孤児院の姉妹達
前回のあらすじ
ワドはルクルからの外回り依頼を、リゼとリッツの3人で回っています。
モンアードとの交渉はかなり上手くいきました。
モンアード君との交渉は無事に終わったよ。
高級品のルクル特製お酒各種は、概ね好評だった。
モンアード君が試飲している時に【伝心】してみたら、来客の歓待で僕との結びつきをアピールするのに使うみたいだ。
僕らは既に話し合いを終えて、宿への帰路についている。帰りがけにエリーゼと反省会を行っていた。
「ワールドン様!今日のわたくしは、大臣として相応しく振る舞えてましたか?」
「うん。ちゃんと出来てたよ」
「わたくし全力で一生懸命頑張りましたわ!」
ルクルとの秘密特訓の成果が出たのか、エリーゼは国の代表として本当に頑張っていたと思う。
ふと気になった件を聞いてみた。
「平民女性の勧誘の話をしなかったのはどうして?」
「貴族の殿方に、平民女性についての話題をふっても意味が無いと思いましたわ!」
「確かにそうだね。それでどうするの?」
エリーゼはビッとある建物を指差した。
確かあの建物は役場だったような記憶……そういえば役場ってまだ入った事無かったな。僕は興味津々で質問した。
「あれって役場だよね?僕、入った事ないんだ!(ワクワク)」
「既にリッツを先行させてますわ!」
「だからモンアード君の屋敷に来なかったのかぁ。ちなみに役場で何するの?」
エリーゼの話を聞いた所、役場は結婚相談所のような機能まであるらしい。僕が期待していたような魔獣退治の依頼などは無いとの事。
救援要請を役場で受け付けて、領主判断で出兵する流れだそうだ。あとは傭兵団のクランに直接話を持っていくとかになるってさ。
説明を受けながら役場に入った。
僕は物珍しくて、キョロキョロと辺りを見回す。どうやら依頼が張り出されていたりはしないようだ。依頼などは受付の奥の方で、綺麗に整理整頓されているみたい。受付では行列待ちにならないように、整理番号の札が配られる。札の番号が呼ばれるまでは、長椅子に座って待つらしいよ。
長椅子に座っていたリッツに話しかけた。
「リッツ、お疲れ様」
「ワールドン様、エリーゼお姉ちゃん。結婚相談の依頼は幾つかあったけど、国の移動となると難しいかもだって」
まぁーそうだよね。港町モンアードは善政が敷かれているし、出ていきたいって女性はいないかな。親兄弟とも離れる訳だし。
手続きを終えたエリーゼがズバッと言い放つ。
「依頼を出したのですわ!では次に行きますわ!」
それからエリーゼに先導されて孤児院を訪問したよ。港町モンアードでは孤児を養子にとる事が推奨されているらしく、女の子は赤子くらいしか居なかった。仕方ないのでモンアードでは諦めて、ブールボン王都へ移動する事にしたよ。
「それでは御前失礼致しますわ!」
エリーゼは睡眠薬で早めに寝たようで、夕方だけどこれから出発する。明日の夜遅くにつく予定の、丸一日とちょっとの空旅だね。
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秋の景色を堪能しつつ、スピードを出し過ぎないように調整する。
山脈を通っても緑の気配は無かった。
(そういや猫魔族の国に行ってるんだっけ?)
猫魔族の国は、ブールボンの後に行く予定なので、もしかしたら会えるかもと考えていた。
遠目にブールボン王都が見えてきたけど、陽が沈んで辺りはもう真っ暗で、王宮の灯りだけが目印だったよ。ついでに雨も降ってきた。
ずぶ濡れ姫と呼ばれるほどに毎日水浸しの日々だけど、別に好んで水浸しになっている訳じゃないからね?
僕は少しだけスピードをあげた。
「ワールドン様、お風呂の用意は出来ております」
事前に連絡はしていたんで、ルマンド君が出迎えてくれたよ。雨が降ったからお風呂の用意をして、早めに待っていてくれたみたい。
空輸邸を広場に置いて、メタモルフォーゼ&着衣する。従者の案内に従って、リゼとリッツもお風呂に移動したよ。
一緒にお風呂に入ったんだけど、リゼがずっと僕をチラ見していた。流石に光ガードは無粋なので、今回は泡ガードにしといたよ!やっぱりお風呂の三大ガードの泡・湯気・光は鉄板だよね。湯気や光は青い光線で消えちゃうけど、石鹸の泡は消えにくいのだ!
(ふふん、僕も学習したのさ!ドヤァ)
あと、3人で浸かったお湯は金色になっちゃった。
疲労回復に良いらしいから、ちょっと採ってルマンド君にプレゼントしようとしたら、リゼに止められたよ。なんでだろ?
明けての早朝からエリーゼは全力行動だった。
「ワールドン様!お兄様と交渉してきますわ!こちらで朗報をお待ちになって下さいませ!」
ドドドドドドドド……!
屋敷の廊下が大変な事になっている。見なかった事にしよっと。
僕とリッツは朝御飯をゆっくり食べていて、その時にリッツから爆弾発言を聞いた。
「あたし、リゼお姉ちゃんに宣戦布告したよ!」
「え!?リゼに?なんでどうして?」
「これは女の戦いだから、お姉ちゃん相手でも負けられないの!」
リゼとリッツじゃ戦闘力に違いがありすぎて勝負にならないよ?僕が何度もやめるように諭しても、リッツは「絶対に戦うのはやめないよ!」と聞いてくれないんだ。
……ドドドドドド!
「ワールドン様!お兄様の説得完了ですわ!さあ、次は町に行きますわ!」
バンと扉を開いて、エリーゼが唐突に今日の予定を宣告した。どうでもいいけどさ……ノックしようよ?いや、どうでも良くないね。
「エリーゼ、ドアはノッ……」
「ワールドン様!い・き・ま・す・わ!」
「はい」
エリーゼの圧に押されて、すぐにドナドナされたよ。牛じゃなくてドラゴンだけれども。
なので、馬車に乗って大通りまで移動した。
それから徒歩で大通りを歩いていると、見知った顔を見かけたよ。
「やあ!サブロワ君、久しぶりだね」
「ワールドン様!国を興されたんですね!神託を僕も聞きました!」
「今日はロアンヌちゃんは一緒じゃないの?」
サブロワ君は僕らを見かけるなり駆け寄ってきて挨拶してくれた。丁寧なお辞儀での挨拶が良かったのか、隣のエリーゼも満足げだよ。
「今日は僕1人で、孤児院に差し入れに行く所です」
「まあ!ちょうど良かったですわ!そこの礼儀がわかっている少年。案内しなさいな!」
エリーゼが案内するように圧をかけている。
サブロワ君はもう一度丁寧なお辞儀をして了承してくれたよ。
「はい。喜んでワールドン様を案内させて頂きます。案内できて……とても光栄です!」
「まあ!……少年、貴方のお名前を聞きたいわ!」
「サブロワと言います」
「サブロワ……覚えましたわ!」
エリーゼはめちゃご機嫌だった。自分から平民の名前を覚えようとするなんて、初めてじゃないかな?
【伝心】で読むと、平民の僕に対する接し方には不満があったみたいだけど、サブロワ君は僕への敬意が見て取れるから合格点みたい。
サブロワ君に案内されて孤児院へやってきた。
エリーゼがワールドン王国への移住希望の女性がいないか打診している。衣食住は保証すると力説していた。
その甲斐あって姉妹が移住を希望したよ。
名前はシーナとメル。15歳になると孤児院を出なければならないらしく、姉のシーナは15歳なのでそろそろ出ないといけないとの事。
「私達、碌な仕事出来ないけど、大丈夫?」
「大丈夫ですわ!簡単な仕事もありますわ!自分に向いてる仕事を探して良いのですわ!」
「妹と離れ離れにならない?」
「お約束しますわ!」
一緒に暮らせると回答が得られて、姉妹は明らかに安堵の表情を見せた。姉は文字通りに胸を撫で下ろしている。そのやり取りを見ていると、背後から声を掛けられた。
「姉妹で一緒に居られるなら、私達も行きたい……」
別の姉妹も希望してきたよ。
名前はアンとマーデル。年齢は14歳と13歳だから孤児院をすぐに出る必要は無いけど、養子で別々に引き取られる可能性があるらしい。2人は一緒に居たいとの事だ。
それにしてもアンは14歳とは思えないほどに発育が良いね。所謂ロリ巨乳ってやつだ。この娘は絶対にモテるだろうなぁ。
「勿論歓迎しますわ!ワールドン様は慈悲深い御方ですわ!姉妹で暮らせる住居を与えて貰えますわ!」
「「「ありがとう」」」
4人も来てくれる事になった。初回の勧誘としては上々の出来なのでは?と思う。
エリーゼが結果を出せた事は、自分の事のように嬉しかった。
その後はサブロワ君が王都を案内してくれたよ。
リッツは、サブロワ君にやたらとお姉さんぶっていたね。いつもは年上に囲まれているから、その反動なのかも?
リッツが和気藹藹としていたのは、ロアンヌちゃんが現れるまでだった。ロアンヌちゃんは相も変わらず本音駄々漏れ娘だったよ。
ーーーロアンヌちゃん遭遇VTRーーー
「ワールドン様!国王様になったの?」
「うん。まぁね」
「わーい!じゃあ、いっぱい私の宿でお金使ってね!今日は孤児院の女の子多いね!」
「僕の国に移住してくれる娘達だよ」
「わあ~!ルクルのお嫁さん候補多いなぁ。私も婿に狙ってたのにぃ!玉の輿だもんね。皆狙うよ?アンは巨乳だし、ルクルはアッサリ落ちちゃうなー」
「え?そうなの?」
「だって私が誘った時、腕に胸を押し当てたら満更でも無さそうだったよ?絶対におっぱい大好きだよ!」
「~~~~~っ!それほんと!?」
(ヤバいヤバいヤバい大量にライバル増えてる!リゼお姉ちゃんと相談しなきゃ……)
ーーーロアンヌちゃん遭遇ENDーーー
その時、リッツに電流走る……って感じだったね。
何をそんなに焦っているんだろう?
それにしてもリゼと戦闘するのに相談もするのか?
【伝心】で覗いても「ヤバいよヤバいよ」しか読み取れなくて、なんかめちゃ焦っている事だけは分かった。
僕らはその夜、ロアンヌちゃんの宿でお世話になったよ。晩御飯を以前も食べたのでリクエストしたら、おばあちゃんは笑顔で応じてくれた。
(……この料理、やっぱり美味しいや)
その家庭料理の美味しさは……おばあちゃんの愛情だと思います。
次回は「緑の猫魔族」です。




