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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第5章-3 王太子が相手でも譲りません。~実践編~

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9話 早すぎるビッグニュース

本日(2023/02/24)は、二話投稿します。


桜子視点からスタートです。

 桜子は周りの騒がしい音にうたた寝から目を覚ました。


 ドタドタという足音。

「廊下は走らない!」という看護師の怒鳴り声。

「桜ちゃーん」という大きな呼び声に、「大声出さない!」と別の看護師の声。


「桜ちゃん、ビッグニュースだよ!」


 薫子が病室に飛び込んできた。


「聞いて、聞いて! すっごいスキャンダルなんだから!」


 顔を上気させて興奮している薫子を桜子は見やった。


「なんと、なんと! ああ、もう、言うのももったいないくらい、すごいニュースなの!」


 薫子はなかなか言い出さない。


「いい、桜ちゃん、よく聞いて。あの王太子の元恋人に赤ちゃんができてたの! 今、新たなお妃候補として、あっちの国は大騒ぎなんだよ!」


 桜子は突拍子もない話に一瞬ついて行かれなかった。

 ここのところ漫然(まんぜん)とした思考が続いていたので、頭も回転しないのかもしれない。


「桜ちゃん、この意味わかる? 王太子はその女性と結婚して、桜ちゃんとは破談になる可能性があるってことだよ! だって、一夫一妻制なんだから、どっちかしか選べないでしょ?」


「……それ、ほんとなの?」


「桜ちゃん、あたしがそんなウソつくと思う? ほら、見て。ラステニア語、読める?」


「……ある程度は」


 薫子がスマホを開いて、横になっている桜子の目の前に掲げた。


 タイトルには『セレン殿下の元恋人に妊娠発覚』と書かれている。


 現在、日本に滞在している王太子の方へ詳細を確認している最中とのこと。

 ただ、子供の頃の王太子の髪が王宮に残されていたので、DNA鑑定が行われ、すでに親子鑑定は終わっているらしい。


 さすがに王太子のスキャンダルとあっては、ガセネタというわけにはいかないのだろう。

 きちんと鑑定された後に記事にされている。


 おかげで後は王太子が認めれば、それで婚約。そのまま結婚となるらしい。


 桜子はうれしさに唇が震えた。


 やっとこの日が来たのだと。


「圭介は……? このこと、知ってるの?」


「わかんない。あたしも桜ちゃんが入院してから、会ってないもん」


「早く圭介に知らせなくちゃ……!」


 桜子は気がはやって起き上がろうとしたが、身体に力が入らず、ベッドに倒れ込んだ。


「桜ちゃん、今は動いちゃダメ! ダーリンに知らせたいなら、あたしがするから」


「いや、あたしも声が聞きたい! 話したい!」


 突然の興奮状態に脳がついて行かなかったのか、桜子の目の前に白いシャッターが下りるのを見た。




 *** ここから彬視点です ***




 彬は病院に向かって必死に自転車を走らせていた。


(頼む、薫子! 早まったことをしないでくれ!)


 ほんの数分前に朝食の席をいきなり立ってしまった薫子を追っているのだ。


 そろそろ王太子の子供の発覚が王宮に知らされるだろうという頃、薫子の様子がおかしくなった。


 病院にいる時はいつも通りだったのだが、家に帰ってきても部屋にこもっているし、食事に居間にやってきてもスマホを見ていた。


「ちょっと薫子、食事中でしょ! スマホはやめなさい!」


 母親が怒鳴っても薫子は聞こえていないのか、「んー」と返事をするだけ。

 母親も根負けして、ついに何も言わなくなった今日の朝、薫子はがたんと席を立ったのだ。


「よし、来た! これで桜ちゃんに知らせられる!」


 あっけにとられる家族の中、薫子は風のように飛び出していった。


 そして、彬もようやく気づいたのだ。


 薫子はラステニアの情報をずっと集めていたのだと。

 おそらくこの間のクーデターの時と同様、SNSでいろいろな人に呼びかけ、王太子のスキャンダルでも探していたのかもしれない。


 王太子の元恋人の妊娠も、公になる前からウワサが広まっていたはずだ。

 薫子はそれを追いかけ、そして、公式発表されるのを待っていたに違いない。


(でも、予定より早いんだよ! それ、3日後の話なんだよ!)


 彬は焦っていた。

 今の時点で桜子が知ったらどうなるのか、予定にないのだから。


 彬が病院に到着した時、すでに遅かった。

 病室の中には医者と看護師がいて、桜子の状態を確認している。

 薫子はその部屋の前でオロオロとしていた。


「姉さんに何があったの!?」


「……その、桜ちゃんにニュースを伝えたら、桜ちゃん、興奮して暴れて意識失っちゃって……」


 彬は病室を振り返り、医師が出てくるのを待った。


「先生、姉は?」


「心配はいらないけど、念のため安定剤を打っておいたから、今は眠っている。困るよ、病人を興奮させたら」


 医師は「メッ」と薫子に顔をしかめて見せる。


「すみません」と、薫子はうなだれた。


 医師が去った後、薫子が病室に入っていくので、彬は電話のかけられる場所に移動した。

 この事態は早く妃那に報告した方がいい。

 朝、この時間ならまだ登校中だ。


『もしもし』と、妃那はすぐに応答した。


「緊急事態発生。薫子のせいで予定より早く姉さんが情報を知っちゃったんだけど!」


 彬は焦って言ったのだが、妃那の方は驚く様子がなかった。


 返事も落ち着いた声で、「計画通りよ」だった――。

次話はこの続きの場面です。

どこが計画通りなのか、妃那が説明してくれます。

お時間ありましたら続けてどうぞ!

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