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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第5章-3 王太子が相手でも譲りません。~実践編~

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2話 男親からの助言らしいです

本日(2023/02/10)、二話目になります。

 彬は登校中の車の中で大変居心地の悪い思いをしていた。




「たまには一緒に行こうか。学校まで送ってやるぞ」


 朝、父親に言われ、彬はその申し出をありがたく受けた。

 薫子は学校を休んで桜子の様子を見るというので、一人なら電車で行かなくてはならないところだったのだ。


 ――が、その父親がまさか自分で運転するとは思わなかった。


 しかも車は自家用の小さいものなので、すでに成長して170センチある彬と父親が並んで座っていると、かなり圧迫感がある。


「父さん、運転手は?」


「たまには自分で運転したいと思って、今日は来なくていいって言っておいた」


「ヒマなの? 経営者って、車の中でも仕事しているものだと思ってたけど。

 だから、運転手がいるんでしょ?」


「今日は会議まで時間があるからね。重役出勤ってやつ」


(重役出勤って、普通の社員よりちょっと遅く行くだけじゃないの……?)


 学校に彬を送って、会社に行ったら、余裕で9時は過ぎる。


「……他にやることないの?」


「ほら、みんな頑張ってくれてるから、おれ、あんまりやることないし」


「父さんは頑張んなくていいの?」


「おれがあんまり頑張ると、他の社員に頑張れって無言のパワハラになるから、気を付けているんだよ」


(それ、普通に仕事しなくても文句言われないための言い訳なんじゃ?)


「へえ……」と、彬は一応お返事しておいた。


「で、華から聞いたけど、カノジョできたんだって?」


「……その話?」


「ほらほら、男同士の会話はあんまり家ではできないだろ?」


「別に生々しい話するわけじゃなければ、みんなの前だってかまわないけど」


「そういう生々しい話をしたいんじゃないか。年頃の娘たちの前では、おれもちょっと気が引ける」


「ちょっとだけ……?」


「なんか、彬もそういうお年頃になったかと思うと、なんだか感動しちゃってさあ。

 やっぱり娘とは違うんだなーとか。

 男の先輩として、息子に何か父親らしいことを言ってやりたくなるだろ?」


「ええと、じゃあ、謹んで助言を聞かせてもらいます」


「本当に大事なことは一つだけだからね」


「愛とか?」


「そんなのおまえくらいの年頃にはあんまり関係ないだろ」


「そんなあっさり……」


「とにかく妊娠だけはさせるな。あの凶器だけには男は太刀打ちできない」


 父親に真顔で言われて、彬はポカンとした。


「そ、そんなの言われなくてもわかってるよ! 母さんにも言われたし」


「いや、あえて言う。わかっていたらできちゃった婚は存在しない。うっかり妊娠もない。おれが身をもって知ったから、言っているんだ」


「……まさか、父さん、外に隠し子がいるとか? それとも過去に妊娠させて捨てた女性がいるとか?」


「いや、それはどっちもないけど。おまえと薫子がその結果」


「……僕たち、うっかりできちゃったの?」


「それ以外にないだろ。年子で三人って」


「あのお母さんのことだから、子供はまとめて産んだ方が楽とか思ったんじゃないかと……」


「だから、おまえにもあえて言いたかった。『大丈夫かな』は絶対に大丈夫じゃない。

 今のおまえに酔っぱらった勢いはないかもしれないけど……あっても困るけど、若い分、心が未熟だから、ちょっとしたことで我を忘れて、つい、というようなことが起こりえる」


「肝に銘じます……」


 身に覚えもなくもないので、彬はしゅんとうなだれた。


「ところで、最近、圭介くんと仲いいの?」


「どうして? 別に普通だけど」


「……うわあ、やっぱりそっちか」


 父親は信号で止まって、ハンドルにがっくりと頭を落とした。


「どうしたの?」


「いや、なんでもない」と、気を取り直したように青信号で発進した。


「そう?」


(何でもないようには見えなかったけど。変な父さんだな)


「で、おまえは桜子が心配じゃないの? 薫子みたいに学校に行かないって言うかと思ったけど」


「もちろん心配だけど、薫子がついていれば大丈夫かなと。メッセージも既読になったし」


「おまえも女ができて、ようやく姉離れして、やれやれと思ってたのにな」


 チラリと父親の横顔をうかがうと、どこかゆううつそうな表情に見えた。


「困るの? その方がいいんでしょ?」


「本当にそうだったらな。それはまあ、今はいいか」


「……父さん、何か言いたいことでもあるの?」


「今朝、圭介くんから計画の話を聞いたんだ」


「父さんも知ってたの?」


「けど、正直なところ、詳細は知らない。だから、あのお嬢さんが変なことをする前に、おまえが止めてやれ」


「別に変なことはしないと思うけど。なんで、僕? 圭介さんの方が適任だと思うけど」


「だって、おまえの女だろ?」


 彬は唖然(あぜん)として言葉が見つからなかった。

 そんな彬を見て、父親はクスクスと笑う。


「おまえ、本当に素直だよなー」


「カマかけたの!?」


「そこで驚くかなー。自分からボロボロ、ネタ晴らししてたのに」


「え、うそ……。僕、そんなこと言った覚えないけど」


「やっぱりおまえはいいとこの坊ちゃんだな」


「それ、嫌味?」


「全然。いい子に育ってくれてうれしいって言ってるの」


「みんなには言わないでよ。薫子は知ってるけど」


「なんで? 紹介してくれないの?」


「そういう関係じゃないから」


「どういう関係かはわからないけど、おまえの手に負える女だといいな」


「それ、僕には無理って言ってるの?」


「違うよ。そうなるといいなって期待してるだけ」


「なんか、意味わかんないけど……」


「いいんだよ。子供の恋愛に口出すつもりはないんだから」


「ふーん」


 彬は返事はしたものの、やはり意味は分からなかった。


(父さんと1対1って、けっこう難しいよな……。何考えてるかわかんなくて)

次回から計画が本格的にスタートするわけですが……。

さて、その通りに進むのか?

二話同時アップ、お楽しみに!


続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークで。

感想、評価★★★★★などいただけるとうれしいです↓

今後の執筆の励みにさせてくださいm(__)m

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