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二十二話 交渉

 レザードは飛竜の鱗を角度を変えながら、見つめていた。

 その行為に口を出さない。彼は商人であるし、商品になるものが本物かどうか見極める必要もある。


「少し削っても?」

「ええ、良いわよ。あんまり大きな傷を付けられるのは困るけどね」


 分かっています、と言って取り出した鑢で削って見るが、傷は付かない。

 そう言って他の物にも同じようにやってみるが、結果は同じ。


「良いものですね。本物の飛竜の鱗は久しぶりに見ましたよ」

「ええ、その鱗を百枚。とりあえず、買い取ってもらえないかしら?」

「どれぐらいのお値段で?」

「金貨袋を二袋でどうかしら?」


 この世界のお金の価値は、金銀銅の三種類。

 金が一番高くて、銅が一番低い。

 銅貨千枚で銀貨一枚、銀貨千枚で金貨一枚の換算である。

 金貨袋というのは大体金貨が百枚前後入った袋だ。

 鱗一枚が金貨二枚換算であるが、それをどう受け止めるのか。


「いいでしょう。ただ、全部確かめさせてもらっても?」

「もちろんいいわよ」


 レザードが後ろを振り返った。


「おい、お前たち、頼んだぞ」

「はい、レザード様」


 そう言って二人の少年が飛竜の鱗を受け取り、一つ一つ検分し始めた。


「大丈夫かしら?」

「ええ、私が大丈夫だと思っていなければ、レティシア様の前に連れてきませんよ」


 この男は本当に父親に似てきている。

 良い意味でだけど。


「これだけではないんでしょう?」

「ええ、もちろんよ。アルフレッド、あと二つ持ってきてくれる?」


 はい、と言ってアルフレッドが出て行った。

 次の品物はちょっと価値が付けにくいものであるし、今まで私たちにとっては価値はなくて捨ててきたものだったから判断に困る。


「楽しみですね、今までレティシア様がこうして売りに来ることは私が知る限り無かったですからね」

「そうかしら?」

「ええ、そうですよ。小さな、そうですね、旅の賃金になる程度の物はありましたが、こうして大口の取引は無かったので心躍りますよ」


 そうだったかと首を傾げるが、そうだったかもしれない。

 あまりお金が必要な旅でもないし、必要な場合は別の大陸に移動して魔物でも狩って魔石を奪ってくれば済んでいたわけだし。


「旅と違って、私達だけじゃなくてもっとお金が必要だから、かしらね」

「領主らしい振舞いですね、さすがレティシア様良く似合っておりますよ」

「レザードはさすがに上手ね」

「そんな事はありませんよ、いつも勉強させてもらってます。それにしてもアルフレッド様は随分時間がかかっていますね」

「そうね、時間がかかるものかもね。私自身、これにどれぐらいの価値があるか、上手く付ける自信がないわ」


 市場に出回ることがない品だ。

 こんなものを買うものはよほどの物好きか、それこそ城内で研究している人たちだろう。

 あの仮面の女が脳裏に浮かぶ。

 そう思っていると、アルフレッドが私の顔より一回り以上大きい魔石を持ってきた。


「これは……確かに、こんな大きさのものは見たことありません」


 レザードが腰を上げかけているが、私の前だからかそこに踏みとどまっていた。

 アルフレッドがそれを机に置いたところで、また部屋を出て行く。


「レティシア様、これは見事な魔石です。魔石なのですが、これは買い手が……」

「そうなのよね、だから、こういうのはどうかしら?」


 そう言って身を乗り出す。

 私が唯一提示できる取引先。


「アユム・レイエル・ナカハラって知ってるかしら?」

「ええ、もちろん。この国でその名前を知らない人はいないでしょう」

「私ね、今そのアユムと従属の契約を結んでいて、彼女に従属してるの」


 レザードに首元を見せる。

 そこにある首輪のような文様、これが従属の証だと説明しながら。


「そこで私がアユムに口を利いてあげるから、レザードが売るってのはどうかしら?」

「面白い話ですね。聞きましょう」


 目の奥が光った様な気がする。

 商人として勘なのだろう。色々と経験を積んできているわけね。


「普通ならこんな大きな魔石の使い道はないわ。装飾にするって言っても邪魔で、無骨で、見栄えが悪い。だけど、それ以外で使い道があるとしたら、研究機関ね」


 レザードが口を挟んでこないのでそのまま続けることにした。


「城内の研究機関で魔石は不可欠。これがないとこれ以上の発展はあり得ないし、帝国に対して切り札にはこれがないと無理なのよね」

「レティシア様は城内の事にも詳しいですね。どれぐらい奥深い情報まで知っているのでしょうか?」

「どれくらい知ってるか気になる?」


 二人で低く笑いあってると、視界の隅でサリーとソーニャが怯えていた。

 そうしていると、もう一つの品物をアルフレッドが机の上に置いた。


「目玉、ですか」

「ええ、こっちも普通では手に入らないものだからね」


 レザードが顎に手を置いて、深く考えている。

 私は一口また紅茶に口を付けた。


「値段、値段ですね。これにどれぐらいの価値を付けるかですね」

「そうね……」


 これが一番悩むところである。

 今まで見たことのない魔石。

 そして、この値付けがこれからのフィリーツ領の財布の中身を決めるのだから。

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