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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第5章-2 王太子が相手でも譲りません。~計画編~

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11話 二人を元に戻す計画とは?

本日(2023/01/31)は二話投稿します。


【9話 どうして、自分を選べなんて言ったの?】の続きの場面です。


彬視点になります。

 時間はさかのぼって、ホテルで二回目の()()()の後――。


 妃那はカバンからタブレットを取り出して、ベッドの上に戻ってきた。


 これから、桜子と圭介を元通りにする計画を見せてくれるという。


 覗いてみると、見たことのないアプリが起ち上がっていた。


「なにこれ?」と、彬は聞いた。


「わたしの作ったシミュレーションソフトよ」


「プログラムできるの?」


 彬が感嘆の声を上げると、妃那はひんやりとした眼差しを投げかけてくる。


「誰に聞いているの?」


愚問(ぐもん)でした……。で、何に使うの?」


「簡単に説明すると、ここには関係者の経歴や性格、あらゆる個人情報を入力して、想定できる限りのイベントをデータベース化してあるの。

 あとは目的を入れると、それに必要な選択肢が出てきて、それを順次選んでいくと、最後に達成日数や成功率が出るという仕組みになっているのよ」


「へえ……。細かいことはわからないけど、面白そう」


「やってみたいのなら、どうぞ」


「え、いいの?」


「圭介と桜子のハッピーエンドで目的は設定してあるから、あとは彬が選択肢のリストから好きなものを選んで進んでいくだけよ」


 妃那に教えてもらいながら、画面をタッチしていく。


 しばらくいろいろいじってみて、彬は気づいた。


「……ねえ、選択肢にどうしていつも『王太子を殺す』が出てくるの?」


「それが手っ取り早いから。試しにやってみればいいのよ」


「なんか、気が進まないんだけど」


「ただのシミュレーションよ」


 じゃあ、と『王太子を殺す』を選択。


 新しいウインドウが開いて、『方法』のリストが出てくる。


------------------------------------------

〈方法〉


 銃殺 60% →

 毒殺 60% →

 絞殺 5% →

 刺殺 5% →

 事故 40% → 

------------------------------------------


「ねえ、この横の数値はなに?」


「成功率の平均よ。この結果を見る限り、直接手を下す方法は難しいということね」


 タブレットの画面をのぞき込んだ妃那は肩をすくめる。


「『事故』にすると……『飛行機』、『車』、『電車』、『歩行中』って、また選ぶんだ」


「例えば、『事故』の中から『飛行機』を選ぶと、『自然』か『人為』の選択。

 自然に飛行機事故が起こって王太子が死ぬのは、もちろんほぼ確率ゼロ」


「それはわざわざシミュレーションしなくてもわかりそう」と、彬もうなずく。


「でも、『人為』なら平均50%。

 方法としては、ハイジャック、爆弾、ミサイルなどなど。

 ここで『ハイジャック』を選択して、『自爆』からの爆弾の種類『C4』、規模範囲『全機』に設定。

 これで全選択終了だから『OK』にすると、人物リストの中から人材を自動配置して、イベント発生――と」


 イベント中は見ているだけらしい。

 なんだか人が動かしているアニメ系ゲームを見ているようだ。


 『王太子』とポップの付いたキャラが藍田邸を出て、車で空港に向かっていく。

 『桜子』のポップも隣にある。


「ねえ、この車、姉さんも乗ってるみたいなんだけど?」


 ついでにその車の後ろには、彬も含めて藍田家の家族が乗った車が続いていた。


「飛行機に乗る設定がラステニア帰国だから、当然一緒でしょう」


「ええー……。このまま行ったら姉さんまで死んじゃうじゃないか」


「目的は変わらないのだから、死んだりしないわ」



--------------------------------------------------------

 空港から飛行機へ向かう二人。

 藍田家の面々はそれを見送っている。


 国賓の王太子はもちろんセキュリティーは通らない。

 飛行機もチャーター便。


 その間にSPの一人が爆弾を持った人間と接触。

 爆弾の入ったバッグを受け取る。

 そして、全員飛行機搭乗と続いていく。


 飛行機が離陸して5分後、太平洋上空――。

 SPが突然銃で威嚇(いかく)を始めた。


 そのSPが桜子にパラシュートを渡す。


 桜子がパラシュートで脱出した後、SPは自爆。

 飛行機は海上に墜落。


 無事に海面に到着した桜子は、海上保安庁の船で救出される。


 港まで迎えに来ていた圭介と抱き合って、花吹雪が飛ぶエンディング。


 死者21名、成功率80%、所要時間3日、キャスティング、費用等々の一覧が出てくる。


--------------------------------------------------------


 彬は唖然(あぜん)として見てしまった。


「……いや、どこから突っ込んでいいのかわからないんだけど。

 こんな都合いいシチュエーション、映画とかだったらB級以下だよ?」


「別に面白くするために作っているわけではないわ。

 現実で成功させるために、どうするのが1番いいのか、教えてもらうのよ」


「ちなみにこの自爆したSPって誰?」


「それは――」と、妃那は画面をスクロールさせる。


「この人になったみたい。議会派のスパイよ」


 画面にはコワモテの外国人の中年男の写真が開かれている。


「なんでその人が姉さんだけ助けるの?」


「それは――」


 妃那はページを開いていく。

 そして、事もなげに答えた。


「ああ、わたしね。買収するのよ」


「ちょーっと待ってー! 何、その計画は!?」と、彬は大声で叫んでいた。


「だから、試しと言ったでしょう。成功確率が80%では危ういわ。

 ほら、失敗の可能性の20%のうち、15%は『スパイの裏切り』、『パラシュートの故障』、落下時の『骨折』もしくは『溺死』で、桜子が死んでしまうし。

 こんな計画は使えないわ」


「いやいやいや、問題はそこじゃないから! これ、暗殺計画だよね!?

 ていうか、スパイってなに!? この人、今も王太子のそばにいるの!?」


 彬は狂ったようにわめいてしまった。


「ええ、そうみたい。だから、どの選択肢にも『王太子を殺す』が出てきてしまうのよ。

 その機会を狙っているから、それを手っ取り早く利用するのが近道ということになるのね」


「それ、絶対ダメだから! そもそも関わっていい人じゃないし。

 こんな計画、圭介さんに知られたら、さすがに嫌われるよ!」


「そうなの? わたしが用意してきたものは、どれもこの選択肢を使ったものなんだけれど。ダメなのね……」


 妃那は心底がっかりといった顔をするが、彬の方は脱力してしまった。


(マジメに先に聞いておいてよかった……)

さて……

気を取り直して、改めて計画の練り直しということで、次話に続きます。

お時間ありましたら、続けてどうぞ!

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