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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第3章:変わりゆく周囲
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36.閑話~出会い~

いつもお読みいただきありがとうございます。

章の始まりに挟んでいるこの閑話ですが、本編とはほとんど関係はありません。

本当はその章のダイジェストっぽい内容にするのも面白いかなと思ったりもしましたが、これを投稿している時は肝心の本編がどうなるか未知数なもので(汗)

あと時間軸も結構ランダムに挟んでいく予定です。


それは俺が10歳の時の初夏。

畑一面に青々と繁る麦畑の中を俺達は駆け回っていた。

あ、言っとくけど大事な畑を荒らしてる訳じゃないからな。

よく知らないけど子供が楽しげに畑で遊んでると、それを見た畑の神様が喜んでくれて作物の生育を良くしてくれるらしいんだ。

だから植え付けも終わって雑草取りと害虫駆除が中心のこの季節は畑の中で遊ぶのが俺達子供の仕事って訳だ。

今日のメンツは俺の他はグル、ミィ、メイ、ガット、ポロの6人だ。

皆まだ背が小さいからしゃがむと見えなくなる。

俺だけガタイが良いから分かるそうだけど、そこは年長者としてのハンデだな。

だけどまぁ、俺くらいになると皆がどの辺りに隠れてるのかは分かる。皆それぞれ癖があるからな。それを考えれば右手にミィとガット、左手にグル、メイ、ポロってところか。


「よし、ならまずはグル達の方を狙うか」


方針を決めて駆け出そうとした時、突然誰も居ないと思っていた正面の村の外の方から悲鳴が聞こえてきた。


「きゃああ、助けてー-っ」


聞き覚えのない声だなとは思ったけど身体は勝手に声のした方へと駆け出していた。

それと同時に指笛を吹く。


「ピッピィ~~、ピッピィ~~~!」


みんな聞こえたかな。

この指笛は緊急時の合図で魔物が出た時や救助が必要な時に鳴らすものだ。

遊びの時間にイタズラで吹くとめっちゃ怒られる。

それはさておき。


「いたっ!」


畑を抜けた所に居たのはピンクの布に包まれた女の子と、それを取り囲むゴブリンが3体。

状況は良く分からないけど。


「ゴブリンは害獣だ~!」


大声を上げて注意を引き付けながら、右のゴブリン目掛けて全力ジャンプからドロップキックをお見舞いすれば走ってきたスピードも合わさってゴブリンが吹き飛んでいく。


「ギャギャ」

「ギギャギャ」

「うらァ」


突然の俺の登場に動揺してる内にさらに前蹴りを繰り出して女の子から遠ざけた。

その女の子も目まぐるしく変わる状況に着いてこれずに尻餅を突いたまま。

参ったな。

最初こそ不意打ちが上手く決まったけど、流石の俺でもこの子を守りながら素手で3体相手にするのは難しい。

せめてナイフくらい持っておくんだった。


ガサガサッ

「!」


更に草むらが揺れて何かが近付いてくる。

くそっ、まさか新手か!


ガサガサッ

ダンダンダンッ


なおも近くの草むらが揺れ足踏みまで聞こえてくる。

ただそれを聞いて焦ったのは俺だけではなかった。


「ギッ……」

「ギャギ?」


ゴブリン達も周囲の異変に戸惑っている。

よし、これなら。


「うおおおっ」

「ギャギャ!?」

「ギャーッ」


雄叫びを上げて襲い掛かって来た俺を見て、ゴブリン達は驚いて逃げていった。

ふぅ、何とかなったな。


「みんなナイスアシスト」

「えへへっ」

「やったね兄ちゃん!」


草むらから出てきたのはグル達だ。

きっと俺の指笛を聞いて遊びを中断して応援に駆けつけてくれたんだろう。

でもグル達ではまだゴブリンの相手は怪我をするかもしれないから、さっきみたいに隠れて陽動を行ってくれたんだ。

足元に石が落ちてたらそれを投げて援護してくれただろう。


「メイとポロは?」

「大人達を呼びに行かせたよ」

「よし、上出来だ」


そう言ってみんなの頭をわしゃわしゃと撫でる。

逃げていったゴブリンについては大人達に任せれば良いだろう。

村まであいつらが来たってことは近くに巣を造ろうとしてるのかもしれないし。


「ところで兄ちゃん。その子どうしたの?」

「ん?」


忘れてた。

そう言えばピンクの布に包まれた女の子が居たんだっけ。

村の子じゃないし一体何処から来たんだろう。


「怪我してないか?立てる?」

「あ、その。怪我は大丈夫です。

助けて頂きありがとうございます。

ただその……」


丁寧にお礼を言う女の子。

でも顔を赤くして一向に立ち上がろうとしないのはなんでだ?

そう首を傾げていたら、ここにいる中では唯一女子のミィが何かに気付いたみたいだ。


「あー、ここはあたしに任せて男子は解散!」

「えーなんでだよ。歩けないなら男子がおぶって行った方が良いだろ」

「うっさい。つべこべ言わずお母さん呼んできて」

「グル、行くぞ。こういう時のミィは怖いんだ」

「お、おう」


仕方なく俺達はミィと謎の女の子を残して大人達を呼びに行った。

……まったく。おもらしくらい気にしな、あいたっ。



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