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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第13章:村人らしく姫様らしく
190/208

190.平和の終わりは突然に

いつもありがとうございます。

さあ、ようやく恋愛小説っぽいイチャイチャ回は終わりましたので真面目モードに(あれ?

その日、英伝学園の正門前に数台のリムジンが停まった。

扉が開き、降りてきたのは執事またはメイドといった出で立ちの大人が数名。

続いて先頭車両からはブランド物のスーツに身を包んだ大人が、その後ろの車からは金糸銀糸で刺繍が施された統一感のある服、所謂制服に身を包んだ男女が5人降りてくる。

その中のひとり。金髪のショートヘアの男子が校舎を見てため息をついた。


「まったく、貧相な校舎だな」

「下賤な者たちにはお似合いじゃないかしら。分相応というものよ」


それに答えた女子も嘲りを隠しもしなかった。

ただ他の生徒も教師も特に窘める様子はない。


「さあ行きますよ。今日は下見で本番はまた後日ですからね」

「「はい、先生」」


執事やメイドに見送られながら教師2名と生徒5名が正面口へと歩いていく。

正面口には英伝学園の制服に身を包んだ男女が1組待ち構えていた。

その男子生徒はやって来たその集団を見つけると穏やかな笑顔と共に口を開いた。


「王貴学院の皆様ですね。

ようこそ英伝学園へ」


隙の無い姿でお決まりの文句を言われた来訪者たちは……



……

…………

………………


それは2月に入ってすぐの事だった。

朝のHRで先生が俺を呼んだ。


「姫様と村人Aは生徒会から呼び出しが掛かっていますので昼休みになったら生徒会室へ忘れずに行くように」

「「はい。わかりました」」


なんだろう。

特に最近は何かしたってことは無い筈なんだけど。

先生が教室を出てから庸一とハルが俺の席までやってきた。


「で、一会。今度は何をやったんだ?」

「てっきり藤白さんと付き合いだして大人しくすることにしたと思ってたんですけど」

「何もしてないから。

なんで最初から何かしたことになってるんだよ」

「そりゃまあ一会だしなぁ」

「一会君あるところに事件ありですから」


一体俺の事をなんだと思ってるのか今度じっくりと聞いて、いやよく考えればいつも言ってるか。

ハルなんて俺と一緒に居れば退屈しそうにないですね、なんて事ある毎にいってるし。


「残念ながら今回は心当たりはないな」

「なるほど。これから起きるパターンか」

「起きるのは確定なのか」

「もちろんです。

というか藤白さんも呼ばれているってことはあれですか?

学園内での不純異性交遊がバレたとか」


ガタガタガタッ!


ハルの発言を聞いて教室内のあちこちから視線が飛んできた。

幸い殺意は少なめだけど、代わりに女子からの怪しい視線が姫乃に飛び火している。

これは早めに訂正しないとまずいな。


「ちょっと待て。

いくらなんでも学園内で人に見られて困るような事はしてないからな!」

「「……」」


俺の言葉を聞いたクラスメイトの内、なぜか男子が複数頭を抱えてしまった。

更に女子からの姫乃に対する視線がますます強くなったのは何故だ?

疑問に思った俺の袖がくいっと引っ張られた。


「あの一会くん。その言い方だと学園の外だと色々やってるように聞こえますよ」

「え、あ~。なるほど。日本語ってのは難しいな」


姫乃の尤もなツッコミでようやくなぜこんな状況になったのかが分かった。

ただまぁ流石に実際のところどうなんだと聞かれても答えないけど。

全力で惚気ても良いって言われてもお断りだ。


「ともかくだ。ひとまず呼び出される心当たりはない」

「私もです。まぁ行けば分かるでしょう」


姫乃の一言でひとまずこの場は解散となった。

現時点であれこれ考えても何も分からないのは確かだしな。

そして昼休み。

生徒会室に出向いた俺達に生徒会長がため息交じりに呼び出した理由を話してくれた。

……どうやらかなり気が重い内容のようだな。


「来週の土曜日に姉妹校である王貴学院と親善試合を行う事になった」

「親善試合……」

「姉妹校なんてあったんですね」

「残念ながらな」


ここまで言うって事はよっぽど嫌なんだろうなぁ。

しかし王貴学院か。

そういえば去年進学先を決めるときに名前だけは見たな。

言っても受験資格が合わなくてすぐに候補から外したんだっけ。

あ、だんだん思い出してきた。


「確か『貴族、華族、社長子息令嬢、または最低でも年収1000万以上であること』を入学条件にしてる学校ですね」

「そうだ。つまり正真正銘おぼっちゃま学校ってことだな。

実力主義の英伝学園うちとは良くも悪くも対照的だ」


金と血筋が大事ってことは俺や姫乃が向こうの学院に行ったら最底辺扱いなんだろうな。

そもそも入学すら出来ないんだけど。

こっちの学園は村人Aでも対等以上に扱ってくれるから良かった。


「さて、そこで本題だ。

実は今日この後、その王貴学院の代表たちがこちらに挨拶に来る。

そこで2人には正面口からここまでの案内を頼みたい。

案内と言えば村人Aの使命みたいなものだからな」

「は、はぁ。

あのでも、この後って午後の授業は?」

「済まんが5限は欠席で頼む。教師には既に連絡が行ってるので出席扱いにしてくれる手筈だ」


どうもこのスケジュールは向こうが無理矢理詰め込んできたみたいだ。

放課後だとバイトの時間と被る危険があったので助かったと言えばそうなのだけど、普通授業時間を潰してまで『挨拶』をしに来るだろうか。

あぁ、向こうの場合は放課後は習い事とかで忙しいと。

学校の授業にそこまで価値は無いぞって言われてるんだけど分かってるのかな。



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