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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン内閣府発足

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ドラゴン内閣府

前回のあらすじ

温泉がリニューアルしたので、皆で温泉街に来ていました。

そこでワドは、ホリター公爵家の秘密を暴露します。

なにやらマイティの様子がおかしいけど、これは一体?

「ふぇ?もう一回言ってくれる!?」


 僕はルクルの説明を聞いて混乱していた。

 というか、そんな事が僕に降り掛かっているなんて予想すらしていなかったんだ。頼むから嘘だと言ってよルクル!


「ワドの体は長期間に渡る大量の媚薬投与によって、影響を受ける状態にある」

「ぼ、僕は生殖機能ないよ?」

「無いままで、生殖機能がある種族と同じように、欲求や快楽が得られる状態になってるって事。さっきも自分で言ってたじゃんー」


 確かに、ホリター公爵家の秘薬だとそれが可能とは言ったけど、長期間の大量摂取は心当たりが無いんだけど!?

 リゼが俯いたまま説明を始める。


「ワドに使ってた香油や御香、サウナのアロマにも。あとリゼが作った食事にも入れてたの……」

「僕、聞いてないよ!?」

「ごめんなさい。コッソリ進めてたの。それに効いて無さそうだったから、徐々に濃度と量を増やしてて」


 気持ち良かったリゼ特製の全てが、媚薬入りだったのはマジ衝撃だよ。そういえば自分じゃないみたいに、テンションが制御出来ない時は、いつもリゼの日だったかも。


「でもさ、気持ちよくなるだけで僕に実害は無いんだよね?」

「……その……」

「リゼ?ちゃんと答えて?」


 欲求が抑えられなくなる時があるだけで、あとは気持ち良くなる効果だけらしい。なんとか最悪の事態は避けられたようだ。


「なら別にいいかな。他には影響ないんだよね?」

「……うん、それだけなの」

「で、マイティが体調悪かったのも関係してるの?」


 僕は、さっきまでのマイティの様子を報告したんだ。そしたらリゼがバッと頭を下げた。


「ごめんなさい!マイティには特に影響が出てると思うの。ずっと素手で香油塗ってたし、御香の時も一緒だったから……」


 どうやら、僕に接する機会の多いマイティに、一番負担がかかっていたみたい。さっきのも、欲求を我慢している時の反応だとさ。なら、少し安静にすれば大丈夫そうだ。


「リゼが媚薬入れてたのは、もうしないって事で終わりね!ルクルが『俺のせい』って言ってた事は?」

「……コッソリ進める事と、媚薬を使う事……それを許可する発言をした」

「はああああ?ワケガワカラナイヨ?」


 何それ?ルクルが媚薬を進めていたって事?

 また混乱してきたよ。頭を抱えていたら、ルクルから外に出るように誘われた。どうもリゼには聞かせたくないみたいだ。

 深夜の混浴露天風呂にきて話をした。


「リゼに伝心した日の事を憶えてるー?」

「……忘れるわけないよ」


 ルクルが教えてくれた。僕が退室した後、リゼが自殺しないように希望を与える言葉をかけた事。ワドが嫌がらない範囲でコッソリと、リゼの本当の心が満たされる事を黙認したと。


「……そんな理由じゃ怒れないじゃんか」


 僕は2人を許した。だって僕の影響は少ないし、それでリゼが生きる喜びを得られているのなら……怒れないよ。そもそも傷付けたのは僕なんだし。

 話は終わりにして解散し、女子部屋に戻った。すぐにリゼが駆け寄ってくる。


「ワド……あの……全部リゼが悪いの。ルクルを怒らないであげて欲しいの」


 僕はリゼの肩に手を乗せて、ゆっくりと首をふる。


「大丈夫。元はといえば僕が悪いんだから……リゼの心が少しでも救われたのなら、僕に不満はないよ」

「そ、そうなの?」

「僕が嫌がらない範囲にしてね?」

「……うん、約束する。……ありがとう」


 リゼは約束して眠りについた。

 しかし、結構前から、僕の身の回りで投与が始まっていた事には戦慄を覚えたよ。

 今後は少しでも異変を感じたら、すぐルクルに相談しなきゃな。

 早朝になると、エリーゼが近くに寄って内緒話をしてきた。


「あの、ワールドン様。もう一人のわたくしがご迷惑をかけたそうで申し訳ありません」

「大丈夫、もう許して終わった事だから」

「それで、もう一人のわたくしからお願いがあるのですわ」


 お願いの内容は、マイティの体調が回復するまで、お休みをあげて欲しいという事だった。

 勿論、すぐにOKしたよ。


「あの……従者がいなくて大丈夫でしょうか?」

「リッツもいるし、宿にいる時は仲居さんもいるから大丈夫だよ。エリーゼこそ大丈夫?」

「わたくしは大丈夫ですわ!」


 エリーゼは力強くそう言うと、立ち上がって去っていった。

 その際にフワリと漂ってきた香りが、リゼとは別物だと今更気付いたよ。多分、リゼのは媚薬入りだったんだな。道理でリゼの近くだと、なんか気持ち良かったのか。

 それから皆で、温泉宿の朝食を摂った。

 朝御飯にも魚があったから「日本酒が欲しいにゃ」と、猫がふざけた事を口走っていたな。

 食後に寛いでいると、ルクルとアルから提案があった。


「獅子節のお祝いまでに、内閣府を発足したいんよねー。外務大臣の候補いるかなー?」

「私が請け負えれば良かったのですけど、流石にキャパオーバーでして……」


 確かに内政は、アルにかなり負担が掛かっている。

 小さく挙手してルクルが動けないのか聞いてみた。


「ルクルがやるってのはどうなん?」


 ルクルは下を向いて思いっきり嘆息する。


「はあーーー、あのなーワド。俺も内政で忙しいから外回りは厳しいのー。それに俺の身分や見た目の問題もあるからー」


 ルクル曰く、ダメな理由はこうだ。

─────────────────────

・ルクルは元奴隷の平民なので、各国の重鎮は対等に見てくれず、まともに取り合わないとの事。

・年齢も14歳弱と、若すぎて舐められるとの事。

─────────────────────


 逆に選ぶ条件はこう。

─────────────────────

・各国に対し顔が利いて、交渉上手である事。

・出来れば貴族の高い身分である事。

・見目が良いとなお良しとの事。

─────────────────────


「んー、確かにウチの国って貴族が少ないよね?やっぱり外国からは舐められるの?」

「はい、流石に平民を大使や外交官にしている国はありません」


 アルが各国間の常識を補足してくれたよ。「そういやロワイトが移籍検討してたなぁ」と思い出した。


「ロワイトが移籍検討してたけど、どう?」

「父上ですか!?」

「うーん、出来れば避けたいかなー」


 ルクルは腕を組みながら苦渋の表情だったんで、疑問を口にしてみる。


「ロワイトなら実力は申し分ないと思うけど、なんかダメなとこあるん?」

「ロワイト様は顔が知れ過ぎてるしー、俺らの国が、ブールボンの属国みたいな印象になってしまうのがダメなとこー。実力的には欲しいよー!」


(そっか、そういう弊害もあるのか)


 皆が押し黙っていたら、フワリとローズの華やかな香りが舞った。これまで黙っていたエリーゼが、スッと立ち上がったんだ。


「外務大臣の適任者がいますわ!」

「え?そんな人いたっけ?ちなみに誰?」

「わたくしですわ!」


 一同絶句とはこの事である。

 何をもってこのホーミング地雷改め、走る核弾頭を外務大臣にするのさ?僕が他の国の君主でも、外交官としてエリーゼが来たら「よろしいならば戦争だ」状態待った無しって取れると思うよ?


「あのね?エリーゼ、外務大臣はね他の国と上手く交渉して行く必要があってね……」


 僕はエリーゼを宥めようとしたけど、エリーゼは怒涛の勢いで強く主張してきた。


「わたくしはルクルの出した条件に全て合致しますわ!問題が多い令嬢として幅広く認知されてますわ!問題令嬢で有名人ですわ!」

「わたくし、交渉事で負けた事はありませんわ!お父様にもお兄様にも勝った経験がありますわ!」

「ホリター公爵令嬢で身分も高いですわ!いつも『黙って座っていれば見目麗しい』と言われますから、見目も良いですわ!」


 確かに、並べた項目では条件に合致しているけど……危険物ってデメリットがなぁ。

 更にエリーゼは続ける。


「それにもう一人のわたくしはお役目を頂いてるのに、わたくしだけ何もお役目が無いのは嫌ですわ!」


 そう言われると辛いな。

 一旦ルクルに目配せしてみた。ルクルは暫く考え込んでいて、目を合わせてくれない。

 そして徐ろに口を開き、エリーゼへ確認を取る。


「エリーゼ様、貴方が外交で問題を起こした場合、困るのはワドだと理解してますか?」

「理解してますわ!ダメそうならもう一人のわたくしを頼りますわ!」

「分かりました。条件付きで仮任命としましょう」


 ルクルが許可したことで、エリーゼは狂喜乱舞して喜んでいる。

 僕は、ルクルの意図が見えなくて【伝心】(    )で確認したよ。


『なんでエリーゼ!?しかも僕が君主なのになんでルクルが決定するのさ!』

『あー、俺は一応黒幕でもあるんでー』

『なら役職付けるからね!で、エリーゼ任命の理由は!?条件って何!?』


 ルクルが出した条件はこうだ。

─────────────────────

・重要な外交にはワドや他の幹部も同行する事。

・本任命には、エリーゼがリゼに入れ替わるまでの代行が可能な貴族を、一人勧誘する事。

・その貴族は、ワドに対して友好的で無ければならない。

・既に友好的なメイジー王国とブールボン王国以外から勧誘する事。

─────────────────────


 この条件をエリーゼは全て飲んだ。条件については【伝心】(    )で確認する。


『なんで勧誘を条件にしたの?』

『どのみち外交できる人材は増やしたいしー?暫くは時間が稼げるしー』

『エリーゼが他国と揉めたらどうすんのさ!?』

『寧ろ揉めさせない為に、外務大臣にするのさー』


 役職には責任が伴うので、僕に迷惑かけないように全力を出すエリーゼのほうが安心らしい。勿論、良い人材が見つかったら別の要職を用意してシフトも視野に入れているとの事。


「ま、エリーゼ様が俺らの国にいるのはバレてる訳だしー、時間の問題だよー。それに他国の思惑も見えやすいしねー」


 ルクルはそう言ってあっけらかんと笑った。



 こうして、ワールドン王国の初代内閣府が発足。


─────────────────────

 君主:ワールドン。

 内閣総理大臣:アルフォート。

 総務省大臣:アルフォート。

 財務省大臣:アルフォート。

 法務省大臣:リゼ。

 外務省大臣:エリーゼ。

 防衛省大臣:カルカン。

 農林省大臣:クラッツ。

 水産省大臣:テトサ。

 観光省大臣:ポポロ。

 国土交通省大臣:ボン。

 文部マナ省大臣:カルカン。

 経済産業省大臣:ルクル。

 厚生労働省大臣:ルクル。

 ギルドマスター:ルクル。

─────────────────────



 黒幕の役職名は、ギルドマスターになったよ。



失言のフラグ回収です。

ま、被害はマイティの方が深刻ですけどw


次回は「獅子の誕生節」です。

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マイティ大丈夫かな心配……。とか、「ワールドンに気付かれないで自分が慰められる方法を」とか言って媚薬出てきちゃうあたり、最近ずっと忘れてたけど、やっぱり《色欲の》リゼなんだなって要らん再認識をしたりし…
 お邪魔しています。  閑話の前ですね。もう一度遡って読み直しました。なるほど! そういう訳だったんですね。それにしても、薬を使ってワド君の気持ちを高めようと画策したなんて。ちょっとワド君が、我を忘…
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