよ? 今年ももう終わりだね」


 桜子の言う通り、街はクリスマスの飾り付けで華やかになっている。

 久しぶりに街に出てきたおかげで、そんなことすら忘れていた。


「クリスマスって毎年どうしてるんだ?」


「うちは家族でパーティかな。圭介は?」


「母ちゃん、仕事だったから、おれは友達と遊びに行ったり、友達んちでパーティやったり」


「今年は?」


「まだ予定は入っていないはずだけど」


「そう」


(……クリスマスって、海外はともかく、日本では恋人がいたら恋人と過ごす日だよな? おれもアリなの? ていうか、カノジョと過ごすクリスマスなんて、夢みたいなんだけど)


 とはいえ、家族で過ごすと言われてしまったら、どうしようもないのだが。


「イヴの日、出てこられるようなら、デートする?」


 圭介が聞いてみると、桜子は振り仰いで笑顔でうなずいた。


「うん! 夜は明けておく」


「じゃあ、約束。夜ならイルミネーションでも見に行こうか?」


「うん。いろいろ見て歩きたいなー。あちこちで有名になってるイルミネーションあるから」


「そうなの?」


「テレビの特集で今年のイルミネーション紹介していたから、行きたいなーって思っていたの。圭介と一緒に行けるなら、きっともっと素敵だよ」


 桜子の笑顔がまぶしい。

 このままぎゅうっと抱きしめて、キスしたくなってしまう。


 『おれはご学友』を念仏のように唱えて、自分を落ち着かせるしかなかった。




 クリスマスにデートとなると、プレゼントは必須。

 なので、街を歩きながら桜子の様子をうかがっていたのだが、なかなかほしいものが何なのかにはたどり着けなかった。


(カノジョだから、やっぱり定番のアクセサリー? それとも、冬らしくマフラーとか手袋?)


 指輪、ネックレス、ブレスレット――デパートのアクセサリー売り場を通りがかるたびにチラチラ気にしていたのだが、桜子は足を止めてくれない。


「ああ、これ、きれい」とか言ってくれればヒントになるのに、と圭介はそのたびにがっかりしていた。


(……あとは奥の手、薫子に頼るしかないな)




 夕食は桜子の前に行きたいと言っていたパスタ屋に行った。


「圭介、よく覚えてるよね。あたしの方が忘れちゃってたよ」


「ほら、数少ないデートだから、1個1個まだよく覚えてるだけ」


「どんなにいっぱいデートしても、覚えていたいなあ」


「詳細までは自信ないけど、一つ一つが二人の思い出になっていくんだもんな。……ああ、なんかいいかも。何年も経って、あの時こうしたよね、みたいな話をするのって」


「素敵だよね」と、桜子も頬杖をついて微笑む。


「……あ、そうだ、話をしたかったんだけど」


「なに?」


「前に母親に紹介するって言ったこと、覚えてる?」


 桜子はゴフッと飲みかけの水を噴いた。


「ご、ごめん。びっくりしちゃって」


「イヤならかまわないんだけど」


「イヤなわけないでしょ! だって、圭介のお母さんなんだから!」と、桜子はあわてたように言う。


「おれはもうおまえの親に会っているし、当然紹介しなくちゃって思ってたんだけど、うちの母ちゃん、どうも重くてどうしようかなと……」


「ええと、それはもしかして、あたしの心証がものすごく悪くて、イヤイヤ会うことになったとか?」


 桜子が深刻な顔をして言うので、圭介は笑った。


「そういうんじゃないよ。ほら、おまえの親って気軽におれに会ってくれたじゃん。母ちゃんもそういうノリで会ってくれると思ってたんだけど、異常に深刻な話になっちまって。

 会うとは言ってるんだけど、おまえを値踏みするみたいなこと言うし、おまえに感じ悪いことを言うかもしれないと思うと、わざわざ今会う必要もないかなって思ったりして。

 だから、おまえがそれでも会ってくれるならって感じなんだけど。ごめんな」


 桜子は真面目な顔でかぶりを振った。


「謝ることないよ。お母さんが会ってくれるっていうのなら、あたしも会いたい。ちゃんとあたしの気持ちを伝えて、理解してもらって、圭介との付き合いを認めてもらいたいもん」


「本気で?」


「もちろん。あたし、初めて会った時から、お母さんにはあんまりいい印象を与えることができなかったでしょ? 王太子との結婚の話なんかも出ちゃったりで、きっと『なんだこの娘は』って思われてると思う。

 落ち着いて考えたら、会いたくないって言われても仕方ないのかも、なんて思っていたの。だから、会ってもらえるのなら、それがチャンスだと思って、あたしは頑張る。

 大好きな圭介のお母さんにも好きになってもらいたい。みんなに祝福してもらうのが、あたしたちの目標だよね?」


 こういう強い目をした桜子も好きだった。

 まっすぐに自分の信念に向かって突き進む。そんな強さを秘めた目が胸をドキドキさせる。


「うん。それが目標だもんな。まずは母ちゃんから」


 テーブルの上の桜子の手を両手でぎゅっと握った。


 ――が、料理が運ばれてきて、あわてて手を引っ込めた。


(ご学友……。クリスマスのデートもこんな感じになっちまうのか?)


 心の距離は間違いなく近づいていると思うものの、物理的な距離が縮められなくなってしまった。


(越える一線、前より遠くなってる気がするんだけど、気のせい?)

次回はこの週末、さっそく圭介の母親に桜子を紹介する日になります。

二話同時アップ、お楽しみに!


続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークで。

感想、評価★★★★★などいただけるとうれしいです↓

今後の執筆の励みにさせてくださいm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ