第14話 森賢熊との再戦
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魔法陣に乗って転移した先にはユッケの上にしがみついているミントと10人の緑の小人がいた。
ミントさんはガクブルと震えていて緑の小人はあわあわと慌てふためいていた。味噌汁ご飯とカレーは特に変わった変化がなかったので、見た目からしてカレーの配下だろう。
「おー、わりぃわりぃ。ちょっとたて込んでて遅れちまった」
「あー、特に気にしていませんが、ミントさんが小悪鬼達に怯えてしまって…」
「そうか、それはすまんかった!おい、お前らこっちに来い!」
「グギャッ!」
カレーが呼び掛けるとその場を離れてカレーの前に整列する。緑の小人は小悪鬼というようだ。それにしてもうまく教育されている。カレーも繁殖して配下にしたのだろうか。
「言ったよなぁ?怖がらせんなって!なんだ、その体たらくは!」
「グガッ!」
「なんだ?言いたいことでもあるのか?」
「グガッ、グギャガギャグガッ!」
「あ?挨拶しただけだぁ?挨拶でどうやったら怯えさせんだ」
「グギャッ、グギグギャ。グギギガグギャッ」
「うーん、そいつはぁしょうがねぇな…だが、しっかり謝ってこい!わかってんだろうな?分かりやすい行動だぞ?」
「「「「グガッ!」」」」
ゴブリン達は大きな声で返事をしたあと、ユッケとミントさんの周りに集まった。ユッケは堂々としていたが、ミントさんはそちらを見ようとしない。
「グガッグギギガッ!」
ゴブリン達は何かを言うと、土下座をした。
「ミントさん、彼らには悪気はなかったんだ。だから、彼らの方をみてくれ」
「ぃ…は、い…?…え?」
「彼らの顔は厳ついかもしれん。俺も言えたものじゃないけど、彼らは彼らなりに気を遣っているんだ。許してやってくれないか?」
「は、はい…」
不安そうにしているが、震えが収まっていたので、ミントは大丈夫そうだ。土下座したままの彼らに勢いよく何かがぶつかった。
「よかったなぁ!やればできるじゃねぇか!全くさすがは俺の子分どもだ!」
カレーは彼らに勢いよく抱き締める。カレーが熱い抱擁をしているなか、味噌汁ご飯は俺の背中に不時着していた。
「ごめんなさいねぇ、背中に乗せてもらっちゃって」
「いいですよ、卵よりも軽いですし。それにしてもカレーの子分は従順ですね」
「と言っても彼らは強者であるカレーに憧れてるだけなのよね」
「それはどういうことですか?」
「ゴブリンはね、同族の強者に惹かれる習性があるのよ。元々彼らはエリアボスの部下だったんだけど、カレー炒飯がボスゴブリンを1対1で倒してね」
「へぇ、俺から見ても結構好かれてるように見えますよ」
「あれはカレーの性格があぁしてるのね」
「そうですね」
なんなんだろ。明らかに子分達に味噌汁ご飯が嫉妬してるんだが、どうすればいいんだろう。ん?ユッケがこっち見てるな。なになに?「もう行くぞ、カレーを置いて」
「そろそろ行きませんか?カレーを置いて」
「え、あー?そうね。邪魔しちゃ悪いものね」
カレー達が意気投合して円陣組んでいたのを尻目に、カレーが用意していた魔法陣に乗って移動する。それに暇すぎて寝かけていたフウマ達がのんびりと着いてきた。
転移する際に「うおおおおぉーっ!!」と歓声が聴こえてきたが、カレーが着いてきていなかったので、奴は放っておこう。
「惜しい人を亡くしたわ」
「そうですね…」
俺と味噌汁ご飯は魔法陣の方を見て、目元を押さえる。無形粘体に目元があるのかは俺にはわからないが、ここは突っ込むべき箇所ではない。
「熊さん討伐の作戦がちょっと変えようか。本来は正攻法で倒す予定だったが、八雲を要とした作戦に変えるぞ」
「俺が前倒した時みたいにやればいいのか?」
「そうだな、ただしできなかった場合は味噌汁ご飯が無形粘体の体で拘束した後、味噌汁ご飯ごと糸で拘束してくれ。その後、切れ目から味噌汁ご飯は脱出してもらいます」
「わかったわ。糸で拘束した後の攻撃はどうするの?糸はベトベトして物理攻撃は無理よ?」
「糸は物理的な斬撃や刺突には弱いので、味噌汁ご飯とミントさんには硬い糸でコーティングした魔糸の木杭で攻撃してください。もしくは刺突の魔法を使ってください」
「わ、わかりました」
「わかったわ。ユッケは何するの?見学かしら?」
「俺は拘束の際の囮役と爪による攻撃をしますよ。作戦はこんな感じでお願いします」
「わかったわ。空腹度を回復したら行きましょ」
空腹度の回復は俺が腐るほど拾った、賞味期限が近そうな蜜木苺を渡す。賞味期限が近いと空腹度の回復が多少低くなることがわかった。このゲームではトイレというシステムはないので腹痛にはならない。
「準備はいいかしら」
「は、はい」
「あぁ」
「はい」
エリアボスのエリアに近づくと、『ヴェルダンの縄張り主と戦いますか?』それとも『通りすぎますか?』と出てきたので『戦う』と押す。すると配下とパーティーを組んだ状態になって、周りの状況が一変する。
目の前には大きな熊、森賢熊がすやすやと穏やかな寝息をたてて寝ていた。熊さんは毎回始まりは寝ている。寝ているときは可愛いのに起きたら化け物呼ばわりである。
「作戦通りやってくれよ、八雲」
「りょーかい」
器用に敬礼の構えをするとフウマ達も真似をする。それから散らばって熊さんを囲い、まずは地面に糸を飛ばし熊さんに糸を飛ばす。手触りがいいが、柔らかさの違いだけでベトベトする糸だ。息苦しくならない限り気づかないだろう。
頭だけは出したままにして周りの木とも糸を繋げていく。それを唖然として見るだけの三人を放置して、さっさと獲物の動きを封じていく。未だにすやすや眠るだけの熊さんにはこの状況が理解できないだろう。
「こんな感じであとは頭を覆ったら完成だ」
「あ、そ、そうね。それにしても全く気づいてないわね?なぜかしら?」
「多分ですが、糸は本来獲物を捕らえるためのものであってダメージを与えるものではありません。寝ている熊に布団をかけてあげただけということでしょう」
「さ、さっきよりも心地よさそう…です」
「もう少し頑丈に巻いて頭だけ出しておくのはどうだ?頭は急所だし、目潰ししたら動きも鈍くなるだろ」
「いいけど、動物虐待みたいで可哀想だな」
「それを言ったらこいつだって殺戮熊さんだぞ」
「あと、俺的には糸に血を染み込ませたいから頭まで覆いたいんだけど…」
「熊の血染めの服でもつくるのか?」
「血を染めると魔糸が変化するんだ。効果はわからないけど、エリアボスだしいつか使えるようになるかと思ってね」
「なるほどな、それは少なくともお前にしかつくれないだろうな」
「と言ってもルカさんの寝具と木杭ぐらいしか作ってないけどね」
「あら、それは私が欲しいわね。ユッケから防具を作るように頼まれてるの。肌触りのいい防具なんて素敵じゃない」
「じゃあ八雲、頭も覆ってくれ」
「あ、うん」
すやすや気持ち良さそうに眠る熊さんに糸を張り付けていく。熊さんはうっとおしいのか首を振るが、糸はさらに絡み付くだけ。ようやく起きた熊さんだったが、身動きがとれず口も開けられない。
「なぁ」
「ん?どうした?」
「俺達は何をしに来たんだっけ?」
「熊さんの捕獲だろ?」
「捕獲だろ?じゃねぇよ!こんなんエリアボス戦じゃねぇよ!もっと苦戦したり汗水握る接戦しろよ!」
「いや、だってしょうがないじゃん。熊さんだって戦いたくないかもしれないじゃん」
「こんな状態じゃ戦いたくもないわ!」
「まぁいいじゃない。簡単に倒せるなら倒せるで。はやく終わらせてカレーを笑ってあげましょ」
「そうですね…はやく倒しましょう」
熊さんに味噌汁ご飯とミントが魔糸の木杭を突き刺し、ユッケは糸を切り裂いて露出した部分に噛みつき、俺達蜘蛛は両前脚で殴り続けた。爪術と筋力上昇のスキル上げにちょうどいい。
「熊サンドバッグ」
「黙ってやれ」
「へいへい」
《森賢熊フォレストベアを討伐しました。》
《レベルアップしました。》
《レベルアップスキルポイント10SPを獲得しました。》
《レベルアップステータスポイント20JPを獲得しました。》
《PM専用報酬:森賢熊の椅子、森賢熊の手袋、森賢熊の着け耳、生存ポイント500P,スキルポイント5SP,ステータスポイント5JP》
熊さんがただのサンドバッグになってから数十分後、熊さんは力尽きた。解体は一番レベルの高いユッケがやった。魔糸は俺が回収し、後程味噌汁ご飯に渡すことになった。
解体で出てきたものは全員に公平に出てくるため、揉めることはないが、お互いに欲しいものが違ったりすると、その場で取引したりする場合がある。
熊さんの報酬は初めてじゃなかったため、称号はなかったが、生存ポイントとスキル・ステータスポイントは半分もらえた。熊さんの家具シリーズはこれを見る限り二種類だけではなかったようだ。
しかしよく考えてみてくれよ。蜘蛛の俺が熊の手袋とかつけられないよね?耳もだけど着ぐるみもダメだった。じゃあこれを誰に着せるかだ。PM報酬が拠点内で使うものと考えれば…はっ!?まさか…これをルカさんに着せろってことなのか。
案外ノリノリで着てくれるかもしれん。それはそれで楽しみだな。無理だったら人型のPMにやるしかできんな。
「八雲何もらった?」
「んー?椅子と手袋と着け耳だな」
「ランダム報酬か…俺は熊鍋セットとぬいぐるみと机だな」
「熊鍋セットってなに?つくって食べろってこと?」
「そうだな。でもこれ…熊肉と野菜しかないんだが…」
「鍋は?」
「ないな、味噌汁ご飯にでもつくってもらうか」
スライムに鍋作らすとかどんな拷問?これ全部揃えたらどうなるんだ?コンプリート報酬なんてものがあるなら周回しないといけないぞ。
「ミントちゃんは何が出たのかしら?」
「わ、私は剥製とぬいぐるみと…頭の被り物?」
「私と全然違うわね…手袋と木彫りの熊と着ぐるみだわ。これ一体何種類あるのかしら?八雲の拠点には剥製と絨毯があったはずよね?」
「そうですよ。これ周回しないとだめそうですね」
「なぁ八雲、もしかしてあの砂塵地虫も何種類も家具があるのかな?」
「あるんじゃないか?」
「うわぁ…行きたくねぇ…」
「実用的でいいんじゃないか?」
「見た目さえ良ければな」
この家具シリーズを集めに来るだけでレベルが上がってスキルも上がるという一石二鳥の周回をする価値がある。ただし俺が相手をすると毎回熊さんが悲惨なことになる。
「レベルが上がったんならステータス振っとけよ。これからが本番と言っても過言じゃねぇんだからよ」
「はーい」
《主人公のステータス》
名前:八雲
種族:小蜘蛛
性別:男
称号:【ヴェルダンの縄張り主】【格上殺し】【森賢熊討伐者】【エリアボスソロ討伐者】【蜘蛛主】
配下:小蜘蛛10匹
Lv:12(+2)
HP:250/250(+5×10) MP:250/250(+5×10)
筋力:15(+2) 魔力:31(+3)
耐久:13(+3) 魔抗:22(+2)
速度:28(+3) 気力:20
器用:31(+1) 幸運:10(+1)
生存ポイント 所持:500P(+500) 貯蓄:3073P
ステータスポイント:0(+25-25)JP
スキルポイント:60SP(+15)
固有スキル
【糸生成Lv23(+2)】【糸術Lv23(+1)】【糸渡りLv19(+1)】【糸細工Lv4】
スキル
【繁殖Lv2】【夜目Lv12】【隠蔽Lv12】【気配感知Lv10】【魔力操作Lv21(+2)】【識別Lv7】【風魔法Lv3】【魔力感知Lv9(+1)】【思考回路Lv1】【投擲Lv2(+1)】【解体Lv5(+1)】【魔力上昇Lv1】【爪術Lv3(+2)】
《演技派の子蜘蛛のステータス》
名前:風魔、水魔、炎魔、土魔
種族:小蜘蛛
主君:八雲
配下:魅風,魅水,魅炎,魅土
Lv:13(+3)
HP:200/200(+5×10) MP:400/400(+15×10)
筋力:17 魔力:30(+5)
耐久:17 魔抗:22(+3)
速度:19 気力:20(+2)
器用:25 幸運:10
ステータスポイント:0JP(-30)
スキルポイント:40SP(+15)
固有スキル
【糸生成Lv13(+3)】【糸術Lv10(+2)】【糸渡りLv10(+2)】【糸細工Lv1】
スキル
【繁殖Lv1】【採取Lv4(+1)】【夜目Lv7】【隠蔽Lv8(+1)】【気配感知Lv7(+2)】【魔力操作Lv10(+2)】【魔力感知Lv3(+1)】【思考回路Lv1】【風魔法Lv1,水魔法Lv1,火魔法Lv1,土魔法Lv1】【裁縫Lv4(+1),調合Lv1,鍛冶Lv1,細工Lv1】【解体Lv6(+2)】【魔力上昇Lv1】【爪術Lv4(+3)】
※4匹のステータスに違いはあるが、とりあえずは同じようなものとします。
《甘えん坊の子蜘蛛のステータス》
名前:黒魔,白魔
種族:小蜘蛛
主君:八雲
Lv:10(+3)
HP:210/210(+5×10) MP:280/280(+5×10)
筋力:14(+3) 魔力:23(+3)
耐久:17(+3) 魔抗:18(+3)
速度:20(+4) 気力:17(+2)
器用:22(+2) 幸運:10
ステータスポイント:0JP(-30)
スキルポイント:15SP(+15)
固有スキル
【糸生成Lv9(+3)】【糸術Lv7(+2)】【糸渡りLv7(+3)】【糸細工Lv1】
スキル
【繁殖Lv1】【採掘Lv4(+1)】【夜目Lv3(+1)】【隠蔽Lv4(+1)】【気配感知Lv1】【魔力操作Lv4(+2)】【魔力感知Lv4(+2)】【思考回路Lv1】【闇魔法Lv1,光魔法Lv1】【解体Lv4(+2)】【魔力上昇Lv1】【速度上昇Lv1】【爪術Lv3(+2)】
《孫蜘蛛のステータス》
名前:魅風,魅水,魅炎,魅土
種族:小蜘蛛
主君:八雲
Lv:10(+3)
HP:300/300(+10×10) MP:200/200(+5×10)
筋力:27(+5) 魔力:12
耐久:25(+5) 魔抗:11
速度:25(+3) 気力:11
器用:24(+2) 幸運: 5
ステータスポイント:0JP(-30)
スキルポイント:25SP(+15)
固有スキル
【糸生成Lv4(+1)】【糸術Lv4(+1)】【糸渡りLv5(+2)】【糸細工Lv1】
スキル
【繁殖Lv1】【採掘Lv5(+2)】【夜目Lv4(+1)】【隠蔽Lv1】【気配感知Lv3(+2)】【魔力操作Lv4(+1)】【魔力感知Lv1】【思考回路Lv1】【風魔法Lv1,水魔法Lv1,火魔法Lv1,土魔法Lv1】【裁縫Lv1,調合Lv1,鍛冶Lv1,細工Lv1】【筋力上昇Lv3(+2)】【爪術Lv4(+2)】




