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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン王国の基盤作成

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閑話:二人の先生

前回のあらすじ

リッツは二人だけど一人、一人だけど二人の先生に様々な授業を習う事になりました。

ep.「建国祭」~ ep.「国境林を作る」までのリッツ視点となります。

「リッツ!授業を始めますわ!全力でついてくるのですわ!」

「はいっ!」


 今日の先生はエリーゼお姉ちゃんだ。

 あたしが勉強したいってワールドン様にお願いしたら、エリーゼお姉ちゃんとリゼお姉ちゃんが、あたしの先生になったの。2人は同じ人なんだけど、全然別の人なんだ。性格も雰囲気も好みもまるで違うの。教える講義内容の重要ポイントまで違うから、最初は戸惑ったんだ。でも、もう慣れたよ。


 今日の講義は法律の講義だ。

 あたしには少し難しい。あと、講義ポイントがやっぱり違うなぁ。


 エリーゼお姉ちゃんは問題を起こした場合に、どう根回しすれば捕まらないかを重点的に講義してくれている。絶対にやってはいけない法律違反とか。

 とにかくエリーゼお姉ちゃんは問題を起こす前提で、それをどうするかって講義なんだよ。問題を最初から起こさないようにしようって道徳的な話は一切出ないの。面白いよね!


 リゼお姉ちゃんの時は、どういった法律の落とし穴があるか、契約書でどういう所をきちんと確認すべきかを教えてくれたよ。この辺りまでは凄く参考になるし、勉強になったんだ。

 でも、そこからの応用編は、あたしには無縁そうだよ?逆にどう相手を陥れるか、どういった契約書を作れば騙せるかをたっぷり講義された。リゼお姉ちゃんは悪用する前提での講義なんだ。二人共、道徳的な話が一切出ない事だけが共通点かな。


 あと基本方針が全然違うね。


 エリーゼお姉ちゃんはこんな感じ。

・全力ですわ!

・気合いですわ!


 リゼお姉ちゃんはこんな感じ。

・常に冷静に自分の感情を客観視する事。

・相手を良く見て仕草や視線も観察する事。


 体育会系と理系ってルクルが言っていたけど、なんのことか良く分かんなかった。

 でも、コツは掴んだんだ。

 エリーゼお姉ちゃんの時はとにかく全力で一生懸命やれば褒めてくれる。

 リゼお姉ちゃんの時は良く考えて慎重な言動をすれば褒めてくれる。

 これだけを抑えておけば問題ないよ。


 それに、逆の対応すると凄く叱られる。エリーゼお姉ちゃんの時に慎重に行動すると叱られるし、リゼお姉ちゃんの時に考え無しに全力で物事に当たったら叱られる。同じ人なのに本当に真逆なんだ!

 でも、共通している所もあるの。

 お姉ちゃん達はワールドン様が大好きなんだ。ワールドン様の話題になると、2人は凄く楽しそうだし嬉しいみたい。それと、お互いの事を凄く尊敬しあっていて大好きみたいだよ。


 だけど……


 エリーゼお姉ちゃんは、自分自身の事も大好きなんだけど、リゼお姉ちゃんは、自分自身の事が嫌いみたい。あたしは、リゼお姉ちゃんも好きだからちょっと悲しい。

 それにリゼお姉ちゃんは、本音を隠そうとするの。なんで自分に素直にならないのか聞いてみたら「リゼには許されてないの」って言っていたんだ。


 今日の講義の終わりに、エリーゼお姉ちゃんへその事について聞いてみた。


「エリーゼ先生!質問あります!」

「全力でなんでも答えますわ!」

「リゼお姉ちゃんは、なんで自分を嫌ってるか知ってる?」

「~~~~っ!それは……」

「それに素直にならない事を、何故って聞いたら『許されてない』って分からないよ。教えて先生!」


 珍しい。エリーゼお姉ちゃんが即答できないだけじゃなくて、見るからに落ち込んでいる。あたし、初めてみたかも。

 エリーゼお姉ちゃんが声を震わせながら、少しずつ教えてくれた。


「……もう一人のわたくしは、決して許されない大罪を犯したのですわ。だから自分をお嫌いになってるのですわ」

「え!?どこかの国の法律に抵触したの?」

「違いますわ……わたくし達の中で絶対に犯してはならない事を……してしまったのですわ」

「それって許されないの?リゼお姉ちゃんは、自分に素直になる事もダメなの?」


 わわっ!?エリーゼお姉ちゃんが涙を零し始めたよ!?強さの象徴みたいなエリーゼお姉ちゃんの涙に、あたしは動揺した。


「……わたくしでは出来ないのですわ。でも、もう一人のわたくしが許されて、心から素直になれる日が来るのを望んでますわ」

「あたしも協力したい!だってリゼお姉ちゃんも好きだから幸せになって欲しいよ!」

「……リッツもナイショで協力してくれますか?」


 絶対に秘密って約束して、エリーゼお姉ちゃんから詳しく話を聞いたよ。

 リゼお姉ちゃんはワールドン様を傷つけたらしいの。あんなにワールドン様を大好きなリゼお姉ちゃんが、そんな事するなんて信じられなかった。でも、リゼお姉ちゃんが自分自身を許せなくて嫌いな理由は納得できた。

 それからエリーゼお姉ちゃんは、誰にもナイショにしてリゼお姉ちゃんが、許されるように頑張っている事を聞いた。


 その内容を聞いて納得したよ。2人は全然違う人だけど、やっぱり同じ人なんだって。

 リゼお姉ちゃんが自分自身を許せる様になる言葉。それはワールドン様からの「大好き」だけだって。


 あたしはワールドン様にお願いすれば、すぐに御言葉を貰えるって言ったら「それはダメですわ」って諭された。

 他の人に頼まれて言わされた「大好き」を受け取ったら、リゼお姉ちゃんが自分自身を許せるタイミングが一生無くなるって。


 その言葉には説得力があったよ。

 だって同じ人であるエリーゼお姉ちゃんが真剣な表情で語っていたから。

 あたしもワールドン様が、自然と大好きって言えるように、2人が仲良くなる協力をするって約束した。リゼお姉ちゃんとワールドン様がもっともっと仲良くなれば、自然と言える関係になるよ……きっと。


「もう一人のわたくしを宜しくお願い致しますわ」


 エリーゼお姉ちゃんがあたしに深くお辞儀をしたよ。こんなの初めてで凄く焦っちゃった。

 でも、だからこそ……


(あたし頑張らなきゃ!気合いですわ!だよね先生?)


─────────────────────


 あたしはリゼお姉ちゃんの事を、少しでももっと知ろうと行動したよ。ルクルやワールドン様に話を聞いてみたの。そしたらルクルは、思っていた以上にリゼお姉ちゃんの事に詳しいの。

 逆にエリーゼお姉ちゃんは苦手みたいで、知らない事が多い。ルクルも良く考えるようになっちゃったから、波長が合うのかな?


 昔のルクルはどっちかと言うと、エリーゼお姉ちゃん寄りな性格だったのに。

 ワールドン様と会ってからは、別人みたいに思うよ……でも、あたしにだけ見せてくれる一面には、昔の面影があるんだ。これってあたしだけが特別って事だよね?


(ふふっ嬉しいな!)


 ワールドン様は【伝心】(    )でリゼお姉ちゃんと一緒の時の、共有をしてくれたよ。これ凄く便利だから、全ての人が使えたらいいのにね?共有されて分かったんだけど……思っていた以上にルクルとの距離が近いよ。色々と2人だけの秘密もあるみたいだし……あたし、こんなルクル見たことない。


(ひょっとして、リゼお姉ちゃんって……)


 リゼお姉ちゃんが講師の日に思い切って聞いたよ。


「リゼ先生!質問があります!」

「リッツ、唐突になんですの?」

「お姉ちゃんはルクルの事が好きなの?」

「~~~~~っ!?リッツ、何言ってるの!?そんな事ないの。リゼが好きなのはワドだけなの!」


 手が震えて明らかに動揺していて、耳まで顔が真っ赤になっているリゼお姉ちゃんが、素直に自分自身の気持ちに向き合えていない事くらい、あたしにも分かった。


(そっか、そうなんだ……やっぱり)


─────────────────────


 リゼお姉ちゃんには幸せになって欲しい。だけど、ルクルを先に好きになったのはあたしなのに。ちょっと複雑だよ。

 素直に応援できない自分の気持ちが確かにあった。あたしはあたしの気持ちも含めて、エリーゼお姉ちゃんに全部報告して相談したよ。


「リッツ、貴女が譲る必要はありませんわ!正々堂々と戦って奪いなさい!」

「え?エリーゼお姉ちゃんはリゼお姉ちゃんの味方じゃないの?」

「勿論味方ですわ!でも、好きな殿方に素直になれないもう一人のわたくしを、応援するかは別問題ですわ!」


 あんなにリゼお姉ちゃんに幸せになって欲しいって言っていたから、不思議に思ってもう一度念押しする。


「もし、あたしがリゼお姉ちゃんの幸せを奪ってしまってもいいの?」

「当然ですわ!わたくしがもう一人のわたくしに協力するのは、ワールドン様との関係だけですわ!」

「良かった~!凄くホッとした!」


 あたしの発言に、目の色を真剣な物に変えたエリーゼお姉ちゃんが、小首を傾げながら告げた。


「ホッとした?……何か勘違いしてますわ」

「……え?あたしとルクルの事、応援してくれるんじゃないの?」

「ルクルとリッツの関係は貴女達の関係ですから、わたくし達には関係ありませんわ!」

「あ、でも……リゼお姉ちゃんの応援もしないんだよね?」

「当然ですわ!ワールドン様に許されたもう一人のわたくしなら、ルクルでも他のどんな殿方でも、絶対に想い人を射止めますわ!」


 そっか……エリーゼお姉ちゃんはリゼお姉ちゃんの恋愛に関しては、応援の必要が無いって思っているんだ。

 確かに。

 ワールドン様に許されて、自信を取り戻したリゼお姉ちゃんは強敵だよ。エリーゼお姉ちゃんが、勝利を確信しているぐらいだし。


(早いうちに勝負かけないとマズイかも?)


─────────────────────


 数日後、リゼお姉ちゃんの講義を受けていた。講義の内容は保健体育だったよ。もうそろそろ12歳だから、知っておかないといけないんだって。赤ちゃんの作り方を詳しく知ったよ。

 ふと、リゼお姉ちゃんにイジワルしたくなった。


「リゼ先生!質問があります!」

「ん……分からないとこでもあったの?」

「リゼお姉ちゃんは、そういう事する相手にルクルを想像してるの?」

「~~~~~っ!?リッツ、馬鹿な事を言わないの。大人をからかってはダメなの!」


 耳まで真っ赤で動揺しているリゼお姉ちゃんじゃ、説得力がまるで無いよ?



(あーあ、やっぱり強敵確定だ~)



道徳の授業は無いっぽいです。

どちらの先生にも対応できるリッツは、意外に順応性が高いのかも知れません。


次回はエリーゼ視点の「閑話:思い出のオルゴール」です。

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ふーん、リゼはルクルへのラブ確定かぁ……? ふーん??( ◜ᴗ◝) 読み手としましてはおね×ショタもロリ×ショタもどっちも好物なので、どっちに転んでも嬉しいですよルクルくーん?!
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