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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第二章 5節   <8話>
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<8話>  「魔神」   =Dパート=


エフェクトが消えると、そこには少女が横たわっていた。

更にそのかたわらにはキレイなリボンが落ちていた。


(ドロップアイテムか。それにしても少女は? ゲームではそんなイベントは無かったけれど……)


「ん? 何これ?」


凄まじい内に秘めた魔力を感じる。

それに気が付いたのは、何人かだけだった。


皆が少女の方を見ていたが、この魔力の根元は、転送装置の方だ。


「これ、キャサリンより強いんじゃ?」



それは転送装置からやって来た。

白髪の老人の様に見えるが、中身はまるで別物だ。

例えるのならば、イリーナに憑依している邪神に近い存在だ……。そんな気さえ感じさせる。


すると、イリーナの額に瞳の紋様が浮かぶ。


(イリーナの中の邪神が呼応している?)


邪神は意識を失ったイリーナの代わりに、身体を起こし、それに近付く。


近寄って来るそれは、少女の元へと歩み寄る。


洞窟エルフの王は、皆に手を出さぬ様にと、司令を出した。


イリーナの身体を通し、邪神がそれに話し掛る。


「久しいな、エンキよ」


それはイリーナの方を向いた。


をエンキと呼ぶ貴様。咆哮ほえし者……か?」


「フフ。懐かしい名前で呼んでくれおるわ」


(どうやら、知り合い同士のようだ。いきなり戦闘にはならずに済みそうで良かった。正直、勝てる気がしない)


「どうやら、娘のニンクルラが迷惑を掛けた様だな」


「なあに、礼ならば我ではなく、隣りにおる友のリルへせい」


「へ? 私?」


「うむ。咆哮ほえし者の友、リルよ。予は助かった。感謝する」


「え? えーー? どういたしまして?」


不意を付かれた私は、思わず疑問系になってしまった。


エンキは礼を告げると、少女である娘の傍らに寄り添う。


「娘は、自身の生んだ植物の怪物に取り込まれてな。娘の魔力を吸い、あの様な巨体に成長したのだ。予もこの神殿より出られなくなり、困っていた。予は怪物には負けはしないが、勝つ事も容易ではない」


(なるほど、私もそうだ。独り(ソロ)でもキャサリンに負けはしないが、勝てもしない)


「まさか娘が無事に帰ってくるとは、思いもよらなんだ。予は本当に感謝しているのだ。何か褒美をとらせよう」


私は一瞬考えたが、直ぐに答えた。

「そうですね、私は情報を望みます。エンキ老師、あなたからは魔人に近い、でもそれとは異質の何かを感じます」


「良かろう。予の知る事を話そう。予は魔人まじんではなく魔神ましんよ。我々魔神は、こことは別の世界に住んでおるのだが、突然この世界へと神殿ごと転移させられれたのだ。ひと月前に」


(私と同じ頃にこの世界に?)

「この世界に魔王が現れたのも、ひと月前ですが、何かご存知の事は?」


「現・魔王……。あやつも我々魔神の一人よ」


「老師と魔王とのご関係は?」


「リル殿、そなたは予が敵となる事を心配しておるのだな? だが安心せよ。現・魔王との縁は限りなく薄い。そして、そこもとの隣におる輩と違い、予は恩を仇では返さぬ」


「フン。ぬかせ」

邪神が言葉を挟んだ。


「それにだ。先程そなたは『予には勝てぬ』そう思ったのであろう? だがそう思ったのも、予とて同じ。『そなたには勝てぬ』そう思っておる」


「はぁ、そういうモノなのでしょうか?」


邪神がまた言葉を挟む。

「友よ、そういうモノよ。エンキはああ見えて、学者肌でな。魔法魔術は多少使えるが、戦闘はからっきしよ。クククッ」


さっきの暴言に対して、お返しとばかりに言う。

実に嬉しそうだ。

イリーナの口元までもが緩む。


(やれやれ。大人気おとなげない……)


エンキはその言葉を無視して娘を抱かかえていた。


そして、娘の横に落ちているリボンを魔力によって浮かせて、こちらへと放った。


それをイリーナの身体で受け取る邪神。


(なんだかんだ言って、仲が良いよね)


どうやらゲーム内と同じく、状態異常耐性てんこ盛りのリボンの様だ。



Eパートへ つづく

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