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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン内閣府発足

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緑の猫魔族

前回のあらすじ

港町モンアードでの交渉を終えて、ブールボン王都へとやってきたワド達。

サブロワに案内されて孤児院で4人の女性を勧誘。

その後、ロアンヌちゃんに遭遇し、宿に泊まる事になりました。

 食事を終えて、近所にある温泉へと向かった。


 温泉に浸かっている間に【伝心】(    )でエリーゼとルマンド君の交渉の様子を確認したよ。

 講師&貴族候補に、ロワイトが名乗りをあげているみたい。

 エリーゼが大人の対応をしていて「一度、国に持ち帰って検討してから折り返しますわ」だとさ。ルマンド君がその返事と変貌ぶりに一番驚いていたね。


 ルマンド君は高級品のお酒を、踏み絵として利用するとエリーゼに話していた。

 エリーゼとアルが僕の国の幹部にいるから、繋がりをアピールする必要はないらしい。ホリター公爵家の秘薬はそこそこ知れ渡っているので、お酒を振る舞う場を整えてすんなり飲むかに使うみたい。

 秘薬の情報を持っていない、又は後ろ暗い事が無ければ飲めるだろうけど……飲めなかった人の末路がちょっと心配。


 ルマンド君から観光案内する貴族は、カーボス伯爵という人を推薦された。そちらは来年招待する流れになったみたい。


 翌朝、リゼ達と一緒に朝食を食べた。前回は頭真っ白で何食べたか忘れていたけど、今回はしっかり堪能したよ。

 ラピ◯タパンと、大きな大根が印象的なポトフだった。ポトフはひき肉が入っていて、それの味が染みた大根は絶品だったな。

 格安の宿過ぎて申し訳ないので、リゼに心付けを渡すように頼んだら、15000カロリも渡してちょっとした騒ぎになったね。ロアンヌちゃんは下心丸出しで喜んでいたけどさ。


「ワールドン様~また来てね!私、一生懸命サービスするから、お小遣いまた頂戴!弟達に色々買ってあげたいから嬉しいよ!」


 ロアンヌちゃん達に見送られながら宿を後にする。

 そのまま空輸邸のある広場まで来たんだけど、そこにロワイトが見送りに来ていた。


「ワールドン様、この老骨がお力になれるのであればいつでもお申し付け下さい」

「カーボス伯爵だっけ?彼と来年遊びに来てね!」

「勿論です。それからこれを……」


 ロワイトが手紙をスッと渡してきた。


「これ何かな?」

「ルクル殿にお渡し下さい」

「僕が今みたらダメなの?」

「お見せするかどうかの判断を、ルクル殿に委ねたいと思います」


 うーん、気になるけど小難しい事を書いてそうだし、後でルクルから要件まとめだけ聞けばいいか。

 いつものドラゴン形態で空輸邸の運搬をする。光ガードはちゃんとしたけど、リゼが凄い勢いで撮影していた。リゼもローアングラーなのが気になるな。

 猫魔族の国につく頃には日没間近だった。

 前回も降りた水辺に降りたんだ。でも空輸邸を着水させたら、水がほとんど溢れ出てしまったよ。


(ちょっと失敗したかも?)


 薄暗い中、近寄ってきた猫魔族に声を掛けられた。


「ワールドン様、お久しぶりですにゃん!」

「カルカンの妹の……トスィーテちゃん?久しぶり!」

「今は緑のインビジブルドラゴン様もいらっしゃるのですにゃん。……既に変化も覚えられて語学を勉強中ですにゃん!」


 僕は、リゼとリッツを紹介した。


「はじめまして、リゼと言いますの」

「あたしはリッツ!11歳だよ!よろしくね!トスィーテちゃんは何歳?」

「ちょうど誕生節にゃん。18歳で成人になりましたにゃん!」


 僕もリッツも驚いた。

 だってトスィーテちゃんは、リッツよりも10cmは身長低いし、声も幼くて可愛いから。


「そっか~、あたしより年上かぁ~」

「トスィーテちゃんは僕より年上なんだね」

「「えっ!?」」


 あれぇ?トスィーテちゃんとリッツはめちゃ驚いている。僕、何度も17歳って説明しているのになぁ。【伝心】(    )で読み取ると2人とも僕のジョークだと思っているみたいだけど、僕は至って本気だよ!


「ワールドン様ったら冗談キツいにゃん。国まで案内しますにゃん」


 トスィーテちゃんの案内で、猫魔族の国に入国手続きして入った。

 お、土下座跡が綺麗に修復済みだよ!良かった~、なんか犯行現場みたいで落ち着かなかったんだよ。


(ん?なんかルクルの「みたいじゃなくて犯行現場」ってツッコミが聞こえたような……空耳かな?)

 今夜はカルカン&トスィーテちゃんの家に泊めて貰う事になったよ。家には緑がいた……っていうかさ、その見た目……


「よ!ワールドン!いやー変化はいいな~にゃん!」

「いや……え……と、緑?その姿は?」

「トスィーテがちょうど良かったから、トスィーテにしたんだよ、にゃん!」

「てか……その喋り方……」

「猫魔族の雌はこの喋り方なんだな!にゃん!」


 超絶渋い声と見た目がミスマッチ過ぎて、見た目詐欺感がハンパない。萌え力は逆に下がるヤツだよコレ。

 そこには毛と瞳を緑色にした、トスィーテちゃんに瓜二つの緑が居たよ。そりゃ性別無いけどさ、声からしたら男性選ぶべきじゃない?そんな事を考えていたら、緑から相談が持ちかけられた。


「でさ、ワールドンにお願いがあるんだ!にゃん!」

「うん。お願いは聞くけど、その語尾はやめない?」

「ダメだとさ!にゃん!これつけないと土下座ってのが落ちるって言い伝えがあるんだ。知らないのか?にゃん!」


 よ~~く知っているよ?

 その語尾も【土下座】もね。寧ろ心当たりしかないよ?

 緑は気にしていない様子で相談を続けてきた。


「カッコイイ名前と一人称をくれ!にゃん!」

「え?なんで?」

「金だけワールドンなんてカッコイイ名前ズルいだろ?にゃん!それとさ、似合う一人称を決めかねてるんだ!にゃん!」


 あーーーもう!語尾の残念感が凄まじいなオイ。ってか僕にネーミングセンスは無いよ?

 仕方ないのでルクルに【伝心】(    )で相談した。


『ねえルクル、ちょっと相談あるん』

『うわぁー!?いきなり頭の中に声が!ってワドかよ!ってどこから伝心してるのー?』

『猫魔族の国からだよ。伝心は距離も関係ないって知ってるでしょ?』


 トイレのまっ最中に【伝心】(    )してしまったようだ。遠距離だとこういう弊害あるのか……大の途中の感覚を読み取ってしまった。香りもリアルだよ(シクシク)


『泣きたいのはコッチ!で、なんなんー?』

『インビジブルドラゴンの緑に名前と一人称を与えてやって欲しいんだ』

『ふぇ?』


 混乱しているルクルに詳細を説明した。猫魔族の見た目になっちゃった事とか、ドラゴンの時にインビジブルドラゴンと呼ばれている事とかを丁寧に。

 流石にトスィーテちゃんの見た目になった事だけは伏せた。知り合いの猫魔族の見た目になったとは言い難いから。


『インビジブルドラゴンかぁー……じゃあさ、ガトーとかどう?』

『お、カッコイイね』

『一人称は猫魔族だから、吾輩とかで良くないー?』

『何か有名なの?』

『有名だよー。昔、10カロリだった人だしさー』


 僕はルクルとの相談を終えて、さっそく提案した。


「名前はガトー、一人称は吾輩でどうかな?」

「お、カッコイイ名前!良いな!にゃん!吾輩も渋くていい感じだな!にゃん!」

「気に入ったなら良かった。で語尾は……」

「吾輩はガトーという名前だ!にゃん!」


 くっ……やっぱ語尾つけんのかい!

 カッコ良さと渋さと可愛らしさと、ついでにあざとさが相まってカオスが極まるよ。

 トスィーテちゃんからもう少し【にゃん】を自然につける指導が入ったよ。

 僕はもう知らない。僕、悪くない!


─────────────────────


 そんなやり取りの後、皆で食事を摂ったよ。

 緑は大学芋風のお菓子が大好物らしくて、今夜も食卓に並んでいたんだ。苗のお礼にルクルからレシピが伝わったみたいだ。ゴマは高級品らしくて使われていないけど、それ以外は完璧に大学芋だったね。

 皆が寝静まった後、夜中はずっと緑の愚痴に付き合ったよ。


「いやー猫魔族の雌に変化したらさ、みんなが似合わねーと思ってるみたいで変えたいのに変えられなくってさー、にゃん」

「ああー、僕も変えられなくて後悔した記憶あるよ。でも慣れたよ、要は慣れ」

「変えられないなら先に言えよなーにゃん」

「わかりみが深い」


 変化が一度定着したら、変えられないのは不便過ぎるよ。うんうん。


「猫魔族の国は、森林に囲まれて空気が綺麗で臭くないんだ、にゃん」

「そいや、鉄道の匂いが嫌だって言ってたね」

「そうなんだよ。ここすげー居心地が良くって早く教えて欲しかった、にゃん!」


 猫魔族の国は気に入ったみたいだよ?


「それからワールドンばっかりズルいぞ!スイーツめちゃうまーじゃねーか!にゃん!」

「体がちっさくなってからの楽しみの1つだよね。スイーツは他にもオススメあるよ!」

「マジかよ!ズルいぞ!もっと早く教えてくれても良かっただろー?にゃん?」


 僕が先に、色々と楽しんでいた事を妬まれた。でも、僕にそんな事言われても困るし?


「僕の国に来た時にご馳走するよ。あと温泉とかレジャー施設もあるし、ボドゲもあるんだ」

「おう!さっさと伝心で見せろ、にゃん!」


 おぅ……ドスが聞いていてまるでヤ◯ザな猫だよ、Vシネマだよ。だけど最後のにゃんで台無しだよ。


(さっそく共有するにゃん!ってなんか口調が移るんですけど?)


「ウォータースライダーいいな!やりたいにゃん!」

「結構マナ力場の微調整が難しいんだよ?軽すぎると滑らないしさ、重いと壊しちゃうし、特訓したんだ!(ドヤァ)」

「吾輩も特訓するぞ、にゃん!あと温泉のとこのサウナが気になるぞ、にゃん!」

「サウナは色々アロマが選べるんだよ?(ニヤリ)」


 2人でキャッキャッキャッキャッと騒いでいたら、もう明け方だったよ。

 額に青筋立てたトスィーテちゃんから説教された。


「お二人共、昨夜はお楽しみでしたのにゃん?女子会オールではしゃぐ時は声の音量に気をつけるにゃん!」

「「ごめんなさいにゃん」」


 普段、真面目な娘が怒ると怖いんだな。僕、学習したよ。それにしても……



(一晩で口調移ったにゃん。汚染力が高いにゃん!)



語尾に関しては全面的にワドのせいですね。

それにしても、トスィーテちゃんのマジギレはこの比じゃなく怖いのですけど……ワドはそれをまだ知りません。


次回は「新しい先生」です。

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