初の人生相談
前回のあらすじ
アルとルクルの誕生節のお祝いを行いました。
エリーゼに呼び出された二人は様子がおかしかったので、ワドはエリーゼに問い質しにきました。
【伝心】は全てみえちゃうのが欠点だ。
様子がおかしかったルクルが、変なプレゼントされていないか心配だったんだ。だから思わず読み取ったんだけど……後悔したよ。
僕は【伝心】で読み取ったエリーゼのプレゼント内容にドン引きしていた。
ーーーエリーゼのプレゼントVTRーーー
「ルクル、こちらプレゼントですわ!」
「ありがとー、早速開けるねー」
「殿方ならきっと喜ぶ物ですわ!」
「……これって、女性の下着だよね?」
「もう一人のわたくしの愛用してる下着ですわ!」
「ええー!?それってエリーゼ様のー!?」
「違いますわ!わたくしのではありません!そんな破廉恥な事はしませんわ!」
「でも愛用……って?」
「もう一人のわたくしの愛用の品ですわ!」
ーーーエリーゼのプレゼントENDーーー
(え?なんで自分の下着をプレゼントしてんのさ?マジでドン引きなんだけど?)
エリーゼを【伝心】で読み取る限りでは、どうやらリゼが身に着けていても、自分がつけて無ければ自分の下着と認識して無いみたい。
とりあえず、エリーゼに厳重注意したよ。リゼの所有物を、リゼに許可なく勝手に渡すのは良くないって。凄くしょんぼりした顔でこう言った。
「わたくし、もう一人のわたくしにも幸せをあげたかったのですわ……」
僕の注意を受けたエリーゼは、肩を落としてトボトボと去っていった。
でも、リゼの心の欲求をそのまま出したらR18になるんだよ!僕は17歳だからそれだけは困るんだよ!intにキャストするにしてもR17.9998までがギリだよ!
(はぁ……もう少しエリーゼ達には、エロ方面の自重を求めたいよ……)
やり取りを終えて、僕はアルの所へ戻った。アルは怪我が治ってすぐに執務をしていた。
真面目すぎるアルの肩を軽く叩き、声をかける。
「アル、お疲れ様。今日くらいは休んだら?ってか休んじゃえ!」
「ワールドン様、そうは言ってもやることが山積みなのです」
「いざとなればルクルがなんとかしてくれるよ!」
僕の言葉を聞いたアルが一瞬不満げな顔をした。
(何か変な事いったかな?言って無いよね?)
「私は役立たずには、なりたくないのです」
そう言うとアルは執務を再開した。
そこにリッツがミルクの香りを漂わせ、お茶を運んできたけど、休憩するそぶりも見せない。
このままじゃ倒れてしまうんじゃないかと心配だよ。
「リッツがせっかく入れてくれたミルクティが冷めちゃうよ。少しだけ休憩しよう?」
「……はい」
「やっぱり人材不足が深刻且つ急務かな?」
アルはお茶を一口飲んで、ゆっくりと話す。
「そうですね。財務関連の実務ができる人材は少し拡充しないと回りません」
「学校を作ろうとは考えてるんだけど、やっぱ今すぐ必要って事だよね?」
「そうですね。人材が育つのを待っている余裕が無いです。建国時が一番忙しいので……」
僕は両手をパンと叩いた。
「よし!モンアード君とルマンド君、それから猫魔族の国王に相談して頼ろう!」
「待って下さい!私が頑張りますから……」
僕がそう強く宣言すると、アルからすかさず待ったがかかる。僕は首を傾げた。
(なんでこんなに頑ななんだろうね?不足してるのは事実なんだし、頼るのは悪くないと思うけど?)
「ねぇアル。どうして頼るのを避けるの?」
「私もお役にたってみせます!それに建国してすぐに他国に弱みを見せる訳には……」
「アルは既に役にたってるよ。それに弱みじゃなくて助け合いだよ。ルクルからは他国に提示できるものを用意できるって聞いてるよ?」
アルは、ガシャと強い音を立ててカップを置いた。
「ルクル、ルクル!ルクル!って私はそんなに役にたちませんか?頼りないですか!?」
「ど、どうしたの?アル、ちょっとゆっくり話そう」
僕はアルとじっくり話した。どうやらルクルに嫉妬しているみたいだ。僕も最近知った感情だからすぐに分かったよ。皆がルクルを頼るし、ロワイトの評価も凄く高いルクル。全く意識するなってのは、今のアルには難しいのかも知れない。僕は迷いながらも声をかける。
「アルもルクルに持ってない物を沢山持ってるよ」
「……私が?」
「例えば、貴族の身分とか」
アルは顔を背けて言葉を吐き捨てた。
「私の実力ではありませんよ!」
「ちが……ごめん言葉を間違ったみたいだ。そだなぁ……アルは僕と同い年の17歳になった訳じゃない?」
「……ええ、先日の誕生節で17歳になりましたがそれが何か?」
アルはこちらへ向き直ってくれたけど、俯いたままだ。ルクルが表に出る事を辞退した理由を思い出しながら、丁寧な言葉を選んで伝えていく。
「来年は成人だよね。その年齢なら他国から侮られる事は無いと思うよ。14歳のルクルはあと3年は他国から相手にもされないよ?」
「それは4年後からはルクルがいれば全て事足りるという事ではありませんか!?」
「違うよ。全然違う。だってさっきアル自身が言ってたじゃないか」
アルは心当たりが無い様で、怪訝そうに首を傾げる。僕はあの指令のモノマネをしているルクルの、モノマネをしながら語った。
「建国は既になされている。一番大切な建国時に、ルクルは表立って他国に対して動く事はできない。一番大事な時期に動けるのは君だよ」
落雷でも受けたかの様にアルはバッと顔をあげた。
ここでもしナレーション入れるなら「この時、アルに電流走る」かな?
それに僕がルクルのモノマネしている事にも気づいたみたいで、フッと笑みが零れていたよ。
「……そうですね。今の私だから力になれる事もあるのですね。悲観的になりすぎてました」
「比べちゃうのは仕方ないよ。僕もルクルに嫉妬する事が最近多いんだ」
そういった瞬間に、背後から驚きの声があがる。
「え!?ワールドン様も嫉妬なさるんですか?あたしもルクルに嫉妬する事が多いんです!」
「リッツもやっぱり?」
「ふっ……私だけでは無かったのですね」
リッツからルクルに嫉妬していると声があがって、正直助かったよ。アルの肩の力は完全に抜けたみたいだ。リッツは対して年齢が違わないのに、ルクルが何でも知っていて出来る事に嫉妬していると、力説していた。
(ま、中身はケタだしなぁ。ルクルも年齢詐称と言えなくもないのかな?)
宥める為にも学校の話題を切り出した。
「リッツ、来年までに学校を用意するからそこの生徒一号になってくれる?いっぱい勉強してさ……ルクルを見返してやろうよ」
「はい!あたし、学校に行きたいです!」
「……だってさアル。頑張らなきゃだね?」
アルはゆっくり頷いて、懸念を提示し始めた。
「ええ。ただ……講師は全く足りませんが?」
「そこはモンアード君達を頼ってみようよ。頼る事は悪い事じゃないよ。僕は頼ってばかりだしね」
「……はい」
会話が一段落した時には、アルもリッツも笑顔だった。
僕、頑張った。今日はいっぱい自分を褒めようと思ったよ。
アルの執務室を出てから、僕はドラゴン形態にメタモルフォーゼしてフウカナット村へ向かった。
(ふぅ……今日は脱衣の自己ベスト更新できた!)
フウカナット村にはやや陽が傾き始めた頃に到着する。
結構、アルとじっくり長い時間話していた事を、今更ながらに気づいたよ。アルとこんなに話したのは初めてだったかも知れない。
眼下に広がる稲穂や麦畑が、夕日に照らされて金色に輝いて見える。
確かに……ルクルの成果が大きすぎるから、アルが焦るのも分かるなぁ。
そう思いつつルクル達に合流した。
「お、ワドー。来るのめちゃくちゃ遅かったじゃんかー。どこでサボってたんだよー?」
「ちょっとね……僕は人生相談を受けてアドバイスをしてたのさ!(ドヤァ)」
「は?ワドに人生相談するなんてそんなアホな国民はいないぞー。寝ぼけてるのかー?」
ちょっと!酷い!本当に人生相談を生まれて初めてこなしたのに!僕の達成感を返してよ!
僕は、現状の問題点を共有するべく、先ほどの人生相談を丸ごと【伝心】で伝えた。
「ワド……ごめん。やることが多くてアルやリッツのメンタルケアが疎かだった……」
「いや、ルクルが全部抱えるのは違うよ?僕の人生相談の対応はどうだった?凄くない?」
「あぁ、凄いよワドは。こんなに成長してたんだな」
あれ?また調子に乗るなってイジられるかと思ったら、凄くしみじみと褒められた。なんか逆に色々とムズムズするよ!
「まぁね!これからも僕に頼るといいさ(ドヤァ)」
「ああ、頼らせてもらう。今日は存分にドヤ顔しなよー。それで外回りお願いしてもいい?」
ドヤ顔した瞬間に仕事が積まれた。皆はワーカーホリックすぎると思う。
外回りの内容は、人材の相談を知人にして回るって事だった。僕も提案していた事なので賛成する。
「アルの負担を減らす為にも頑張るよ!」
「エリーゼ様&リゼを連れて行けよ?外務大臣なんだしさー。それでワドは大丈夫?」
「ん?何か懸念?」
「……マイティさんがいない状態でリゼと二人っきりの夜とかだよー」
ハッ!マイティがいないって事は本当に二人旅だ!ってかリゼの理性は大丈夫なんだよね?どどどどどうしよ?凄く不安になってきた。
(あ!それはそうと)
「ルクル!リゼの下着はちゃんと返してあげてね!」
「な!なんでそれを知ってる!?」
「エリーゼから伝心で読んだから!全部知ってる!」
とりあえず返すように伝えたら、何故か僕に渡してきた。「ワドから返してくれ」だってさ。僕は当然突っ返したね。フラグ立てたんなら自分でどうにかしなきゃね!
僕は旅の支度の為、さっさと逃げ戻ったよ。
(さーて、ルクルはちゃんと自分で返せるかなぁ?)
初めての人生相談をうけて、ワドは客観的な視点を覚えました。
相手に配慮したセリフを使う成長が見られます。
次回は「建国の挨拶回り」です。




