8話 女王様バトル再開?
本日(2023/03/17)、二話目になります。
月曜日――1カ月ぶりに桜子が登校してくる。
圭介は教室に着いて、桜子がやってくるのをそわそわと待っていた。
クラスの中心にいた桜子、それに短い期間ではあったが、ラステニアの王太子がいたことで連日にぎわっていた教室も、その二人がいない間は静かなはずだった。
――が、桜子が王太子妃になってラステニアに行ってしまうということになると、クラスには新たなるまとめ役――カーストトップが必要になる。
最初は桜子がどうなったのかを聞きたくて圭介のもとに集まっているのかと思っていたが、どうやらその白羽の矢が立ってしまったらしい。
桜子が入院中で元気のない時期に、やいのやいのと休み時間のたびにクラスメートに囲まれ、圭介はうんざりしたものだ。
時々妃那が「うるさいわ」と冷たい一瞥で追い払ってくれたので、助かったこともあった。
そして、今日――王太子がいなくなった今、夏休み明けと同じ環境がようやく戻ってくる。
ようやく桜子が登校してきたと思ったら、クラスメートに一気に囲まれてしまい、その姿は人ごみに埋もれてしまった。
(ええー……)
それでもみんなに花やメッセージのお礼を言いながら、桜子はクラスメートたちをかき分け、満面の笑顔で圭介のところまで飛んできてくれた。
「おはよう、圭介。やっと来られた!」
「おはよ」
退院の日はほんのわずかな時間の抱擁だけで終わってしまった。
こうしてゆっくり顔を眺めながら話をできるところまで来れたと思うと、うれしさに胸が熱くなる。
――が、そんな感慨にひたっているヒマもなく、クラス中で拍手が沸き起こった。
そして、「おめでとう」と口々に言われる。
「へ?」と、圭介は間抜けな声が出ていた。
「お二人、よりを戻したんでしょう?」
「もう、セレン殿下ってば、他にも女性に手を出していたなんて最低」
「やっぱりお二人がお似合いよ」
そんな賛辞が続くので、桜子と顔を見合わせてぷっと吹いていた。
互いに思ったことは同じらしい。
さんざん王太子をほめそやし、桜子が王太子妃に選ばれたことを尊敬のまなざしで見ていたクラスメートたちが、手のひらを返したように違うことを言う。
相変わらずの態度に、もうあきれる以上にバカバカしくて笑ってしまうのだ。
でも、今、桜子が心から笑っているのは、相手が好きでもない王太子ではなく、圭介だからなのだと思いたかった。
「そういうわけで、皆さん、これからもわたしたちを応援してね。わたしたちは普通の高校生として学生生活を楽しみます」
桜子は笑顔でそう締めると、一転、仁王立ちで妃那の前に立った。
その顔が鬼の形相に変わっている。
「おはよう、妃那さん。お久しぶりね」
「おはよう。お元気そうで何よりです」と、妃那は無表情のままチラリと目を上げる。
「――て、それをあなたが言う!? そもそも誰のおかげで、こんな目にあったと思ってるのよ!?」
「元通りにしてあげたのに、文句を言われる筋合いはないわ」
「元通りってどこが!?」
「王太子もいないし、圭介とよりを戻して、学校にも戻って、一件落着。わたしの立てた成功率99.1%の計画は今日見事に完遂したの。ねえ、圭介。すごいでしょう?」
妃那はほめてといわんばかりの笑顔を圭介に向けてくる。
「ああ、うん――」と、うなずこうとする圭介をさえぎって、桜子の怒声は続いた。
「ねえ、あたしが1か月休んだ分はどうなるの? 入院している間に中間試験は終わってるし、授業も受けてないんだけど?」
「中間試験なら追試措置があるでしょうし、授業はわたしも受けていないから計算に入れていなかったわ」
「あなたと一緒にしないでよ!」
「さ、桜子、授業ノートは全部取ってあるから。わからないところは教えるし」
圭介は言い争う二人の間に慌てて入った。
「圭介、ありがとう。あとで貸してもらうね。けど、妃那さん、ひと言あっていいんじゃない? 『ごめんなさい』という言葉を習わなかったのかしら!?」
圭介の努力もむなしく、二人の熱く冷たい戦いはホームルームが始まるまで続いたのだった。
(桜子、元気すぎるくらいに元気になったなあ……)
ようやく二人があるべきところに落ち着いたところで、次回は放課後デート回となります。
今までが今までだっただけに、まったり行きたいところですね。
二話同時アップ、お楽しみに!
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