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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第5章-1 王太子が相手でも譲りません。~説得編~

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5話 そのアリバイ工作はダメだよね

圭介視点です。

 放課後、せっかく桜子が登校するようになっても、一緒に帰ることはできない。


 校門のところで王太子を迎えに来た車に乗せると、藍田兄弟も車で帰っていく。


 圭介も妃那とまっすぐ家に帰るだけだ。


(……それにしても、あの王太子、けっこう厄介なんじゃないか?)


 二人の気持ちが向き合っていれば大丈夫、などと音弥はあっさりと言ってくれたが、あの押して押して押しまくる王太子の勢いに、桜子はすでに疲れ切っている。


 このまま放置していたら、自分はともかく、桜子の方はうっかり違う方へ気持ちが向いてしまうのではないかと不安になってくる。


(だからって、おれに何ができるんだ? 桜子のことを好きでいるだけでいいのか?)




*** ここから彬視点です ***




 さびれた通りにあるラブホテル。いつも同じ部屋を使っている。


 彬は妃那に呼び出されて、放課後そこに来ていた。


「圭介さんと一緒に帰っているから、てっきりしばらく連絡は来ないと思ってたんだけど」


 週が明けて、王太子が学校にやってくることになり、彬の日常も桜子ほどではないが、せわしないものになっている。


 登下校が車になったおかげで、こうして妃那に逢いに来るには、一人で帰るためのいろいろな言い訳を考えなくてはならない。


 それを面倒だと思わないのは、やはり性欲発散の方が優先されるかららしい。


「それはそれ、これはこれ。適度に性欲が満たされないと、また圭介に迫ってしまうもの。せっかく圭介がわたしにやさしくしてくれるのに、台無しにしてしまうわ」


 そんな話をしながらベッドにもつれ込んだ。


 もともと話をするためにここに来ているわけではない。

 互いに求めているものがまず先だ。


 シャワーを浴びる前に1回。


 それで落ちついたところで少し話をして、それから2回目、3回目と、時間が許すなら延長もする。


 これだけ何度も会って身体を重ねていると、互いの身体を知り尽くして、あきるどころか逆に毎回満足できる。

 かゆい所に手が届く、そんな感じだ。


 相変わらず彬が他の女子に手を出そうと思わないのは、かえって面倒に思えるから。


 今の彬にとって、すでに妃那の身体はなくてはならないものになっている。

 それは妃那も同じに違いない。


 恋という概念(がいねん)は入り込まないので、要は互いの所有物といったところだろうか。


 使い込んで慣れ親しんだ道具のようなものだ。

 そんな道具に愛着が出てきてもおかしくはない。


 4日ぶりに会った今日、夜は剣道の稽古が入っているが、できればサボってこのまま夜まで妃那を抱いていたい。


「どうするの? 延長するなら、わたしはかまわないわ」


「んー、悩んでる」


 彬はベッドにうつぶせになったまま枕を抱きしめた。


「では、帰りましょう」


「え、なんで?」


「悩んでいるということは、どちらを選んでも選ばない方を後悔するでしょう。普通に考えて、もともと予定していたものを選ぶ方が後悔は少ないわ」


 そう言って妃那はあっさりと起き上がってしまう。


 ベッドの上で理性的に物事を考えられると、なんだか腹が立つ。


「やっぱ、今日は行かない。多くても少なくても後悔するんなら、今したいことをする」


 妃那の腕を引っ張ってベッドに引き戻すと、そのまま組み敷いた。


 その顔を見れば、興奮したように目を潤ませている。


「どっちでもかまわないとか涼しい顔で言って、結局自分だってやりたいんじゃないか」


「わたしはいつでもかまわないとも言ったわ」


 妃那が彬の首筋に腕を絡めながらささやくようにつぶやく。


「そういえば、圭介さんになんて言い訳して来てるの?」


「今日はドライブに行ってくると言ってきたけれど」


「いつもは?」


「人に会ってくるとか、遠回りしてくるとか」


「詳しく聞かれない?」


「いいえ。きっと興味がないのね。わたしが何をしているかなんて」


「……いや、それ、普通にバレてると思うけど」


「まさか」


 ここのところ圭介が何か聞きたそうに自分を見つめてくるのを感じていた。

 登下校が別なので、ゆっくり話をする時もないのだが。


 薫子がすでに知っていることなので、もしかしたら彼女がしゃべったのかもと思ったが、妃那の方からあっさりバレている。


「君、頭いいのに、変なところで素直だよね。本当に隠したいなら、もっと巧妙にアリバイ工作しないと」


「他に理由がないもの」


「いや、まあ、君の場合はそうなっちゃうのか……?」


「だいたい圭介が気づいているなら、どうして何も言わないの? 態度も変わらないわ」


「それは……僕にもわからないけど」


(圭介さんも確信があるわけじゃないって感じなのかも?)


「話はもういいでしょう? それとも焦らしたいの?」


 そこでこの話は終わりだった。


(ああ、そのうち、圭介さんに問い詰められるんだろうな。で、姉さんにも知られるのかな……)


 そんなことを考えると、胸がざわつくような気がして、こんなに集中できないのは初めてのことだった。

王太子のせいで、休みも桜子は大忙し。ストレスもマックス。

次話は圭介と二人の時間を持てるように、薫子が頑張ります。

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