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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第5章-1 王太子が相手でも譲りません。~説得編~

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18話 平穏な日々が戻るのはいつ?

第5章パート1【説得編】最終話です。


彬視点です。

 同じ頃、藍田家の車で彬はぐったりと背もたれに寄りかかっていた。




 平日朝、藍田家は5時に起床。

 それから庭でランニングや素振りをしてから6時朝食となる。


 ――が、今朝は5時の起床と同時に母親が部屋に乗り込んできて、彬をたたき起こし、朝食まで延々1時間のお説教。


 今まで親にも迷惑をかけず、いい子ちゃんをしてきたので、人生初のお説教だった。


 免疫がない分、精神的にこたえる。


 そんな彬の気も知らず、母親は朝食の席で「彬にもやっと母親らしいことを言ってやれたわ」と、たいそうご機嫌だった。




「不審人物と間違われるなんて……」


 隣で薫子がぷぷぷっとこみあげる笑いを抑えきれないのか、口を手で覆って目に涙まで浮かべている。


「うるさいよー」


 まともに相手をする元気もなかったので、ジロリとにらんだだけだ。


「まあ、時期が時期だけに運が悪かったというか……彬は朝から出かけていて警備員がいるの、知らなかったもんね。

 連絡の1本も入れれば、さすがに不審者に間違われることもなかったのに」


 桜子がやさしく言ってくれる。


「反省しています。これからはちゃんと連絡するように母さんに何度も言われました」


「カノジョとは会えたの?」


「うん。姉さんの方は? 朝食の席でずいぶん静かだったけど」


 静かだったが、なんだか藍田家の食卓とは思えないほど冷え冷えとしたものだった。


 両親が気を遣って王太子に声をかけたりしていたが、桜子の冷たい笑顔で氷点下まで温度が下がる、そんな感じだった。


「昨日はちょっとした騒ぎだったんだよー。桜ちゃん、王太子にいきなり襲われちゃってねえ」


 薫子が言いながら、桜子の向こうから身を乗り出してくる。


「え、姉さん、大丈夫だったの?」


「彬くん、それを聞くなら王太子の方だよ。桜ちゃんのヒジ鉄が鳩尾(みぞおち)に入って、失神しちゃったんだから」


「姉さん……」


 相変わらずだ、と彬はため息をついた。


(そもそも、その気のない姉さんを押し倒すのは不可能なんだよ。一服盛るくらいしなくちゃ)


 さんざん桜子を襲う計画を立てていた彬は思わずツッコミたくなった。


「幸いすぐに気は付いたけどねー。『襲うなんてとんでもない。ちょっと抱きしめようとしただけだ』って、しらじらしく言い訳しているのがなんだか情けなかったよー」


 薫子が笑っている隣で、桜子は居心地悪そうに目を泳がせていた。


「別に襲われたってほどのものじゃなかったんだけど……。ちょっと大げさに言ってみたというか」


「え、違うの?」と、薫子が目を丸くする。


「こう、後ろから腕が回ってきたから、そのまま足払って、あたしが押し倒した」


「桜ちゃん、それだけ……?」


「あたし、背後取られるのダメなんだよね。力加減ができないというか」


「……まあ、どっちにしろ婦女暴行未遂事件はもみ消されちゃったわけだし、実際のところはウヤムヤでも、ねえ」


「それ、痴漢冤罪(えんざい)とおんなじレベルじゃん。僕、男としてちょっと王太子がかわいそうになる……」


「彬くんはどっちの味方なの!?」


「別に王太子の味方してるんじゃなくて、男の味方してるの」


「やだなー。彬くん、いつから男の仲間入りしているの?」


「黙れ、薫子。で、それっきり王太子はおとなしくしているの?」


「まあ、そうだね。なんでもない会話しているだけ」と、桜子が答える。


「なんでもない会話なのに、あそこまで冷たい態度は――」


「これでも努力しているの。今はあれが限界。もう、お願いだから、内戦終わって、早く帰っていってよー!」


 桜子はどうやら昨日に引き続き荒れているらしい。


「まあまあ、桜ちゃん、学校に行けばダーリンに会えるし。どうでもガマンできないと思ったら、また逃がしてもらったら?」


「……そうだね。どうでもガマンできなくても、二人になりたい。圭介にぎゅうっとしてもらいたい。元気にしてもらいたい」


 桜子は切ない顔でほうっとため息をついた。


「昨日の件、じゃあ、ダーリンにも教えてあげよう。目を白黒させてヤキモチ焼いて、桜ちゃんをさらって行ってくれるかもよー」


「どうかなー。圭介ってあんまりヤキモチ焼かないから。『大丈夫だったのか?』、『大丈夫だった』、『ならよかった』で、話が終わっちゃいそうだけど」


「……そういえばそうだね」と、薫子も遠い目をする。


「へえ。圭介さんって、姉さんのそばに男がいっぱい近寄ってきても気にしたりしないんだ。すっごい余裕だよね」


「んー、そういうのとはなんか違う。思うんだけど、圭介って自己評価がものすごく低いんだよ。

 ヤキモチ焼く前に相手のことを見て、あーすごいなー、かなわないなーって思っちゃう感じ?」


「その割に姉さんのこと放っておいて、心変わりしないって信じられるって、矛盾してない?」


「ああ、でも、それは最近になってからかな。ほんと付き合い始めの時は、いつあたしが別の人を選んでもしかたないってオーラが出ていたから」


「あとは神泉家に行ってから落ち着いたところもあるよね。やっぱ、家柄できたし」と、薫子が付け加える。


「そうだね……ていうか、なんであたしばっかりヤキモチ焼かされるの!? 妃那さんといっつもベタベタして! あの調子で家の中までやってるのかと思うと、気が狂いそうだよ!

 あの妃那さんのことだから、夜中に圭介のベッドくらい潜り込んで無理やり襲ったりしてるわ!」


(姉さん、なんだか、瞬間湯沸かし器みたいになってる……)


 精神的にかなりまいっているのはうかがえる。


 早く元通りになってくれた方が安心できると、彬はしみじみ思った。

次話からは第5章パート2【計画編】がスタート。

桜子がいくら王太子を説得したところで状況は変わりませんでした……。

さて、妃那の考える計画は功をなすのか?

もちろん王太子の方もこのまま黙っているはずもありませんね。

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