台湾と南近畿地方の自転車観光事情
挿絵の画像を作成する際には「Ainova AI」と「AIイラストくん」を使用させて頂きました。
それはある日の昼休みの事だったの。
「へえ…楊ちゃんったらやるじゃないの!」
ゼミ友である台湾人留学生の王美竜さんが、スマホを見て素っ頓狂な声を上げたのは。
「見て、蒲生さん!高校時代の友達なんだけど、大学の休みに自転車で台湾一周を完遂したんだって。」
そうしてゼミ友が差し出してきたスマホには、私達と同年代の女の子が自転車の傍らで自撮りしている画像が表示されていたんだ。
「それは凄いね、美竜さん。でも台湾島って九州と同じ位の大きさでしょ?大学の休みで一周するにはハードじゃない?」
ところがゼミ友が言うには、案外そうでもないみたい。
どうやら環島1号線という台湾島をほぼ一周出来る自転車専用道路が整備されているんだって。
しかも道路沿いの休憩スポット等も完備されているから、その気になれば十日前後で台湾一周出来るみたい。
「私も高校時代に台南市の支線から入る形で日帰りサイクリングはしたけど、流石に大環島は時間的に余裕がなくてね…」
ゼミ友の口振りから察するに、自転車による台湾一周は割と人気のアクティビティらしいね。
大環島という自転車アクティビティは、私にとって初耳だった。
留学生の子と友達だと、こうして新しい見識が得られるんだよね。
「成る程なぁ、台湾は相当な自転車立国なんだね。」
「まあね、蒲生さん。でも私に言わせたら、この堺県立大のある南海高野線沿線もサイクルツーリズムに熱心な地域だと思うよ。堺東には自転車博物館があるし、河内長野にはサイクルスポーツセンターがあるじゃない。」
前者は自転車メーカーが営む博物館で、後者は自転車をテーマにしたアトラクションのある遊園地。
地元民だから「当たり前の存在」と見ていたけど、言われてみればどちらも確かに自転車文化の啓発施設だよね。
「それに堺市と藤井寺市の観光協会は、古墳群の散策にレンタサイクルを推奨してるじゃない。堺東とかに行くと、レンタサイクルで走っている外国人観光客をよく見かけるよ。」
「何しろ観光課も古墳巡りの周遊コースを設定してるからね。自転車なら効率的に古墳を回れるし。」
この何気ない一言を、ゼミ友は聞き逃さなかったんだ。
「それ良いね、蒲生さん!古墳群周遊なら休日一日で何とかなりそうだよ。」
「それなら一走り付き合うよ、美竜さん。私も地元の世界遺産をおさらいしたいし。」
留学生のゼミ友と一緒に、古墳群を目指してサイクリング。
そんな休日も、悪くはないだろうね。




