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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン内閣府発足

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建国の挨拶回り

前回のあらすじ

ワドは生まれて初めての人生相談を受けて、それを立派に果たしました。

それを褒めるついでにルクルから外回りの仕事を積まれました。

ワドはリゼと二人きりで旅ができるのか?

 建国の挨拶回りをかねてモンアード君、ルマンド君、猫魔族の国王殿に会いに行く事になった。

 今回、ルクルから以下の課題が出されている。


─────────────────────

・学校の講師を任せられる人を召請する。

・移籍してくれる貴族候補の選定。

・特産品を贈って反応を見る。

・平民の独身女性を数人召請する。

・これらをエリーゼに任せる事。

─────────────────────


 まず学校を作る為に講師は必要だ。

 エリーゼやリゼに頼っている状況から脱却しなければならないのよね。

 それに貴族に対する最低限のマナーを、教えられる人で無ければならない。任せられるに足る人格も求められるので、そこそこ難易度が高いんだ。


 次に、対外折衝が行える人材不足の解消だ。

 貴族が相手になる事が多い為、貴族が望ましい。だけど、僕の国は深刻な貴族不足になっている。

 早く誘った方が良いと僕は言ったのだけれど、ルクルには却下された。現時点で移籍を望む相手は、余程の窮地にある没落貴族か、間者である可能性が高いとの事だよ。


 現時点から候補の当たりをつけておいて、2年後辺りに招待出来ればと言っていた。その間に観光に来てもらい、僕の国が移籍に値するか判断してもらう。それは同時に国民から見て、その貴族が来てもらうに相応しい人物か見定める機会でもあるとの事だ。

 どちらにしても焦ってはいけないと言っていたね。


 特産品を贈るのは、友好を示すのと来年以降の輸出へのアピールだ。

 特産品に対して相手がどの程度の価値を見いだしてくれるかを事前リサーチする事も兼ねている。

 この辺りは僕の【伝心】(    )での読み取りを期待されていた。どのように活用するか考えるように会話を誘導して、貴族間での利用価値を読み取る重要な役割だ。


 そして平民の独身女性について。

 これは、現在の国民の男女比問題を、緩和する狙いがある。いきなり嫁に来てくれと言う訳では無いけど、独身の男女比がヤバいのだ。大半は子供だけれども、独身男性が38人に対し独身女性は18人なの。単純計算でも20人の男があぶれちゃうね。

 数年後には大きな問題になるから、今のうちから少しずつ男女比を改善したいんだとさ。


 最後に、これらをエリーゼ主導でやらせるという最大の難関がある。

 僕はリゼに任せてはどうか?とルクルに伝えたんだけど、ダメな理由を幾つも教えられた。納得はしたんだけれど、不安でとても憂鬱だよ。


 そんな訳で、僕らは出発の準備を進めている。


 リゼと二人きりなのはまだ少し不安なので、リッツに頼み込んで一緒に来てもらう事にしたよ。空輸邸を使う事と香油マッサージは無しの条件で快諾してくれた。リッツは人を辞めるのを必死に避けているし。


(まだ人でいたいって断り文句が、一番キツイなぁ)


 準備が整って今日は出発予定日だ。

 リゼの時に移動して訪問先で一泊し、エリーゼに対応してもらうというスケジュールだよ。モンアード君にも連絡した当日ではなくて、翌日以降にしてくれると助かるって前回言われたしね。

 朝食をリゼと一緒に摂って、出発時間まで暫しのティータイム中。リゼから心配の声がかかる。


「ねぇ、ワド。ルクルのお願いはどれも重要でしょ?あの子に任せて大丈夫なの?」

「それは僕も不安で憂鬱なんだよ」

「だったらリゼが……」

「でも、ダメなんだリゼ。エリーゼにやらせないといけないんだ」


 今回の訪問先は知り合いの所なので、多少の失敗は許される。だから、エリーゼの理想と現実の折り合いをつける小さな失敗にちょうど良いと、ルクルは考えているようだ。勿論、うまく言ったのならそれはそれで経験になるし。

 それに重要な仕事を全部リゼに回すようにすると、以前のリゼにした事と同じ事をエリーゼにしてしまう事になる。「任せて貰えない。信用して貰えない。それをエリーゼ様に突きつけるのか?」とルクルに問われた時、僕はすぐに返事できなかった。

 これらを丸ごと【伝心】(    )でリゼに共有した。


「そうね……ルクルの言う通りにするの……」

「うん。とても不安だけど任せてみるよ」


 後ろに控えていたリッツが会話に加わる。


「あたしはエリーゼお姉ちゃんなら大丈夫だと思うよ!」

「えーと、何か根拠はあるの?」


 リッツが胸を張って主張してきたので、僕はその自信に興味を持った。


「エリーゼお姉ちゃんは物事の優先順位がハッキリしてるの!」

「言われてみれば確かに……」

「大臣の立場なら、外交を上手く行かせるのが最優先だよ!その為にお姉ちゃんは全力で頑張るよ!」


 なるほどなと思った。エリーゼは今回自分で立候補して外務大臣になっている。外交を上手くいかせる為に「全力ですわ!気合いですわ!」の状態になるのは想像できるね。妙な空回りはしそうだけどさ。

 出発の時はルクルが見送りに来てくれた。


「リゼ……ワドとリッツを頼むよ?頼りにしてるからねー」

「分かってるの」


(なんでリゼにだけ頼むの?僕もいるのに!)


 なんだか釈然としないけど、いつものように高速脱衣とメタモルフォーゼを完了させてドラゴン形態になる。2人が空輸邸に乗り込んだのを確認してから、ゆっくりと上昇していく。

 まず一番近い港町モンアードから向かうよ。

 飛んでいる間は国民達が手を振って声を掛けてくれる。こちらも手を振り返したいんだけど、空輸邸を両手で支えているから出来なくてもどかしいな。


 港町モンアードに着いたけど、7時間もかかったから既に夕暮れ時になっていた。門番の兵士へ明日の訪問予定を伝えて宿を取る。時間がかかったのはリッツに配慮してスピードを控えめに飛んだからなんだ。ルクルから念押しされたし。


 宿で晩御飯を摂り、お風呂代わりに体を水拭きして、リッツは先に睡眠を取っている。リッツが眠りについたのを見計らって、僕はリゼに不安を吐露した。


「大丈夫だとは思うんだけど、どうしても不安が消えなくて憂鬱なんだ」

「そう、ならお薬使う?もうルクルにもワドにもバレてるし、影響もワドにはそれほど無いから」


 リゼが言うには、例の媚薬は不安を取り除く効果もあるらしい。体も気持ちよくなってハイテンションになるけど僕なら性欲が暴走するまでにはならないとの事。


(ま、それならいいのか?だって確かに気持ち良かったし……)


 お茶に入れて2人で飲んだ。確かに不安が飛んでいくし、体も気持ち良かった。ふと気になった事を質問する。


「リゼの体には影響ないの?」

「ワドと同じ程度かしら?……リゼの場合は常に性欲を抑え込んでいるから特に違いがないの。それに……薬は未完成の状態なの」


 どうやら完成品だと理性が飛ぶらしい。怖いね。

 未完成品のうちに発覚して本当に良かったよ。


 翌朝、リッツの給仕を受けて朝食を摂り、モンアード君からの連絡を待っていた。海の魚料理だったからカルカンが悔しがるだろうなぁ。

 出迎えの準備が整ったとの伝令が来たので、領主館へと向かったよ。


「おお!ワールドン様。この度の建国につきまして、誠におめでとうございます!」

「ありがとう。モンアード君が提案してくれたおかげだよ」

「勿体ないお言葉です」


 相変わらず好感度MAX感ハンパないね。


「そちらはホリター公爵令嬢のエリーゼ殿ですね?お初にお目にかかります。モンアードと申します」

「……はじめまして、ワールドン王国の外務大臣を拝命しましたエリーゼと申します。今後とも宜しくお願い致しますわ!」


 あれ?2人は面識あるのになんで初対面の挨拶なんだろ?

 あ!ひょっとして国の代表と公的な場での初対面という事だろうか?

 危ない、僕うっかり既に会っているとか余計な事言って失敗する所だったよ。


(こういう外交マナー的なのは、やっぱりまだ分かんないや)


 エリーゼは手土産と言って、数種類もの高級な酒をモンアード君に手渡した。


「こちらのお酒は、我が国での輸出の主力商品になる予定ですわ。是非ともメイジー王国貴族で受け入れられそうか、ご意見頂けますと幸甚に御座いますわ」

「ほう、これはこれは……後日感想をお伝えできればと思います」

「量も用意して御座いますので、ご友人にも是非お勧めして頂きたいですわ」


 モンアード君は笑顔で頷いた。

 本当に驚いたけどエリーゼは、普通にお酒をオススメしている。なんでもルクルとの秘密の特訓があったらしい。

 昨夜、リゼからコッソリ教えて貰ったよ。


「エリーゼ殿は初めてお会いしましたが、聡明な方ですね。噂はあまり当てになりません」

「……モンアード卿にお褒め頂いて恐縮です」


 【伝心】(    )してみたけど、モンアード君は本当に初対面だと思っていた。貴族同士のマナーじゃ無かった!やっぱり虚無の女神の御力で、忘れているんだろうな。余程ショックだったのか。

 それから、エリーゼが講師を招く話題に切り替えた。見返りの前払いとして僕の竜鱗を贈っていたよ。


「講師を紹介して頂く為の手付金代わりにお納め下さいませ。我が国に講師をお招きできた暁には、さらなる報酬をご用意していますわ」

「これは素晴らしい竜鱗です!講師の件はこちらで尽力します。近い内に貴国へ手配できるかと思います」


 モンアード君は竜鱗を大切そうに抱えて微笑んだ。


「モンアード卿のお知り合いの貴族の方で、我が国に興味を持っておられる方はいらっしゃいませんか?」

「……そういえばココ伯爵両家が、ワールドン様とルクル殿を船舶コンテストにご招待したいと申しておりました」

「そちらはどのような催し物で?」


 エリーゼは全く心当たりがない素振りで、改めて問い直す。

 そういやエリーゼは、船舶コンテスト提案の時って説得で不在だったな。


「なんでもルクル殿が提案した物らしいです。人馬節に行う予定と聞いております。それから貴国への興味もありそうでした」

「左様ですか。是非前向きに検討させて頂きますわ」



(不安だったけどこのまま順調にいけるかなぁ?)



結局、二人きりはまだ不安だったので、リッツに頼りました。

それと、3章に出てきたココ伯爵達の船舶コンテストが、約4か月後に開催される情報を得ました。

※現在8月で、船舶コンテストは12月に開催です。


次回は「孤児院の姉妹達」です。

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お、船舶コンテスト! ここで出てくるとは思いませんでしたー! 見に行く流れですよね?  楽しみであります⸜(*˙꒳˙*)⸝ エリーゼもまじで意外とちゃんとしてるし✨ 不安なのは接してるのがモンアード…
 お邪魔しています。  これは、外交なんですね。きちんと自国の未来も見据えた計画なんだと感心しちゃいます。それに、今のところエリーゼさんも上手くやってるようで何よりですね。
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