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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第9章:芸術の秋。色づく秋。
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114.止まらないもやもや

その日は結局、演目をどうするかや残りの配役については後日改めて決めようという話で解散になりました。

私がメインヒロイン役なのはもう確定なようです。


「あれ、もしかして嫌だったのか?」


ちょっと悩ましい顔をしていたら一会くんが声を掛けてくれました。

その気遣いが出来るならどうしてさっき庇ってくれなかったのかと問いただしたいですが今更言っても仕方ないですね。


「いえ、別に嫌という訳ではないのですが」

「なら諦めて引き受けるしかないな。

クラスの女子も姫様を差し置いて私がヒロインよ!とは言い出しにくいだろうし、そもそもそこまで主役やりたいって奴も居ないだろ」

「まぁそうなんですけどね」


一会くんの言ってることは理解出来ます。

でも理解するのと納得するのは別と言いますか胸のモヤモヤは消えてはくれません。

こういう時はバイトをしてて良かったって思います。

仕事にプライベートの事情を持ち込むのはご法度ですからね。

どうしても無理な時は休んだ方が良いんです。

でもやっぱりいつもとは少し違ったみたいで先輩に声を掛けられました。


「なんか今日は元気無いね」

「いえ、大丈夫です」

「あ、もしかして彼氏と喧嘩した?」

「!」


言われてドキリとしました。

その私の反応を見てにやっと笑う先輩。


「お、もしかして図星かぁ」

「違いますよ。別に付き合ってる訳でも無ければ喧嘩した訳でもないです」

「ふむふむ。つまりそういう相手はいると」


そう言いながら更にニヤニヤを深める先輩。

私は私で先輩の言葉に顔が赤くなっていると思います。

ここは更なる先輩の攻勢を回避するために一度戦略的撤退をするべきですね。

今はなにより仕事中ですから。


「ほら、新しいお客様ですよ」

「はいはい。じゃあまた後でね」


先輩をその場に残して私は今しがた店内に入って来た人たちの応対をしに行きます。


「……でね~。ここのチーズケーキがめっちゃ美味しいのよ」

「いらっしゃいませ。3名様です、か……」

「はーい、3名様で~す」


お喋りをしながら入ってきたのはうちの制服を着た女子2人と、それと一会くんでした。

女子の方は見覚えが無いので少なくともうちのクラスでは無さそうです。

リボンの色からして3年生?それがどうして一会くんと一緒に居るんでしょうか。

そりゃ最近裏庭に来る人は学年関係なく来ますから知り合いでも不思議ではないですけど。


「あれ、店員さん?」

「あ、申し訳ございません。こちらへどうぞ」


いけないいけない。ボーっとしてる場合じゃありませんでした。

それにお客様の詮索はダメですよね。

3人を空いているテーブル席まで案内して戻るとまたしてもニヤニヤ顔の先輩が居ました。


「……何ですか?」

「ふぅん。彼がそうなのかしら」

「お客様を詮索するのはダメですよ」

「大丈夫。詮索してるのはあなたの事だから」

「……」

「ごめんごめん。そんな睨まないの。じゃああのテーブルの応対は任せるわね」


先輩はそう言って他のお客様の所に行ってしまいました。

悪い人では無いんですけどね。

噂好きというか、他人のスキャンダルが好きな人ですから。

あることない事言い触らしてるって話は聞かないので大丈夫だとは思いますけど、何かあった時にはきちんと落とし前は付けてもらいましょう。

それはともかく。

やっぱりちょっと気になりますね。

一会くん達は今もメニューを開きながら楽しそうにお話してます。

一体何を話してるんでしょうか。

と、注文が決まったみたいですね。


「ご注文がお決まりですか?」

「あたしはホットのミルクティーにしょうかな。瑞樹は?」

「今日は抹茶ラテの気分ね」

「俺はキリマンジャロのホットで」

「え、キリマンジャロって何だっけ、どこかの山?」

「いや綾香。コーヒー豆の種類だから。でも村基君ってコーヒーの豆にまで拘りあるの?

凄いなんか大人って感じでカッコイイね!」

「別にそこまで味のこだわりがある訳じゃないので、その日の気分ですけどね」

「それでもサラッとそう言うのを注文できるのポイント高いよ」

「確かにねぇ。うちのクラスの男子に見習わせたいわホント」

「あのご注文は以上でよろしいですか?」


本当はあまり話に割って入るのは良くないのですが、このまま続きそうだったので敢えて割り込んでしまいました。


「あ、あとチーズケーキ3つで」

「はい、かしこまりました」


注文を復唱した後バックヤードへと戻りました。

その後ろからさっきの女子がこそこそ話してるのが聞こえました。


「ねえなんかあの店員さん態度悪くない?」

「確かに。このお店にしては珍しくぶっきらぼうだったし」

「まあ女の子だし機嫌の悪い時もあるんじゃないですか?」

「ああ、あの日か」


一会くんもフォローを入れてるつもりでデリカシーの無いこと言ってるし。

それを聞いた女子2人も楽しそうに笑ってるし、なんでそんな人と一緒にいるんでしょうか。



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