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イマドキのサバサバ冒険者  作者: 埴輪庭


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戦場百景④~ヴァラク防衛戦①~

バチバチ視点飛んで鬱陶しいでしょうけど、更新回転数でカバーするつもりなんで多めにみてやってほしいです。ほら!更新日時みてください!一杯更新してますよね?つまりこれからも一杯更新をするので問題はないってことです。やったぁ

 ◆


「本当に、本当でしょうね、団長!」


 小太りの青年が顔を真っ赤にしながら叫んだ。

 団長と呼ばれた老人…いや、老人にしては精気に溢れすぎたその男は重々しく頷いた。


「本当だとも、カナタ。この任を果たしたならば、その身に背負う借金の全てを肩代わりし、更に給金を倍にしてやる。更に、早朝の訓練を免除してやろう。どうだ、やるか」


 ――やりますっ!


「わ、私達もいきます!!」


 赤髪の女性、セシルも叫ぶ。

 リズとガストンはこいつまじかよ、という目で彼女を見つめた。

 仲の悪い二人だが、この時ばかりは意見が一致したのだ。


「なによその目は!ここで勲を立てないでいつたてるっていうの?団長の話では、彼がいれば作戦は成功する…可能性が高いって話じゃないの!だったらこの話に乗って私達も一皮剥けるしかないわ!誰かがなんとかしてくれる、そんな事ばっかりよ私達の冒険者人生!私はもういい加減そんなのからおさらばしたいのよ、わかる?」


 リズもガストンも、まぁなぁ、という表情を浮かべた。彼等にも思う所はある。


「死ぬかもしれんぞ。カナタの才覚ですら覆い隠し、押しつぶすような闇が戦場にはあるかもしれん」


 ラドゥはそう言うが、セシルの目をみてそれ以上は何も言わなかった。


 ◆


 そんなこんなでラドゥ傭兵団、及びヴァラクに滞在していた名のある傭兵団連中は都市を包囲する魔軍に吶喊し、そして指揮官級の首を取るというイカれた任務を実行する事になった。


 と言うのも、やはりヴァラクの常備軍だけではどうにも攻め潰されるのが明々白々であったからだ。


 常備軍を指揮するのはレグナム西域帝国、第三軍より派遣された高級士官であったが、恐れを知らずに勇猛に戦い、そしてあっさりと死んでしまった。


 帝国は極まった攻勢衝撃力を有するが、これは上位者が例外なく勇猛果敢である事が理由である。兵はその背を見て勇気を奮い立たせ、軍は指揮官を中心とした凶暴な一振りの巨槍となって敵軍を刺し貫くだろう。


 しかしそれは防戦時においては極まった弱点ともなりうる。

 国の為に外敵を討ち滅ぼさんと軍勢の先頭に立ち、そして真っ先に死んでいくのだ。

 上位者がくたばった守備兵などは雁首をそろえた食肉用家畜に等しい。


 臣民の愛国心を利用した悪辣な術を使う皇帝サチコは、この時点では術を最大稼働させてはいなかった。


 ただ、臣民が恐れないようにと薄く、広くその権能を拡げていたのだが、元々愛国心が高い帝国軍にはそれでも劇薬だったようで、おぞましき魔軍と対峙しても彼等は全く恐れたりせず、突っ込んで死んでいった。


 ヴァラク常備軍のキルレシオは実に1対8という有様だった。

 これは兵士8名の命と引き換えに魔軍の尖兵1人を殺害しているという意味だ。


 防御を固め、間隙を衝いた逆撃のみに努めるならばもう少し被害は少なかったのであろうが…


 ラドゥが危惧した事態は実に的中してしまったわけである。


 ◆


「…ということだ。通常、こういう任務では10分の1も生還できれば恩の字であろう。しかし、今回は希望がある」


 ラドゥを始め、名だたる強面傭兵共がカナタを注視した。視線が物理的な圧力を伴いカナタを押しつぶす。


 常ならばカナタも尻尾を巻いて逃げ出しただろうが、彼としても今回は報酬が魅力的に過ぎた。

 金貨にして1500枚を優に超える借金は、もはや彼個人が返済出来る額の限界点を超えていた。


 しかもこの金のほとんどはヴァラクの夜の店に突っ込まれているというのだから救いようがない。


 普通ならばとっくにバラされて埋められているのだが、カナタはかの有名なラドゥ傭兵団の一員でもある。


 その信用は大きく、結句、彼に金を貸す業者が後を絶たず…そして借金はどんどん膨れ上がっていってしまったのだ。


 かといってラドゥ傭兵団が彼を捨てる事はありえなかった。

 カナタの能力…才覚は金ではかえない価値のあるものだ。だからカナタはここで命をかけて作戦を成功に導かねばならない。


 さもなければ豚の餌を育てる肥料となるしかない。


 ◆◆◆


 そうはいってもね、とカナタは周囲を見渡した。

 不気味な空の色の下、広がる怪物の群れ。

 何をどうしたらいいのやら、とカナタは適当に方向を決めて、部隊を先導し進み始めた…が。


 きゅるきゅる、と音がなる。

 カナタの腹の音だ。


(なんだかあっちは嫌だな)


 カナタ達は転進し、岩陰などに身を隠しながらも進んでいった。


 うっとカナタがかがみこむ。

 どうしたのだ、と周囲の者がよってくるとカナタはなんとも情けない笑いをにへらと浮かべ、そして靴を脱ぎ、足の裏をぐりぐりと押し始めた。


「あっちに行こうかとおもったんですけど、攣っちゃって。多分だめだと思います。向こう側がいいかも」


 全てはそんな調子だ。

 ラドゥ傭兵団の者達はカナタの“コレ”を知っているからいいが、他の者達は不安を表情のみならず、全身から発していた。


 しかし抗議はできない。

 今更な事であるし、なんといってもあのラドゥが黙ってカナタに好きにやらせているのだから。


 それに……


 傭兵達の一人、豪腕で鳴る巨漢がその瞳に戦慄の色を貼り付けカナタを見遣った。


(信じがたいが、なぜ俺達はこれまで魔軍に会敵していないんだ?すんなりとこんな所まで入り込んでしまっている。なんだ、このデブは…もしや、このデブは恐ろしい力を持ったデブなのか?)

本作は拙作内でクロスしてたりスピンオフが存在しています。

例えばイマドキのサバサバ冒険者は、Memento-Moriと同一世界観、時間軸ですが主人公や舞台が異なります。

サバサバ冒険者は西域、Mementoは東域での話です。作者ページより確認して下さい。


なお、イマドキのサバサバ冒険者とMemento-moriは両方同時に完結させます。

更に、両作品の最終盤では更新内容は同一となるかもしれません。


またそれぞれの話にそれぞれのスピンオフがあります。

例えば本作に登場する連盟術師ヴィリを主人公とした「白雪の勇者、黒風の英雄」や、黒金等級冒険者曇らせ剣士シドシリーズなど、本編よりカジュアルな感じで執筆しています。


また、ノクターンではイマドキのエチエチ冒険者というR18作品を書いています。

これは本編には一切関係ありませんが、シーン切り取りでAI画像などを使い、大人のシーンを書いたりしています。


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まだまだ沢山書いてますので作者ページからぜひよろしくお願いします。
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