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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第13章:村人らしく姫様らしく
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198.東洋なのか西洋なのか

準備万端整えた俺は、放送を聞きながら決闘のステージへと立った。

皇子との距離は10mってところか。

ちなみにこの決闘の為だけに学園のグラウンドに簡易ステージが用意された。

俺は1度晴れ渡る空を見上げ、視線を下ろすついでに遠くのビルを視界に収めた。

英伝学園のグラウンドは、立地と防犯の関係で外から覗こうと思ったら数えるほどしかない。

もし瑞希先輩が囚われているとしたらあの中のどれかだろうか……

しかし俺の思考は正面からの怒鳴り声で中断させられた。


「おい、貴様。なんだその格好は!」


皇子から突然、服装にダメ出しが来た。

言われて自分の服装を見下ろせば、うん。問題ないな。


「なにと言われても決闘と言えばこの衣装かなと頑張って用意してきたんだが?」

「ふざけるな。神聖な決闘の場だぞ。

なんだそのボロくさいマントと帽子は」

「神聖ねぇ」


決闘なんてのは所詮殺し合いだ。

偉い奴らはそれに一生懸命飾りを付けて格好良く見せかけようとする。

キヒトの時もそうだったなぁ。

ちなみに俺の今の格好は、キヒトのを真似るって案もあったけど、それこそ場違い感があったので止めた。

代わりに用意したのは、某機械の身体を求めて宇宙を列車で旅する少年の衣装に近いもの。

つまり長年荒野を旅してきたかのようにくたびれたマントとツバの広い帽子だ。


「事前に聞いた話では和式なのか洋式なのかの指定も無かったからな」


予め日本式の決闘だというなら江戸時代の武士の格好で来たし、西部式だと言えばガンマンの格好を用意するつもりだった。

しかし何も指定が無かったので色々考えた結果、これが1番都合が良かったんだ。


「そういう皇子は実に貴族らしいな」

「ふふん、そうであろう」


自慢げに胸を反らす皇子は実にきらびやかで、何処から見ても貴族に見えた。

ただ俺からしてみれば派手過ぎって感じるけど。

動きやすさはあまり考慮されて無さそうだ。


「よっ、成金皇子!」

「ああん、誰だ今言った奴は!!」


外野から飛んできたその言葉が実にしっくりくる。

ま、服装はどうでもいいか。

それより確認しておかなければならないことがある。


「皇子、決闘を始める前に確認したいことがある」

「なんだ、今更命乞いか?」

「いや、それはどうでも良いんだ。

それより今朝、俺の友人が1人誘拐されたんだが心当たりはあるか?」

「なに?残念だが知らんな。

ただまぁ予測は付く。

大方、馬鹿な兄貴が勝手に手を回したんだろう。

あの両親がこんな行事に興味を持つとも思えないしな」

「そうか」


ひとまず皇子本人の仕業でないのは僥倖だ。

もしそうじゃ無かったら半殺しじゃ済まないところだ。


「じゃあ始めるか」

「ふっ、そもそも勝負になると思ってることが滑稽だ。

これを見てもその余裕な態度を保てるか」

カチャッ


おもむろに皇子は胸の内ポケットに手を突っ込んだかと思えば、その手には拳銃が握られていた。

いやそれ普通に銃刀法違反なんだが。

あまりの事態に会場も静まり返った。


「「……」」

「ふっ、驚いて声も出ないようだな」

「一応聞くが本物か?」

「もちろんだ。卑怯だと言うか?」

「いや、ルールでは禁止してなかったからな。

それより後ろの人達。流れ弾で怪我しないように移動してくれ」

「それなら安心しろ」


パチリと皇子が指を鳴らせば、学院の人達が透明な盾を観客席の前に配置していった。

まったく準備の良いことで。


「これでハッタリではないのは分かっただろう。

降参するなら今のうちだぞ。

当たりどころが悪ければ助からないからな」


確かに本物でなければこんな準備はしないか。


「ちなみに銃を撃った経験は?」

「安心しろ。アメリカの射撃場で3回はあるぞ」


つまりド素人か。

銃の構え方からしてそうじゃないかと思ったよ。

なら10m離れた俺に狙い通り当てるのは期待しない方がいい。

まさに運が悪ければって感じだな。

まったく困ったものだ。



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