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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第8章:トップの条件
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96.閑話~国と王~

いつもお読みいただきありがとうございます。

ここからの章はこの作品のコンセプトとして避けては通れないものなのですが、ちょっと難航中です。

なので少しお時間頂くことになるかもしれません。

世界中を巡る旅を始めて、幾つかの国を巡って気付いたことがある。

国の形態もそこに生きる種族も少しずつ違いがあるが、共通していることがある。

それはその国の王を見ればその国がどういう国なのかが分かるってことだ。

もちろん国民の全てが右に倣えで同じだとは言わない。

だけど王が愚鈍であれば臣が堕落し私腹を肥やすことに精を出すようになる。

王が残忍なら国から笑顔が消えていく。

逆に王に信念があり国を豊かにする意志があった場合、どんなに貧しい国でも活気がある。

もっとも、必ずしも善政を敷く国が存続するとは限らないのが世の中だが。


「それで言うと私達の国はどうなの?」


隣を歩くシロノが興味深げに聞いてきた。

振り返って生まれた村や王都の事を思い出してみる。


「そうだなぁ。腐り始めの果物って感じかな」

「なにそれ」

「シロノには悪いが、俺の知ってる限り王も貴族もまともに仕事をしている話を聞いたことが無い。

冒険者を始め街の人間はそれなりに活発に動いてたから一見栄えているように見えるし、俺が生まれた村みたいに地方もそれなりに平和だった。

だけどそれは偶然近くに狂暴な魔物が居なかったり、天候に恵まれていただけだったんだと思う。

仮にそういう脅威が発生した場合、国は動くと思うか?」


俺の質問に頭を悩ませたシロノは、ため息交じりに首を横に振った。


「一部騎士団が動いてくれる可能性はあるけど、他は無理ね。

特に地方で起きた問題なら自分たちに被害が届くまでは傍観、どころか気にもしないと思う」

「まあそうだろうな」


だからこそ今こうしてシロノは俺と一緒に国を飛び出したんだから。

もっとも、魔神を復活させようとしている者たちから世界を救いたいなんて荒唐無稽な話を聞いて動く奴はそうは居ないか。

俺だって最初にその話を聞いた時は耳を疑ったからな。

それでもただの勘違いだったら良いけどそうじゃなかったらシロノを一人そんな危険なことに関わらせる訳にはいかないからこうしているんだけど。

その決断は正直英断だったと思う。

なにせ行く先々で問題は起こるし、実際に魔神の復活を目論む組織、その下部組織を見つけることにも成功している。

ただやはり、俺みたいに身軽な人物だから動けるが、シロノみたいに本来身分が高いものほど中々動けないものだ。

国王であったり貴族であったり、何かしら役職に付いている人ほど足が重くなるし動くのに責任が伴う。

まして動かなくても十分裕福で動くメリットがないなら誰だって動きたいと思う奴は居ない。


「魔神を復活させようって奴らももうちょっと大っぴらに活動してくれたらなぁ。

そうしたら信じてくれる奴だってもっと増えるのに」

「いや、大っぴらに犯罪活動する人ってどんなに馬鹿でもそうそう居ないと思うよ」

「分かってるんだけどな」


俺達2人では限界がある。

なんとか行く先々で数人の協力者は見つけられているけど、相手は世界中に根を張る組織だ。

ならこちらも国家規模で動かないと間に合わないかもしれない。

教会は……ダメだろうなぁ。

冒険者ギルドや商業ギルドは独自で調査はしてくれると言ってくれてるがどこまで動いてくれるか。

まったく、何の力もないたった2人で世界を救おうなんて無理過ぎるよな。


「ほらキヒト。そんなこと言ってないで早くいこっ」

「ああっ」


笑顔で俺に手を差し伸べるシロノを眩しく見返しながら頷く。

この笑顔があるなら大丈夫だ。

この先どんな困難があっても絶対乗り切ってやる。



#########



……あれから。

まもなくして一緒に旅をする仲間も増えて賑やかになって行くんだっけ。

あの頃は楽しかったよなぁ。

ただ、そのお陰でシロノとふたりっきりになれる時間がほとんど無くなったんだけど。

もしあのまま2人でずっと旅を続けていたら……っていうのは無意味な話か。

皆が居なければ魔神の復活を止めることは出来なかったし俺もシロノも何もできずに死んでただろうからな。



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