134.合宿だって
さて疑問も解消出来たところで話は本題に入るようだ。
「君たちに集まってもらったのは、強化合宿について説明するためだ」
「「強化合宿?」」
生徒会や各部活で結束を固めて集中して練習をする為に行われるものだと思うんだけど、それと俺達と何の関係があるんだ?
俺と姫乃は帰宅部だし、それ以外も俺が知っている限り部活はバラバラだ。
一体何を強化しようというのか。
「ここに集まっているのは、この学園の代表とも言えるあだ名持ちだ。
毎年、生徒会がホストとなり君たちのようなあだ名持ちの生徒と合宿を行うのだ。
お互いに切磋琢磨しつつ連帯感を高めようというものだな。
なにせあだ名持ちというのは基本的に能力が高かったりカリスマがあったり、ついでに個性的な人間が多いからな。
お互いの長所を活かしあう事で個人としても成長出来、また学園の更なる発展の為に繋がるだろうと毎年企画されているのだ」
「はぁ、なるほど」
「ちなみに特別な事情が無い限り強制参加だ」
「げっ」
そんな面倒な企画からは逃げたかったなというのが正直なところだった。
会長め。俺が辞退すると見越して先手を打って来たか。
「ちなみに合宿中に掛かる費用は?」
「安心したまえ。全て学園持ちだ」
逆に言えばそこまで力を入れている証拠でもある。
私立の学園だし教育機関であると同時に企業という側面もあるはずだから、金を掛けただけの成果が見込めるのだろう。
「期間は12月21日から23日の2泊3日だ。
あー紅の王子。クリスマスが潰れなくて嬉しいのは分かるが多少控えてくれ。
天使と顔を合わせて笑い合うのは独り身には目の毒だ」
「す、すみません」
「隣の村人Aを見てみろ。クリスマスと聞いても微動だにしていないぞ」
いや、これでも内心ホッとしてる。
何せ24日前後はバイトの繁忙期だからな。
24日は日中バイト入れてるし、今から休むって伝えると怒られそうだ。
あ、そう言えば夜は空いてたな。
「姫乃、24日の夜って空いてるか?」
「うん、えっと……」
「だからと言って今から約束を取り付けろとも言ってない!」
「はっはっは、悪い悪い」
こめかみをピクピクさせる会長。やはり前会長と違って揶揄いがいがあるな。
ただこれを続けると話が進まないから程々にしておくか。
「まったく。
21日は午前9時に校門前に集合。
向かう先はとある研修センターで冷暖房完備。ついでに大浴場などもある。
服装も特に指定はないが、講義の内容によっては動き回ることもあるそうだから女子はスカートやハイヒールは避けるように。
あ、あと当然だが合宿中の不純異性交遊は禁止だ」
いや言われなくてもしないだろ。
光達がどこまで進んでるかは知らないけど2人とも奥手かはともかく奥ゆかしいのは間違いからな。
結婚するまでエッチなのは禁止ですとか言ってても驚かない。
残りの人達も今見た感じではそこまで親密な関係になってる雰囲気もないし、会長も定型文として言っただけだろう。
これで今言えることは全てということで解散になった。
そもそも俺達学生は冬休みの前にテストが待ってるんだけどな。
「週末はテスト勉強でもするか」
「うん。ってそうでした。
私の働いてる喫茶店が今週末は改装工事で休みなんです」
「おや」
1学期末の時と同じようにあそこを使わせて貰おうと思ったけど当てが外れたな。
とは言え新しい店を開拓するのも外したら嫌だしいっそのこと。
「なら俺の家でやるか」
「え?あ、はい」
何故か一瞬、姫乃が驚いた顔をしたけど何だろう。
まぁ頷いた所を見れば大した問題でもないよな。




