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メリー・クリスマス! ③

「じゃあ、そろそろ始めるわよ。プレゼント交換」

「オッケー! ねぇ皆なに持ってきた?」

「いや、それは交換してからでしょ。ま、それなりにいいものとは言っとくわ」


 そう言いながら紫蘭が取り出した袋は他の皆のものよりもぶっちぎりで大きいものだった。なに入ってるんだよあれ……。他の皆のプレゼントが片手に収まるサイズなのもあってかなり目を引く。


「さて、どのような方法で交換しましょうか?」

「そうね……くじ引きでいいんじゃない? なんかパーティーっぽいし」


 という訳でくじ引きに決定。まあ、大事なのはプレゼントを交換するという行為なので、その為の方法なんてなんでもいいしね。


 そして、その厳正なる抽選の結果――


「私のは……、これですか」

「お、それはアタシからのだね」


 東雲さんはあやめのプレゼントを引き当てたらしい。……ちょっと羨ましい。


「これは……、紅茶ですか?」

「そうそう。アタシの最近のお気に入りなんだ、それ。滅茶苦茶美味しいから百合も絶対気に入ると思うよっ」

「あやめ様がそこまで言うとは……。なかなかの物のようですね。ありがとうございます。大事に飲ませていただきますね」


 あやめはああ見えて紅茶やコーヒーなんかにかなり詳しい。お小遣いから高い逸品を少しの量だけ買ってそれを大事に飲むのが趣味だったりするくらいだ。そのあやめが“滅茶苦茶美味しい”というレベルなのだからそれはもう凄い代物なんだろう。


「さて、次は私ね。……これは、竣介のかしら?」

「そう、だね」

「なにちょっとがっかりしてんのよ。どうせあやめに当てて欲しかったんでしょうけど」

「いや、別にそんなこと思ってないけど……」

「どうだか。ま、もうこれは私のだから。ありがたく頂かせてもらうわ」


 紫蘭は俺からのプレゼントを引き当てた。……正直、さっき紫蘭が言っていたことは図星だったりする。あやめが喜びそうなものを選んだので、本音を言えばあやめに当たって欲しかった。果たしてそんなプレゼントが紫蘭に喜んでもらえるかどうか……。


「……へぇ。あんたにしては随分良いもの選んだじゃない」

「俺にしては、ってのは余計だろ。……ま、喜んでくれたんなら良かったよ」


 俺からのプレゼントは、この時期限定のお菓子の詰め合わせだ。可愛らしい缶の中にクッキーやチョコレートやマシュマロがいっぱいに詰まっている。あやめはさっきも言ったように趣味で色々な紅茶やコーヒーを集めてるから、それと一緒に食べて欲しいなと思って選んだんだけど……。紫蘭も気に入ってくれたようで良かった。


「まあ、あやめの誕生日プレゼントを選ぼうとして男物の腕時計選ぼうとしてたあの頃からすれば、随分成長したんじゃない?」

「その話をあやめの前でしないでくれよ……」

「もうだいぶ前に私が話してるから大丈夫よ」

「えぇ……。お前なぁ……」


 紫蘭と二人で放課後にデパートであやめの誕生日プレゼントを選んだときの話だ。なにぶん紫蘭以外の女性にプレゼントを贈ることが初めてだったこともあって、あの時は紫蘭に散々俺のセンスのなさを露呈させながらプレゼントを探したっけ。結局最後にはシルバーのハートが可愛いネックレスを選んで、それを渡しながら一世一代の告白をしたのだった。


 ……まあ、その告白も色々あったけど、そのおかげであやめと付き合うことが出来ているのだから、本当に紫蘭には感謝してもしきれない。当の本人は「あれくらいじゃ罪滅ぼしにすらならないわ」とかいってるけど、正直もう昔のあれこれなんか気にしてないんだけどなぁ……。


「えっと、あやめ……」

「あはは、別に気にしてないって。ていうか、紫蘭だって今の話をアタシにしてくれた時、別に馬鹿にしたりからかったりはしてなかったしね。どっちかっていうと、どれだけ必死で選んでたかを教えてくれてたっていうか……」

「ストップ。それ以上は私のイメージに関わるわ」

「大丈夫だって。皆もう紫蘭が本当は優しくて友達思いないい子なのは知ってるから」

「そ、それ以上言うなーっ!」


 ワ―キャー言いながらじゃれ合う紫蘭とあやめ。本当仲良いなぁこの二人は……。


「ふふっ。少し羨ましいですわね」

「あの二人が?」

「ええ。私はここまではしゃげませんから」

「でも、東雲さんも楽しそうにしてると思うけどな」


 その証拠に目つきは柔らかいし、いつも以上のいい笑顔をしてる。確かに東雲さんは感情が表に出てきにくいタイプの人だけれど、それでも今楽しいと思ってくれてることくらいは分かる。


「そう、ですかね? そう見えてるのなら、良かったです」

「……ちょっとそこの二人。私らが見てないからってなにイチャイチャしてんの」

「あの、その表現はマジで止めてくれませんか紫蘭さん……」


 あやめに変な勘違いされたらどうしてくれるのか。とりあえずは笑ってくれてるからいいものを。


「さ、次いきましょ次。早くしないと日が暮れちゃうわ」

「分かった分かった。じゃ、俺のは……、東雲さんのか」


 東雲さんからのプレゼントは綺麗にラッピングされた長方形の形をしている。……もうこの時点でなにかはなんとなく予想できてしまった。


「東雲さん、本ですか?」

「えっと……。よくわかりましたね」

「ま、伊達にずっと一緒の部活やってないっすよ」


 言いながら包装から中身を取り出す。さて、どんなのかな――


「……あれ?」


 取り出したそれは本……の形をした小物入れだった。中を見てみると、付箋やらペンやらの可愛らしい文房具一式が入っていた。


「ふふっ、流石に私もクリスマスプレゼントに本は出しませんよ。いえ、別に本でも良かったですが……。皆さんの好みも分かりませんし今回は止めました」

「だまされた……。でもこれはこれで良いな……」


 中身の文房具はデザイン的にちょっと男が使うのはアレかもしれないけど、本の形の小物入れは普通にオシャレでいい。まあ、文房具も家で使う分にはデザインとか気にしないし、結構嬉しいプレゼントだった。


「さて、最後はアタシだね。紫蘭からのプレゼントかー。なにかななにかなー」


 楽しそうに鼻歌を歌いながらどでかい袋を開けていくあやめ。そして中から出てきたのは……


「おお、でっかい……。でも可愛いー」

「でしょ? 私も同じの持ってるけど、お気に入りなのよね」


 あやめには抱きかかえられないくらいのサイズはある、可愛らしいクマのぬいぐるみだった。クリスマス仕様なのか、赤いサンタクロースのような服装をしている。紫蘭は意外にも普段の振舞いに反して可愛いぬいぐるみや人形なんかを集めてるし、実にらしいプレゼントだ。あやめも可愛いものは大好きだし、かなり喜んでるけど……。そのプレゼント、少々問題もある気はするというか……。なにが問題かというと、それはつまり――


「でもこれ、どうやって持って帰ろうかな……」


 こういうことである。流石に抱えられないサイズじゃ電車で持って帰るのは至難の業だからね……。


「竣介の部屋にでも置いとけば? 彼氏の部屋なんだし、よく行くでしょ?」


 いや、今日初めて来たレベルなんですが。というか俺の部屋にこれを置ける場所なんてあったっけ……?


「あ、なるほどね。……竣介くん、いいかな?」

「え、マジ?」


 という訳で。――翌日から、俺の部屋には巨大なクマのぬいぐるみが鎮座することになったとさ。


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