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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第4章-2 ロミジュリ展開、お断りします。~成長見守る編~

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8話 桜子の意外な一面が……

 桜子が友達との話にひと段落着いてから、お好み焼き屋の模擬店を目指して歩いていった。


 中学時代の友達がサッカー部に入っていて、お好み焼き屋を出店しているらしい。

 が、見つけて覗いてみたところ、知っている顔は見当たらなかった。


 鉄板でお好み焼きを焼いている男子に聞いてみると、圭介の友達の店番は12時からだと言われた。

 時計を見ると、あと1時間ほどある。


「文化祭を見に行ってるのかな。連絡してみる?」


「わざわざすることもないだろ。12時に戻るっていうなら、その頃にでもまた来ればちょうど昼時になるし。

 それまで中を見に行かないか?」


「あたしはそれでもいいよ。文化祭の定番、お化け屋敷に行きたい。あと、執事喫茶」


「そんなのあるのか?」


「うん。パンフレットに書いてあったから」


「じゃあ、その辺りから行こうか」


 桜子と一緒に校舎に入り、パンフレットを見ながら目当てのお化け屋敷に向かった。

 お化け屋敷は思ったより人気があるのか、教室の前にはかなり長い行列ができている。


「けっこう混んでるねー。並ぶ?」


「そうだな。これだけ人が集まってるってことは、期待できそうじゃん」


 どれくらい待つのかはわからないが、とりあえず列の最後尾に並んだ。




 教室の中から悲鳴が聞こえてくるたびに桜子はビクリと震える。


「けっこう怖そうじゃない?」


「怖いから人気あるんだろ。もしかして、苦手なのか? なんでまたお化け屋敷?」


「美香ちゃんのクラスでやっていて、ぜひカレシと一緒に来てって言われて……。

 文化祭のお化け屋敷くらいなら楽しめるかなと」


 桜子が青い顔をしているところを見ると、苦手なのは間違いなさそうだ。


(桜子って、暴漢相手でも平気な顔で立ち向かってくタイプなんだけどなあ)


 なんだか意外な一面を見て、思わずかわいいと思ってしまった。


(こういう時は男らしくリードするのがやっぱりカッコいいってもんか)


 よし、頑張るぞ、と圭介は気合を入れて中に入った。


 暗い教室の中、おどろおどろしい音楽が流れ、思ったより本格的に作ってある。

 テーマは病院廃墟。

 手術室や病室も本格的に作ってあるし、ところどころに広がる血も生々しい。


「けっこうすごいな」


 圭介が感心してつぶやいたが、桜子は圭介の手をしっかりと握り、うつむいたまま周りを見ていなかった。


 ふと背後に気配を感じて振り返ると、血だらけのミイラ男が桜子の肩に手を置くところだった。


「助けて……」と、ミイラ男が桜子の顔を覗き込む。


 と、同時に桜子の絶叫が響き渡った。


「やだやだやだ! あっち行って!」


 桜子は圭介に抱きつき、半端ない力で締め上げてくる。

 圭介はこらえきれず、「ぐえっ」とうめいた。


 その視野の片隅で、ミイラ男が親指を立てて下がっていくのが見えた。


 そういえばパンフレットには『カップルに大人気』と書いてあった。

 こういう効果を狙ったコンセプトがあったらしい。


「桜子、もういないから、は、離してくれ……」


「ほんとに?」


「ほ、ほんとだって……」


 息が止まりそうなほどきつく締め付けられ、桜子の腕の力がゆるんだ時にはぜーぜーと息を吐いていた。


 それからの桜子は圭介の腕にしっかりと絡みつき、圭介に引きずられるように歩いていた。


(……ヤバい。今度はおれがヤバい)


 Tシャツから出た腕が桜子の胸にはさまれて、この上なくやわらかい感触がじかに伝わってくる。


(桜子って着やせするけど、意外と胸あるんだよな……)


 思わず海での水着姿を思い出して、全身の血が股間に向かって流れていってしまう。


 胸があたっていることを指摘した方がいいのか、それともこのままこの感触を味わっていていいものか。

 圭介は激しい葛藤(かっとう)に苦しんだ。


 おかげで、お化け屋敷どころではなく変な意味でドキドキしながら、気づけば出口にたどり着いていた。


「やっと外に出られたー」と、桜子はほっとした顔をする。


「し、刺激的だったな……」


 桜子が離れてしまって少々残念に思いながらも、思わぬいい経験をさせてもらったと、心の中でお化け屋敷に感謝した。


「圭介も怖かったの?」


「いや、怖くはないけど、面白かった。おまえ、意外と怖がりなんだな。知らんかった」


「そう? お化けとか得体のしれないものって怖いじゃない。人間相手なら蹴倒(けたお)せるけど」


「そうだったな……。よかったよ、あのミイラ男が蹴倒されなくて」


「もうっ」と、頬をふくらませる桜子に笑った。


「でも、かわいかった。泣きそうな顔で大絶叫した時」


「ひっどーい!」


「ええ、なんで!? かわいいって言ってんのに」


「恐怖におびえた顔をかわいいって言われてもうれしくないもん。

 女の子は笑顔がかわいいとか言ってほしいものなのー」


「それはいつも思ってるって。なかなか見られない顔だから、貴重な『かわいさ』だったって話」


「そっちは必要ないのー! さ、執事喫茶に行こう。叫んだらノドがかわいちゃった」


 桜子の機嫌は直ったのか、笑顔で手を取って引っ張ってきた。

次話もこの続きになります。

今度は桜子が圭介の中学時代の姿を垣間見ることに……。

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