111.ちょっとだけ変わる学園生活
そして投票日当日を迎えて、その結果が発表された。
結果は予想通り有効投票の6割ほどを集めて織田先輩が当選だ。
黒部先輩が2割程度で驚いたことに俺に投票した人が1割以上居た。
「この学園は相当変わり者が多いらしいな」
俺の感想を聞いた姫乃は苦笑いを浮かべていた。
それと副会長には聖が就いた。
言っても光も姫乃も辞退したから他に選択肢が無かったとも言える。
「一会くんを副会長にって声もあったんでしょ?」
「まあな。断ったけど」
そう、投票結果が出たその日のうちに生徒会長から副会長にならないかという提案を貰った。
会長候補だったんだから副会長候補に含んでも良いだろうという訳だ。
もちろん2つ返事で謹んで辞退したけど。
俺としては目的は達成したと言っても良いしな。
ちなみに書記や会計は会長副会長が直接指名して決めるそうで、以前から仲の良かった人の中から選んだらしい。
これで無事に次期生徒会メンバーも決まり、俺達は以前と変わらない学園生活を送れると期待していたのだけど、どうやらそうは問屋が卸さないらしい。
「……裏庭はいつからこんな人気スポットになったんだ?」
「あはは。全部一会くんのせいでしょ」
「まあそうかもしれない。あんなこと言うんじゃなかったな」
放送で話した中で困ったら裏庭に来てくれみたいな事を言ったせいで、毎日数組の生徒が昼飯を食ってる俺達の元に話をしにやってくるようになった。
まあそのうちの半分くらいは姫乃と仲良くなりたいって下心が見えるんだけどな。
残り半分は女子グループなので姫乃だけが目的ではないようだ。
頻繁に来る割に話の内容は雑談ばかりで、気が付けば今では近くにレジャーシートを敷いて裏庭の常連と化している。
「?」
「(にこにこ)」
ふと目が合うと笑顔で手を振られる。
それだけで実害は特にないんだけど、なぜか最近ちょいちょい姫乃の機嫌が悪くなるんだよなぁ。
別にご近所さんが出来たのが嫌だとかいう性格じゃないと思うし、だとすると気付かない内に俺がその女子に良くない事をしててそれを怒ってるんだろうか。
何となく姫乃本人には聞きづらいので代わりに同じ女性ということで青葉さんや魚沼さんに聞いてみるが。
「えっと、原因は分かってるんですけど私達にはどうしようもないです」
「そうですね。むしろおふたりにはちょうど良い機会なのかもしれません」
「んん?良くは分からないけど俺が悪いのか?」
「一概に村基さんだけが悪いって訳では無いんですけど、でも村基さんが原因な訳で」
「あ、でも謝ったりするのは全く見当違いと言いますか」
ダメだ。ふたりの話を聞いてもいまいち要領を得ない。
どうやら原因の一端は俺にあるみたいだけど、でも謝るのは違うらしい。
「庸一とハルは分かるか?」
「むしろ一会が気付かない理由が俺には分からん。
春明の時にはすぐに気付いたのだし、今回も分かっても良さそうなものだが」
「自分のことになると途端に見えなくなるものなのかもしれませんね」
「黒部先輩は……」
「我に聞くな」
うーむ、やはり教えては貰えないらしい。
でもこの感じだとそれほど深刻な問題でもなさそうだし、そこまで悩む必要も無いか。
「と、姫乃。ちょい動かないで」
「?」
パシッと姫乃の頭の上に居た虫を弾く。
「蚊が姫乃を狙ってたから」
「あ、うん」
姫乃は俺の言葉を聞いてちょうど自分の頭の上に伸ばされた俺の手をじっと見上げた。
なんだろう、そんなに気になるものかな?
そんなに気になるならそうだな。
ぽふっと頭の上に置いてみる。
「ふわっ」
「姫乃の髪はさらさらだな」
「ん~~ふふっ」
ついでとばかりに撫でてみると気持ちよさそうに目を細めて機嫌が直ったのでこれは正解だったようだ。
ただその代わりと言ってはなんだけど、周囲の視線がなんか生暖かい。
魚沼さんなんて顔を赤くして隣にいるハルの袖を引っ張ってるし、それを受けたハルもたどたどしくも魚沼さんの頭を撫で始めた。ついでに見つめ合って微笑み合う。
うんうん平和なバカップルめ。
「あれでもやっぱり無自覚だと思うか?」
「多分。村基さんですから」
何故か庸一と青葉さんが俺をジト目で見てくる。
なぜだろうか。
途中大丈夫かと思いつつ無事に選挙話がひと段落しました。
実は当初の構想では姫様を中心に村人たちが盛り上げたりライバルの妨害を撃退したりする予定でした。
まあこれはこれでありという事で。
そして次のお題は決まってるのですがかなりの難産になりそうです。
多分一度描いては調整してを繰り返すことになりそうなので、少しお時間ください。
一度投稿したら大幅な改訂はしたくないですし。




