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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第3章 『呪い』は全力で回避します。

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17話 これはまさかの殺人未遂事件?

「おい、大丈夫か?」


 声をかけられて圭介ははっと顔を上げた。

 よほど顔色が変わっていたのか、一樹は先程までの敵意に満ちた視線とは違って、心配そうな顔で圭介を見つめていた。


「あ……いえ、大丈夫です。気分が悪いので、先に部屋に戻ります」


 圭介はそのまま食堂を出たが、自分の部屋に戻っても悶々(もんもん)と考え込みそうだった。

 それなら、少し外の空気を吸った方がいいと、玄関を出て庭を散歩し始めた。


 悔しさと怒りをどこかにぶちまけたくて仕方がない。

 貴頼に踊らされていた自分の迂闊(うかつ)さと、神泉家の家柄という目の先の利益に盲目になってしまった自分の愚かさを、悔いても悔いても時間を戻すことはできない。


(何かこの状況をひっくり返す方法はないのか?)


 そんなことを考えながらウロウロ歩いていると、突然ヒュッという風を切る音が聞こえた。

 圭介が足を止めた瞬間、目の前を何かが通り過ぎ、すぐ足元でパリンと何かが割れる音が響く。


 それが花の植えられた鉢植えだということに気づいた瞬間、圭介は震撼(しんかん)した。

 これが頭を直撃していたら、即死してもおかしくない。


 圭介はすぐに屋敷の上を振り仰いだ。


 鉢植えの落ちてきた位置は、ちょうど圭介の部屋の辺りだ。

 しかし、人影は見当たらない。


 うっかり落としてしまったのなら、誰かが顔を出して謝ることくらいするだろう。

 それがないということは、故意に落とされたものということだ。


(おれを狙って……?)


「今、すごい音が……あら、圭介様」


 1階の応接室のガラス戸が開けられ、顔を出したのは雪乃だった。


 圭介の足元に散らばる鉢植えの残骸が見えたのか、雪乃は一気に顔色を変えて、庭に転げるように駆け下りてきた。


「圭介様、おケガは!?」


「間一髪で何ともなかったんですけど……」


「それはようございました」と、雪乃は心底ほっとしたような顔をする。


「この鉢植え、僕の部屋のバルコニーから落ちてきたみたいなんですけど、こんなもの、ありましたっけ?」


 圭介の質問に、雪乃はすっと青ざめた。

 鉢植えに植えられていた花を見下ろし、ごくりと息を飲んでいる。


「……いえ、存じませんけれど。すぐに片付けますから、圭介様はお部屋にお戻りくださいませ」


 雪乃はこの鉢植えの持ち主を知っている。

 犯人をかばっているとしか思えない。


 しかし、強く聞きただしたところで、この家に忠実に仕える雪乃が、簡単に口を割るとも思えなかった。


 圭介は仕方なく言われた通りに自分の部屋に戻ったが、気分が落ち着かなかった。


 命が狙われているとしたら、犯人は圭介に後継者になってもらっては困る誰かだ。

 今、この家にいるのは母親と一樹、妃那、それから使用人たち。


 この中で1番可能性のあるのは、一樹に間違いないが、智之に忠実な使用人が圭介を狙ったことも考えられる。

 そうなると、何人いるのかわからない使用人の中で誰が該当(がいとう)するのか、この家に来たばかりの圭介にはわからない。


 雪乃も黙っている以上、これ以上何の手がかりも得られない。


(おれ、このままボケっとしてたら、まんまと犯人に殺されるだけじゃないのか!?)


 冗談やめてくれ、と頭を抱えた。


 なぜ、なりたくもない後継者争いのために、自分が死ななくてはならないのか。

 こんな理不尽な話はない。


(まさか、あいつ、おれが狙われることまでわかっていて、ここに来させたんじゃないだろうな……?)


 後継者候補となれば、圭介の存在自体を消そうとする人間が現れる。

 貴頼は自分の手を汚さずして、邪魔者の圭介を排除できるのだ。


 さすがの桜子も圭介が死んでしまっては、藍田家の後継者として他の男を選ぶしかない。


 桜子と付き合えるようになって、圭介の幸せな人生はこれから始まるというところ。

 これが貴頼の思惑の一部であるのなら、余計に屈するわけにはいかない。

 なんとしてもここから脱出して、桜子との明るい未来をつかみ取るのだ。


「こんなところで、死んでたまるか!」


 圭介は自分にカツを入れるためにも、声に出して叫んだ。

次話、桜子サイドの話になります。(久しぶり!)

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